二転三転した騒動はまだ終わらなかった。2021年12月13日、新井元町議が黒岩町長を強制わいせつ容疑で前橋地検に告訴。その3日後に、黒岩町長も新井元町議を虚偽告訴の疑いで前橋地検に告訴するなど騒動が法廷に持ち込まれることになった。前橋地検は両者の告訴状を受理したものの、黒岩町長に対しては嫌疑不十分で不起訴処分に。
今回の検察による新井元町議への在宅起訴は、黒岩町長の訴えを受けたものだ。この起訴が注目されているのは虚偽告訴罪という罪名。今回のように当事者間の主張が食い違っていると、検察は嫌疑不十分の処分を下すのが一般的だ。そのため、検察側はわいせつ行為がなかったことを立証する決定的な証拠を入手したと見られている。虚偽告訴罪は非常に重く、最高10年の懲役となる。
仮に虚偽告訴が認められるとすると、なぜ新井元町議がそんな主張をしたのかという疑問が残る。これについて黒岩町長は「草津で行なわれてきた『時間湯』が関係している」という。江戸末期から明治初期にかけて成立した伝統的な湯治療法である時間湯は48℃ほどの高温泉に3分間、1日3~4回入ることで、アトピー性皮膚炎など慢性皮膚疾患に効果があるとされている。この時間湯での湯治を指導する人を「湯長」と呼ぶ。黒岩町長と新井元町議はこの慣習をめぐって対立する立場にあったという。
「時間湯は医療が発達する前のものであり、今の時代に48℃の温泉に入れることは、医師の立場からも強い反対があります。また、湯長が医師のように問診し、裸を見るケースもあるということを認めてしまっています。今の時代に何の資格もない人が、医師のような診療や、女性の裸を見るようなことがあってはなりません。草津町から直接ではありませんが、第3セクターを経由して、湯長にお金も出ていました。年度によって差はありますが、約520万円も支払っていた年もあった。そこで町長として改革に着手しましたが、新井はその時間湯、湯長制度を守る側のメンバーだったんです。それで逆恨みしたのが、そもそもの発端だと思います」