日本語で話していると本当の自分という感じがする、と聞くと、日本語を教えている人間としてはとても嬉しい。
「そうそう、私、四字熟語が好きで、コロナ禍で結構勉強していたんですけど、日本歴12年で、最近やっと見つけた日本語があるんです」
ラウラさんは、うふふ……という表情をしている。なんだろう?
「ちょっと利己的な気持ちが働いている、相手の何かを自分に都合のいいようにする、みたいなことを言える日本語ないかな? ってずっと探していて、この間、仕事関係の方から来たメールにその四字熟語があったんです。これ意味分からないな、と思って調べたら……まさに探していた言葉でした。『我田引水』です」
おお、なるほど!
「『自分の牛が溝にいる』っていう、フィンランド語のことわざに意味がよく似ているんですよ。そうか、日本はお米の国だから、他の人の田んぼから自分の田んぼに水を引くことに例えてるのか、って。フィンランドは乳製品の文化で牛がいっぱいいるから牛。お国柄が出てて面白いですよね。これだ! と思って。
こういう、ぴたっとはまる言葉を見つけられた時の喜びってもう、ハンパない。たまらないです。自分の中に言葉が増えていくのがうれしい。いつかうまく使ってみたいですね」
(了。第1回から読む)
【プロフィール】ラウラ・コピロウ/フィンランド生まれ。フィンランド大使館商務部上席商務官。ファッション・ライフスタイル担当。高校生の時、北海道・函館に留学し、大学で早稲田大学に留学。その後、国費留学生として北海道大学大学院に入学し、修了。日本大手企業での就職を経て、2018年から現職。パフェ愛好家としても知られ、インスタグラム(@laura_finrando)には美味しそうなパフェの写真が並ぶ。
◆取材・文 北村浩子(きたむら・ひろこ)/日本語教師、ライター。FMヨコハマにて20年以上ニュースを担当し、本紹介番組「books A to Z」では2千冊近くの作品を取り上げた。雑誌に書評や著者インタビューを多数寄稿。