残念ながら、コロナ禍のコンサートはコール&レスポンスができません。ですが、本来なら「き・よ・し」とコールするところで、チャッチャッチャッと手を叩くファンの皆さん。心の中では「き・よ・し」ではなく、「Ki・i・ na」と叫んでいたかたが大半でしょう。この1年は、「氷川きよしからKiina(キーナ)へ」の進化を皆さんに少しでも理解していただくための期間だったと言っても過言ではありません。
親しくしている氷川サンのファンの女性から聞いたのですが、2022年11月初旬、九州地方でのコンサートで「氷川きよしを演じてきたKiinaです」「氷川きよしは終わり。しばらくお休みしたらKiinaになります」というMCがあったそうです。
前述の『旅の香り〜』や、文化放送の『氷川きよし節』(現『氷川きよし 限界突破RADIO』)の最初の頃は、想いを言葉にするのがそれほど得意ではなかった氷川サンが、いまでは、コンサート専属司会者の西寄ひがしサン(49才)よりもコミカルに、そして滑らかに言葉を紡いでいきます。
観客の皆さんの“年齢いじり”がメインだった頃に比べると、ストレートな心からのメッセージが増え、いま苦しんでいるかたや悲しんでいるかたに寄り添い、力づけてさしあげるコメントも近年は恒例です。
“産みの苦しみ”のような葛藤も痛いほど理解でき心配な時期もありました
「演歌界のプリンス」として彗星の如く現れてから、コンサートで全国を回り、お芝居と歌謡コンサートの座長公演を「明治座」をはじめとする日本を代表する劇場で行い、「日本レコード大賞」や「日本有線大賞」「全日本有線放送大賞」「日本作詩大賞」などで毎年、賞に輝き続けた23年間。デビューの年から連続出場してきた『NHK紅白歌合戦』は2022年、紅白の枠を超えた「特別企画」でのステージとなりました。
2022年12月20日に放送された『氷川きよし 22年の感謝をこめて 限界突破RADIO』では、デビュー曲が『箱根八里の半次郎』と言われたとき、「なんで私が……」と最初は衝撃を受けたという本音を吐露。それでも、同曲作詞の松井由利夫先生(享年83)と作曲の水森英夫先生(73才)の期待に「お応えしたい」という一心で「絶対にチャンスを大ヒット曲に結びつけたい、それが毎日の闘いでしたね」と回想しました。