たしかに、坂本や丸ら主軸が不調のなかで、開幕直後に数少ない“元気印”としてオコエが存在感を見せていたことは間違いない。広澤氏はこう続ける。
「もちろんオコエが安定して力を出せないだろうと思っているファンや評論家も多かったと思います。昨年までほとんど一軍の試合に出ていなかったので、体力的に厳しいところがあるのもわかる。ただ、それでも一軍で使い続けることで成長する選手は多くいます。ちょっと止まった後に、また伸びるケースもある。GWは中日に3タテを食らったわけですし、もう少し様子を見てもよかったのではないでしょうか」
楽天で期待を裏切ってきたオコエが、新天地の巨人で活躍したとなれば、来年以降の現役ドラフト活用の弾みにもなる。
「現役ドラフトで環境が変わったことで活躍している選手もいますが、環境というのはすぐに慣れるもの。環境が変わっただけで打てるほどプロは甘くない。過去にどんな問題があったのかを分析し、コーチがテクニカルな部分を修正させないといけないケースがほとんどです。オコエにしても、二軍に落としただけではダメで、コーチが修正点を見極められるかでしょう」(広澤氏)
FAやトレードなど大型補強の多い巨人では、一軍の席を大物ベテラン勢が占め、若手がなかなか育てられないという構造的な問題が長年、指摘されてきた。広澤氏は、「いずれにしてもジャイアンツはどんなにポテンシャルがある選手を獲得しようとも、育成が下手だということは間違いないですね」と古巣に“喝”を入れるが、果たして今後、オコエが一軍に戻って“真の覚醒”を見せる日はくるのだろうか。
※週刊ポスト2023年5月26日号