玄関チャイムの音が、広い家のすみずみにまで響く。普段は5人家族が暮らす賑やかな邸宅だが、その時間は買い物から帰宅したばかりの高齢の女性ひとりだけが家にいた。女性はずいぶん前に足を悪くし、玄関まで行くのにも少しばかり根気が要る。やっとの思いでドアを開けると、立っていたのは見知らぬ男。その瞬間、陰から複数の人間が飛び出してきて、一斉に家の中へとなだれ込んだ。
女性が悲鳴を上げる間もなく、男たちは結束バンドで女性の両手を縛り上げ、暴行を加える。顔を殴り、くずおれた体を足蹴にし、頭を踏みつける。頭からは血が滴り、折れた歯が床に落ちる。“カネの在り処”を吐かせるためにねじり上げたのか、左腕の骨は粉砕骨折していた──。
東京と神奈川の境に位置する多摩川沿いにある、東京・狛江市の閑静な住宅街で、1月19日、凄惨な強盗殺人事件が発生した。犠牲になったのは、大塩衣與さん(享年90)だった。現場となった邸宅は、地上2階地下1階建てで、周囲の住宅と比べても一際大きい。シャッター付きのガレージには高級外車が4台並び、広いルーフバルコニーも備えている。
「息子さん家族との5人暮らしで、いまから5年ほど前にご家族で引っ越してきました。ご主人はこちらに転居する前に亡くなられたそうですが、東京・麻布で寿司店を経営していたそうです。
だからなのか、奥さまもブランド物のスカーフを巻いたり小綺麗にしていて、90才とは思えないほど若々しかった。息子さんは貿易関連の会社をやっているとかで、表札には英語の会社名が書いてありました。“息子たちには楽をさせてもらっているの”と話していました」(近隣住民)
だが、その「経済的余裕」が、事件の契機になった。
逮捕者が出ても凶行は止まらない
大塩さんが邸宅の地下1階で倒れているのを発見したのは、夕方帰宅した家族と警察官だった。