台湾軍が、中国人民解放軍による台湾侵攻作戦に備えて、今年7月に民間の空港を利用した軍用機の緊急離着陸訓練などの大規模な軍事訓練を実施することが明らかになった。
台湾軍が毎年行っている「漢光軍事演習」の一環だが、台湾軍の軍事演習で民間空港が使われるのは初めて。中国人民解放軍による台湾の都市攻撃作戦強化に対抗する意味がある。台湾の中央通信社が報じた。
計画では、台湾軍が中国軍の攻撃によって台湾内の空軍基地や滑走路が破壊されるなどの大きなダメージを受け、戦闘機が民間の空港や高速道路に着陸せざるを得なくなるという事態を想定。軍は台東市内の高速道路9号線の一部を「緊急着陸帯」に指定し、台東県の道路の一部を緊急滑走路にすることを検討しているという。
台湾の高速道路は中国軍の攻撃に備えて、台湾の戦闘機が離陸・発着できるように、道幅が広く、直線部分が長い軍用滑走路と同じように造られているが、これまでの軍事演習では実際に軍用機が民間の空港や高速道路を使った例はない。
しかし、米下院議長としてナンシー・ペロシ氏が昨年8月、25年ぶりに台湾を訪問して以来、中国軍機による台湾海峡の中間線を越える軍事演習が頻繁に行われており、台湾側は危機感を強めている。
このようななか、台湾の蔡英文総統が3月から4月にかけて、米国に立ち寄り、カリフォルニア州で、現職のケビン・マッカーシー米下院議長と会談したことから、中国軍による台湾侵攻を想定した大規模な軍事演習が実施されるとの観測が強まっている。
また、3月に北京で開催された中国の全国人民代表大会(全人代=国会に相当)では、中国人民解放軍代表の全人代副委員長で元中央軍事委聯合参謀本部副参謀長の馬宜明中将が「中国軍は、野戦経験は豊富だが、都市部を攻略する軍事作戦の経験は少ない。台湾の9割は都市部であり、都市攻撃を強化する必要がある」などと強調したことも、台湾軍が台東市の都市部にある台東空港を軍事演習の場所に設定した理由とみられている。
台湾国防部(日本の防衛省に相当)は、この軍事演習について詳しいコメントを控えているが、中台の緊張がますます激化していることは間違いない。