カミナリに残された出場チャンスは、あと4回だ。たくみが話す。
「今度の(サッカー)ワールドカップが開催される年。それが僕らのラストイヤーなんですよ」
出場するか否か。それは、そのときになってみないとわからない。たくみの心は今も揺れている。
「僕もたぶん、出たくはないんですよ。M-1の季節が近づいてきたからと言って、ワクワクはしていないので。むしろ、ネガティブ。義務に近いのかな。芸人としての」
その言葉に対してまなぶは即座に反論した。
「義務じゃないでしょ」
2023年もまた綱引きになりそうだ。
M-1王者は、ほぼ同じ感想をもらす。これでもう出なくていいと思った、と。M-1のM-1たるゆえん。それがこの言葉に凝縮されている。
【プロフィール】
中村計(なかむら・けい)/1973年、千葉県生まれ。ノンフィクションライター。著書に『甲子園が割れた日』『勝ち過ぎた監督』など。近年はお笑い関連の取材・執筆を多く手がける。新著に『笑い神 M-1、その純情と狂気』。
※週刊ポスト2023年1月1・6日号