ジェラード店

青木家が経営していたジェラート店

半ば無理やり自衛隊に入隊

 その後、青木容疑者は高校受験を経て長野県内の進学校に合格。高校卒業後は首都圏の大学に進んで農業を学んでいたが、人生の歯車が狂い出したのはちょうどこのころのことだという。前出・地元住人が語る。

「進学後、政憲くんは人間関係に問題があって大学を中退したと聞きました。地元に戻ってきてからは、お父さんが半ば無理やり自衛隊に入隊させたこともあったそうですが、それも長続きせず、2、3か月で除隊してしまった。再度地元に戻った彼は、実家の農園の手伝いをしつつ、消防団とお祭りの保存会に入ったりしていたみたい。ただ、そこでもあまり人づきあいがうまくいかなくて、徐々に来なくなっていました。どうやら、新しく趣味になった射撃を黙々と続けていたみたい」

 父・正道氏と同僚だった中野市議会副議長・宮島包義市議(76)は、市庁舎内での会話内容を振り返る。

「議長からは、息子さんがいるということはお聞きしていました。去年の夏から秋ぐらいに『ウチの始めたジェラートの原料を作る農園主になってくれた』という話をしていましたね。自分の跡取りになってくれたということで、それは良かったですねというような話をした。安堵感はあったんじゃないですかね。ちょうどジェラート店が中野市に出店したタイミングだったと思います」

 正道氏は、2019年に同県軽井沢町でジェラート販売店を始めている。同店の成功を受けて2022年秋には、中野市内で2号店をオープンさせたばかり。青木容疑者はこのタイミングで、自身の名前を冠した農園『マサノリ園』を引き継いでいたことになる。今回の事件は、それから1年も経たずして起きてしまった。

「本人は店の手伝いをいやいやしていた様子で、基本的にはお母さんがお店を仕切っていたそうです。実際のところ、彼は自宅に引きこもり状態だったようで、農園主ではありながらも実態はその名義だけだったようですね。直近では、お父さんが“息子がふさぎ込んでいる”と周囲に漏らしていたということも聞きました。政憲くんは親の跡を継ぐなかで、思い悩んだところがあったのかもしれません」(前出・地元住人)

 青木容疑者は警察の取り調べに「(死亡した女性2人に)自分が周囲から孤立しているように悪く言われた」という趣旨の供述をしているという。しかし、女性2人とのトラブルは確認されておらず、警察は青木容疑者が一方的な恨みを募らせて襲撃した可能性があるとみて調べている。

《この世の中で最も大切なものは『命』だと思います。では二番目は何かと問われたら私は間違いなく『金』と答えるでしょう》──卒業文集ではお金について力説しながらも、最も大切だとしていた命を奪った青木容疑者。彼は今、何を思っているのだろうか──。

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