長きにわたる師弟関係。そんな中で、山田が最近感じることがあるという。
「恵観先生ももうご高齢。時には護摩行を中止されることもあります。私は先生の元で修行を積んでいるせいもあるのか、“第6感”が強く、なぜか『私が先生に頑張っている姿を見せるのは今しかない』と直感したのです」
そこに舞い込んだのが、冒頭の総合格闘技の試合のオファーだ。山田にとってはブランクが長すぎる上に、無差別級とはいえ階級も違いすぎる危険な試合だ。
「正直、年齢の事もあるし、これまでの試合のケガも蓄積し、体もボロボロです。でも、恵観先生に『出ようと思う』と言ったら、それまでは穏やかな表情をされていたのが、打って変わって鬼のような形相になり、目をカッと見開いて『出なさい』と言うんです。
そして『私が生きている限り、よう子は大丈夫だから』と言いました。私はプライベートでも試合でも、いつでも先生に力をもらっていた。だから今度は、私が“恩返し”をする番だって思って。先生に試合に出ることで感謝を伝えたいんです。
ただ、今回の対戦相手は、体重100キロの超重量級な上、試合は防具なしの素手で行ないます。正直、怖いという気持ちがないわけではありませんでしたが、どうしても恵観先生に観ていただきたくて……」
試合に出場することを決めた際、山田は「アームレスリング世界一」の肩書きではなく、「池口恵観弟子」として参戦することを決めた。そのことを伝えると池口氏は「よう子の好きにするといい。あなたは私の娘だからね」と声をかけたという。
4月30日、山田は「池口恵観大阿闍梨」と大きく刺繍をいれた新コスチュームに身を包み、池口氏が唱える般若心経を入場テーマにリングに上がる。