ウクライナをめぐる日本国内の見方に異変が生じている。ウクライナ政府の公式ツイッターに、ナチス・ドイツのヒトラー、イタリアのムッソリーニと並んで、ファシズムの象徴として昭和天皇の顔写真が投稿されると、日本国内から批判が相次ぎ、写真が削除された。
さらに、ウクライナ外務省が公式ツイッターに投稿した各国からの支援に感謝する動画に日本への言及がなかったことも波紋を呼んだ。在日ウクライナ大使館は「武器を提供してくれた国に対する感謝を示すためのものだ」としたうえで「日本の支援や協力にはもちろん感謝している」とコメントしているが、日本国内では「なぜ日本が外されたのか」と疑問の声が上がっている。
こうしたウクライナをめぐる日本国内の世論の変化について、外務省OBはこう疑問を呈す。
「そもそも日本では、ロシアによるウクライナ侵攻以降、ロシアとプーチン大統領は悪、ウクライナとゼレンスキー大統領は善、との構図が定着して、それ以外の多面的な見方ができなくなってしまいました。その流れで、いつのまにか『ウクライナは親日的だ』という思い込みが広がった。ゼレンスキー大統領が日本の国会でオンライン演説をしたことが、拍車をかけた側面もあるでしょう。
しかし、ウクライナは戦争の当時者としての危機感から日本に助けを求めたのであり、親日かどうかは関係ありません。事実、米連邦議会でのオンライン演説ではロシアの侵攻を『真珠湾攻撃』になぞらえており、とりわけ日本をめぐる歴史認識においては他の欧米諸国と大差ないというのが実状のはずです」
日本国内でウクライナに対する失望感が広がっていることについては、「独りよがりではないか」との指摘もある。国際ジャーナリストが言う。
「外交において、相手国やその時々の状況によって対応が変わるのは当然です。ウクライナは、日本に対しては『日本が特別』とリップサービスしますが、他国に対してはまた別の顔を見せる。それを『ウクライナは日本を特別視してくれているはず』と思い込むことのほうに無理があります。
支援への感謝についても、現実としてウクライナ側が何より求めているのは軍事的支援であり、その点で日本は見劣りするということでしょう。日本人はウクライナについて、もっと客観的に考える視点が必要ではないでしょうか。
ロシアについても、ウクライナ侵攻後、日ロ交渉が中断することになり『プーチン大統領は親日だったはずなのに』『裏切られた』といった論調が広まりました。もちろん、プーチン氏が柔道愛好家であることは確かですが、日ロ交渉を優位に進めるために日本に接近した側面があったことも事実です。それを短絡的に『親日か反日か』という両極端に分ける考え方を改めないと、いつまでも同じような勝手な思い込みと失望を繰り返すことになるのではないでしょうか」