「外で遊ぶくらいなら、借金返済のプランを考えたら!」
弁護士事務所へ向かった沙也香は、口座を凍結してもらったが、ほとんど引き出されていた。続いて自己破産の手続きを始めた。父親や友人を除き、借金をした銀行、カード会社、消費者金融は7~8社。返済の期日が迫っていたが、振り込んでいなかったために支払い催促の電話が立て続けにかかってきた。それらもすべて弁護士に一任した。
そこからは勤め先の給料だけで生活する失意の日々。弁護士費用は積み立てにしてもらったので、月々5万円ずつ貯金した。外食もしなくなり、会社には弁当を持参した。民間の保険会社に月々1万円の掛け金を支払っていたが、医療保険など一部を解約し、生命保険だけを残して月々6000円の負担に減らした。沙也香が苦虫を噛み潰したように言う。
「服を買うのも控えるようになりました。友達との外出も減らし、遊びに行かなくなりました。お酒を飲んでもどうにもならないので。第一お金がもったいないし、弁護士費用の積み立てに節約をしなければいけなかったので」
それでもたまには、気晴らしに外食をする時もあった。訪れた店の写真をインスタグラムにアップすると、事情を知る友人からはこんなコメントが寄せられた。
「つらいのは分かるけど、外に遊びに行くぐらいなら借金返済のプランを考えたら!」
借金返済の義務がある被害者は、片時の楽しみすらも許されないのか。沙也香が苦渋に満ちた顔で語る。
「その友達も決して悪気はなく、私のためを思って言ってくれたのは分かるんです。借金をした別の友人が私のアカウントをフォローしているので、その子の気持ちを考えなよってことなんですけど、これは精神的にきつかったです」