【間違い】インプラント治療は安全になった?
日本にインプラントが本格的に導入されて約39年。インプラント治療は完全に確立されたが、歯科医の技術や経験には今も大きな開きがある。
しかも自由診療なので、厚労省の規制も届きにくい。そのため、消費者庁の事故情報データバンクシステムに多くのトラブルが寄せられているので、その一部を抜粋した。
「4か月前のインプラント手術と治療の後から、めまいと耳鳴りがある。手術との因果関係はない、といわれた」
「インプラント手術中にボルトが上顎洞に落ち、口腔外科で摘出された」
「歯科でインプラントの施術を受けたが、神経を損傷して回復不能となった。痛み止めで対応するが、有料と言われた」
「手術を受けて、神経を傷付けられ頬や口唇の一部に麻痺が残った」
圧倒的に多いのは、インプラント手術後の麻痺、痺れなどの後遺症だ。これは下顎にある神経を損傷している可能性が高く、以前と同じように回復することは難しいとされる。
トラブル時に誠実な対応があるとは限らないので、インプラント治療は慎重に検討すべきだ。
【プロフィール】
岩澤倫彦(いわさわ・みちひこ)/1966年、札幌市生まれ。ジャーナリスト。報道番組ディレクターとして救急医療、脳死臓器移植などのテーマに携わり、「血液製剤のC型肝炎ウィルス混入」スクープで、新聞協会賞、米・ピーボディ賞。著書に『やってはいけない歯科治療』(小学館新書)などがある。
※週刊ポスト2022年9月30日号