偶然を装って、乳児を彼女の手からたたき落として、その子を亡きものにする──そう思って彼女に一歩近寄ったとき、バスがクラクションを鳴らして急停車した。それがなかったら、クラクションが0.1秒でも遅れたら、私は飛び掛かっていたんじゃないか。
女に対する憎しみは50年たったいまも消えることはないし、そのときの気持ちはリアルに残っている。
“私の心の中に住む犯罪者”は、私の一部だ。コインの裏表じゃないけれど、いつ“裏”が出るか……。
そんなことを思い出した私は、つい最近、刑務所とかかわりを持つことになった。いずれ、そのことも書かせていただきたい。
【プロフィール】
「オバ記者」こと野原広子/1957年、茨城県生まれ。空中ブランコ、富士登山など、体験取材を得意とする。
※女性セブン2022年11月10・17日号