7月の安倍晋三・元首相暗殺事件に端を発した旧統一教会問題で、発言がことごとく「炎上」してきた爆笑問題・太田光(57)。教団の「擁護派」とも捉えられた彼の真意はどこにあったのか。太田と番組で共演し、教団追及の先頭に立つジャーナリスト・鈴木エイト氏との対談が実現した。【前後編の前編】
信者に声が届くことは喜ばしい
鈴木:9月のサンジャポ(『サンデージャポン』TBS系)で、ある出演者に「統一教会擁護派なんですか」と聞かれた太田さんが「いやいや、それも難しい」と言い淀んだのが印象的でした。太田さんは「教団擁護」と批判されることを率直にどう思っているんですか。
太田:言葉って本当に難しいんですよ。僕が最初に危機感を覚えたのは、『24時間テレビ』(日本テレビ系)のボランティアスタッフとしてある女性信者が7年間活動し続けていたと、統一教会が公表した時。メディアは信者を「二度と使うな」と批判したけど、その女性が本当に悪質な人間なのか、僕らには見えないじゃないですか。
純粋に人の役に立ちたくて7年続けたかもしれないのに、「統一教会の信者は悪い奴」と排除していいのか疑問だった。彼女は今地元で、周りの人にどう言われてるんだろうと。そういう点で言えば、擁護派と捉える人もいるのかもしれない。
鈴木:そういう逡巡があって、擁護派かと聞かれて答えに詰まったんですね。「擁護派ではない」と言ったら末端の信者を切り捨てることになる。
太田:そういうことです。僕は、全国弁連(全国霊感商法対策弁護士連絡会)の最初の会見で、山口広弁護士が「何十年も統一教会問題を扱うのは、彼らが本当にいい人たちだから」と言ったことが耳に残って離れないんです。一番近くにいた弁護士が「いい人」と呼ぶ人たちを切り捨てていいのかと。
鈴木:僕は2世を中心に現役信者を取材してきたから、太田さんが現役信者の気持ちをわかってくれることがありがたかった。十把一絡げに教団関係者が悪いと言うと、中にいる人がいたたまれないだろうから。それでも太田さんの真意は伝わらず、毎回炎上しましたね。
太田:まあ人柄でしょうね。今までの悪行がありますんで(笑)。
鈴木:一方で、「テレビは見るな。でも太田光さんの言うことは聞け。自分たちがやってることが正しいとわかる」という内容のメッセージが教団の信者たちに出回っていると話題になりました。教団に太田さんの発言が利用されてしまっているという指摘もありましたよね。
太田:それは僕にとって喜ばしいことなんです。僕の声は信者たちに届くんだということだから。「だったら聞いてもらいたいことがある」ってことなんですよ。
僕は立川談志という人物が大好きなんです。彼にとって古典落語は、いってみれば信仰の対象だった。談志師匠は自分の信仰を守るために、時代に取り残された古典落語をもう一度社会の真ん中に取り戻そうと格闘したんです。同じように、これだけ世間から否定される統一教会について信者が本当に信仰を守りたいならば、社会と繋がるよう努力すべきだよと。社会と繋がらないと生き残れないんだから。
鈴木:教団は、逆に社会から信者を分断しようとしています。国内の信者が信仰を守りたいなら、教団がお金の問題も韓国本部との関係もすべてクリアしてからでないといけないでしょうね。