同論文に目を通した血液内科医の中村幸嗣さんは、「やはりそういうことか」と合点がいったという。
「私も短期間での複数回感染について疑問に思っていましたが、“ウイルスは体外に排出されることなく潜伏し続ける”とすれば納得がいきます。
体内に潜伏するウイルスは『リザーバ』と呼ばれます。ウイルス性の病気には免疫機能の低下によってリザーバが再活性化し、再発症するタイプのものがあります。論文は、コロナも同じように慢性的に発症する病気である可能性が高いことを示唆しています」
たとえばヘルペスや水ぼうそう、帯状疱疹などがそれに当たる。症状が治まった後もウイルスが体内にすみつき「潜伏感染」と呼ばれる状態になる。普段は免疫によって抑えられているものの、加齢や疲れ、ほかの病気などによって免疫が低下すると再び活動し再発する。これと同じことが、コロナでも起きているというわけだ。
医師で昭和大学客員教授の二木芳人さん(感染症学)もこうみる。
「当初、新型コロナウイルスは体内に居続ける傾向はないと考えられてきました。しかし第5波を引き起こしたデルタ株から、オミクロン株のBA.1、BA.5へと変異して進化する過程で、そういった特性を獲得した可能性は否定できません」
厳密に言えば、「再感染」は以前感染した株とは別の株への感染を指し、リザーバの再活性化は「再発症」と呼ばれる。しかし感染する側からすれば、コロナの症状が出て、PCR検査で陽性判定が出る以上、「2回目の感染」と一緒だ。だとすれば、一度感染した人は免疫力が低下したタイミングで何度も“かかる”といえるのだ。
ワクチン接種で免疫力が低下
コロナ蔓延以降、政府はワクチン接種を推奨してきた。だが、何度も接種を受けたのに、2回感染した人が後を絶たない。
「免疫に弱点のある人が一定数いるのも事実です。ワクチンを打っても抗体ができにくいとか、あるいは感染した後も抗体ができない人がいます。そういった免疫形成が苦手な体質の人は、複数回感染する可能性があるといえます」(二木さん)
ナビタスクリニック理事長で内科医の久住英二さんは、ワクチンの効果は限られるのではないかと指摘する。
「現在のワクチンは流行初期の武漢株が登場した際につくられたもので、現在流行しているオミクロン株に対応するものではありません。また、変異株は過去の抗体をすり抜ける特性も持っています。オミクロン株は感染力が強く、いまのワクチンでは感染予防効果は低いと考えていい」
政府はオミクロン株に対応する改良型ワクチンを、10月半ばから追加接種で使用する方針を固めた。2回目までの接種を終えたすべての人を対象に、接種を始める方向で準備するという。
政府は3回目、4回目、さらには5回目へと接種を推し進める。だが、この「追加接種」が複数回の感染を引き起こす可能性が指摘されている。