西武池袋線を走る特急列車Laviewは、建築界のノーベル賞ともいわれるブリツカー賞を受賞した妹島和世さんがデザインを担当した(2019年7月撮影:小川裕夫)

西武池袋線を走る特急列車Laviewは、建築界のノーベル賞ともいわれるブリツカー賞を受賞した妹島和世さんがデザインを担当した(2019年7月撮影:小川裕夫)

JRと私鉄の乗り入れ増加で期待されること

 JR各社は、全国に路線を有する旧国鉄を引き継いだ。そうした事情もあり、自社線内だけで長距離の列車を運行することが可能だ。しかし、路線が短い私鉄はそうはいかない。

 特急専用車両を多く有する近鉄は約501.1キロメートルの路線長を有する日本最大の私鉄だから別格だとしても、同じく大手私鉄に列する相模鉄道(相鉄)は車両回送・車両搬入専用の厚木線を含めても約42.4キロメートル。相鉄本線に限れば約24.6キロメートルしかない。

 これだけ短い距離だと、わざわざ特急を専用車両で運行する必要性は乏しい。利用者もわざわざ特別料金を払うほどではないと考えてしまうだろう。そうなると、特急専用車両は不経済になり、それは経営を圧迫しかねない。

 このほどスペーシアXという豪華な特急専用車両を登場させた東武は、約463.3キロメートルと広大な路線網を有し、スペーシアXが走る浅草駅―東武日光駅・鬼怒川温泉駅間は前者が約135.5キロメートル、後者が約141.0キロメートルと長い。それだけに特急専用車を走らせるだけの価値がある。

 また、東武は2006年からJRと相互乗り入れを開始している。仮にスペーシアXがJR線へと乗り入れることになれば、スペーシアXがかなりの範囲まで運行される。しかし、残念ながら「今のところ、スペーシアXを他社線で運行することは考えておりません」(東武広報部担当者)という。

 とはいえ、今回、関東私鉄の担当者にもスペーシアXの運行開始についての感想を訊ねたが、担当者は一様に「注目している」「期待している」と答えた。社交辞令的にも受け止められるが、同業他社からも豪華特急のスペーシアXが注目を集めていることは間違いない。

 そして、スペーシアXが好評を博せば、ライバルの私鉄各社も追随して新しい特急専用列車を走らせることに意欲を燃やすかもしれない。東武とスペーシアXの奮闘に期待したい。

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