捜索は難航(写真/共同通信社)

捜索は難航(写真/共同通信社)

 1998年には操業に関する協定が調印され、日本が資源保護の協力金を払うなどして、中間ラインの北方領土側で安全操業ができるようになった。それでも、2006年8月に歯舞群島海域で日本のカニ漁船がロシア国境警備艇に追跡され、乗組員1人が銃撃されて死亡する事件が起きている。

 全国さんま棒受網漁業協同組合の担当者の証言は、周辺海域が緊張状態にあることを窺わせる。

「さんま漁の本操業は8月20日以降で、漁場である公海に最短で向かうにはロシアの200海里水域を通過する必要があるため、これからロシア側との交渉がある。戦争状態が続いていたら拿捕されるのではという不安はもちろんあります。ロシア当局とのやり取りは、基本的に証拠が残るようにFAXやメールなどの文書。ロシアからの連絡はFAXが多いです」

国後島に漂着したら…

 様々な交渉で登場する「FAX連絡」が、今回は人命救助に貢献すると信じたいが、前出・山田教授は今後の展開についてこう懸念を示した。

「遭難者が国後島に漂着した時にどうなるかです。海上保安庁は中間ラインの海上での引き渡しを期待しているかもしれないが、私は甘いと思う。ロシアにとって外交カードとなるので、入国手続きをして国後まで引き取りに来るように求めてくる可能性がある。それにより日本が自国の領土ではないと認めた、という主張をされかねない」

 緊迫の海域で続く捜索。一刻も早く、全員が発見されることが望まれる。

※週刊ポスト2022年5月20日号

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