岸田・宮沢ファミリーへの甘さが政権基盤を蝕む
宏池会(岸田派)は、保守本流の中核で、吉田茂に抜擢された大蔵官僚だった池田勇人が創始した政策に強い派閥で、大平正芳あたりまではその伝統を保持していた。ところが、ここのところ、宮沢喜一、加藤紘一、堀内光雄、岸田文雄と岸田の前任者の古賀誠を除いて世襲代議士が会長を務めている。
穏健リベラルでマスコミ受けもいい集団であるが、その身内の甘さのつけがここへ来て吹き出したような気がする。
とくに、広島県政界は岸田・宮沢・池田というファミリーが旧民主党系の野党と手を組んで支配している。池田勇人には男子がいなかったので、議席は継承されなかったが、しばらくして次女・紀子の夫である池田行彦が復活させ外相になった(勇人の死後に結婚)。その死後は、勇人の長女・近藤直子の娘婿である寺田稔に引き継がれた。池田も寺田も広島県出身の大蔵官僚だ。
岸田家では、文雄の曾祖父の代から事業に成功して祖父も父も代議士だったが、通産官僚だった岸田文武が50歳を超えてから政界入りしたのは、妹が宮沢喜一の弟である宮沢弘(元法相・広島県知事。宮沢洋一元経済産業相の父親)の夫人だったので、宮沢首相実現に協力する趣旨もあった。
そして、現在の湯崎英彦知事は、自民党の宏池会グループと連合に支えられているので、2019年の参議院選挙では、自民党は定数2の議席を独占できる可能性があるのに宏池会は溝手顕正のみを公認することを望み、党本部の意向で河井案里が公認に加えられたものの自民党県連は二人当選を狙う組織的努力をせず、窮した河井陣営が買収に走った(河井案里は湯崎知事が初当選時の対立候補だった)。
河井と森本が当選して溝手は落選したが、この対立から河井陣営への批判が盛り上がり、それが検察の背中を押して、従来の常識では立件されなかったケースであったはずが、河井夫妻の逮捕につながった。
世論の支持があれば、有名人を従来は罪に問われていなかった罪状で立件することや人質司法への疑問も、ゴーン事件などを材料に、上記の『日本の政治「解体新書」』でいろんな角度から紹介している。