【間違い】保険診療のクラウンは、2年間再治療できない?
虫歯が悪化して、神経まで感染が広がると強い痛みが起きる。この場合、神経を除去して根管内を洗浄した後に、充填剤で封鎖する「根管治療」を行う。
ある初老の男性は、根管治療を受けてクラウン(被せ物)を装着された。だが、1年のうちに歯茎の腫れが何度も繰り返すようになった。そこで歯科医に相談したところ、こう言われた。
「保険診療でクラウンを被せた歯は、2年間は再治療を受けられません。待っていただくか、自費診療で治療することになります」
この説明は、実に悪質な嘘だ──。
保険診療のクラウンやブリッジ治療の場合、大半の歯科医は「補綴物維持管理料」をつける。これは治療から2年間に再治療が必要になった場合、その治療を行なった歯科医が費用を全額負担する「保証料」なのだ。
初老の男性を治療した歯科医も「補綴物維持管理料」をつけていた。したがって、無料で再治療する義務があることを患者に言わず、嘘の説明で、自費診療に誘導しようとしたのである。
【間違い】保険で白いクラウン治療はできない?
銀歯に代わる選択肢として、保険診療でも、白いクラウンを使用できるようになったのはご存じだろうか?
CAD/CAM(キャドキャム)冠と呼ばれる、レジンとセラミックのハイブリッド素材である。
天然歯と同じような外見で、費用は自費診療のセラミッククラウン(10万~15万円前後)の10分の1以下だ。ただし、歯を削る量が多めで、脱落するケースも目立つといわれる。
【プロフィール】
岩澤倫彦(いわさわ・みちひこ)/1966年、札幌市生まれ。ジャーナリスト。報道番組ディレクターとして救急医療、脳死臓器移植などのテーマに携わり、「血液製剤のC型肝炎ウィルス混入」スクープで、新聞協会賞、米・ピーボディ賞。著書に『やってはいけない歯科治療』(小学館新書)などがある。
※週刊ポスト2022年9月30日号