不安も、実は哺乳類の大事な機能
中野:そもそも不安を感じる仕組みが人類だけでなく、哺乳類の脳の奥深くに組み込まれていることを考えると、不安は生存適応的にとても大事な機能のはずです。不安がなければ、うっかり捕食者の前に出て食べられてしまうという時代も長かったわけですし。
林:それを避けるためには、臆病になって物音や気配に敏感になるしかない。
中野:ええ、なるべく外に出ない方がいいけれど、引きこもっているだけでは食糧がとれないので、襲ってくる生物がいない時間を見計らって外に出て、慎重に餌を探すという生活を我々の祖先はしていたと思いますよ。
林:LOVOTには不安と好奇心が入っていますけど、実は不安って何をやるにも大事なドライバーだなと思って見ています。結局、パフォーマンスがもっとも出やすいのは、不安と情熱の両方が強い状態だと思うんです。ぼくは成功している経営者にお会いすることが多いのですが、皆さん、大変な情熱家である一方で、非常に細かいことにも気を遣っていらっしゃいます。それは気遣いができるというより、不安が強いのだと思います。ぼくも経営者になってから、どうやら不安は少ない方がいいという簡単な話ではないなと思うようになりました。
中野:不安も良し悪しですよね。そういえば、不安な気持ちを持つことのメリットの一つに、不安がコミュニケーションツールになるという側面もありますね。不安な気持ちを吐露すると、それだけで人との距離が縮まったりします。
林:相手の弱みが見えると安心するし、共感することもありますね。
中野:ああ、この人も人間らしい人なんだと協調したり、共感したりするための入口になりますから、仲間をつくるときのタクティクスとしてはかなり有効です。まったく不安のない人って、むしろどう付き合ったらいいかわからない(笑)。不安については皆あまりよく言わないけれど、実は人間にとって非常に重要な感情だと思いますね。