万引きは窃盗罪。2019年8月に実施された「万引き防止サマーキャンペーン」で、警視庁上野署署長は「万引きを発見したら説諭で終わらず、110番してほしい」と店舗関係者らに訴え、万引き防止ステッカーを配布(時事通信フォト)

万引きは窃盗罪。2019年8月に実施された「万引き防止サマーキャンペーン」で、警視庁上野署署長は「万引きを発見したら説諭で終わらず、110番してほしい」と店舗関係者らに訴え、万引き防止ステッカーを配布(時事通信フォト)

 やがて彼の店舗のセルフレジは一部休止となり、サービスセンターから丸見えのセルフレジ数台のみ稼働するに至った。このセルフレジ導入、他の店員たちもかなりのダメージを負ったと話す。なにしろセルフレジの大規模導入で人員の補充をしなくなった上に、結局有人レジをフル回転させることになり、人手が足りないまま仕事が増えてしまったのだから。

「人手不足なのに人員削減して万引きが増えたら本末転倒ですよ。むしろ『セルフレジだからあそこは万引きしやすい』とか、悪質な地域系の匿名掲示板に書かれたりします。そんなサイトはたくさんあります。ネットで広まると泥棒が一気に集まるんですよ」

非正規に監視まで求めるのは酷

 セルフレジは本当に難しいらしく、筆者の知るコンビニも1台あったセルフレジを休止させてしまった。店長に聞けば、やはり故意、うっかりはともかく未精算で通ってしまう人がいて、店もそれほど大きくないことから有人レジのみにしたようだ。ちなみに筆者もセルフレジは苦手で、店によっては見張られている状態でスキャンし続けるのはなんだか居心地が悪い。というかスキャンをミスって窃盗の疑いをかけられたらどうしようなどと勝手に想像してしまう。実際、SNSなどでは「緊張する」「疑われると面倒」などの意見も多い。

「客に責任を転嫁するのもセルフレジの特徴ですからね。まあ、それくらいスーパーの万引きってみなさんが思うより多くて、警備員を配置してもそれほど効果がないくらいあの手この手で盗むんです。奴らにとってはゲームなのでしょう」

 もっとも彼の店舗の場合、警備員といってもカゴの整理や掃除までさせられていて何の「警備」員かわからなかったと話す。

「あと万引きGメンとか万引きバスターとかテレビで持ち上げられている(職業の)人たち、高いわりに全然役に立ちませんでした。まあ、たまたまうちに来たのが駄目な人だったのかもしれませんが」

 そんなプロですら難しい「他人を見張ること」に神経をすり減らし、虚しさを感じ、セルフレジのおかげで人員削減となって仕事ばかり増える、彼はスーパーを辞めた。

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