2005年に女優・濱崎けい子氏(左)と『宮城野』を演じた堺(写真/芥川仁)

2005年に女優・濱崎けい子氏(左)と『宮城野』を演じた堺(写真/芥川仁)

芸術的な演技

 俳優として順調に階段を昇りつつも、堺は倍返しならぬ“恩返し”を忘れなかった。堺が高校演劇部のときに参加した研修で、講師を務めた宮崎県在住の女優・濱崎けい子氏が語る。

「私が主宰する演劇企画『二人の会』で上演してきた『宮城野』という戯曲に堺君を誘ったことがありまして。2005年に20周年を迎えたので、すでに売れっ子だった堺君にダメもとで連絡したら『やります!』って二つ返事。

 彼は劇のために、わざわざ仕事を1か月間休んで宮崎に来てくれました。舞台上での堺君は四方を囲むどのお客さんにもわかるように演じていて、舞台人としての技術や迫力が素晴らしかった」

 そうして堺は『半沢直樹』で40%を超える最高視聴率を叩き出し、国民的俳優に名を連ねた。同ドラマで共演したラサール石井とは、アニメ『こちら葛飾区亀有公園前派出所』(1997年)に声優として出演して以来の再会だった。ラサールが言う。

「『こち亀』では僕が両津勘吉、堺さんが御曹司の白鳥麗次役でした。『半沢直樹』でご一緒した時は、堺さんのほうから“実は僕、『こち亀』で共演させていただきました”と声をかけてくれましたね。その気さくな一面が現場の一体感を生み出していたのは間違いない」

 これからも鬼気迫る役作りで、作品に命を吹き込んでいくのだろう。

(了。前編から読む

※週刊ポスト2023年8月11日号

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