インフルエンサー氏はこの発信のあと、〈日本の科学警察研究所の調査による性犯罪者が被害者を選ぶ理由〉として出版社による新書の抜粋記事も引用している。しかし当該記事における〈被害者が挑発的な服装をしていた〉を辿ると、
〈一方で、次のような項目は、上位にはならなかった。〉
とある。この部分を引用せずに〈被害者が挑発的な服装をしていた〉を含む一連の箇所のみを引用している。これに至っては日本語のサイトなので単にリンク先に飛べばわかる話、仮にチェリーピッキング(意図的に自分の意見に有利な論拠のみ選ぶ行為)としてもすぐばれる話で意味はないように思うが、もういいだろう。
自分が信用している、好きでフォローしているインフルエンサーの言うことを信頼する、支持する行為そのものは何ら否定されるものではない。自分が考えていることを、自分の言いたいことを言ってくれたら嬉しくなってしまうのもわかる。しかし彼らだって人間なので誤りはあるし、目的外利用の意図があったりするかもしれない。
〈うそはうそであると見抜ける人でないと(インターネットを使うのは)難しい〉
※当時の映像では(掲示板を使うのは)だが筆者の注釈に替えた。
というインターネットミームがあるが、見抜けなければ恥をかくかもしれないし、こうした事件化したような案件であれば下手をすれば訴えられる可能性だってある。
誰もが発信できるインターネット、いまさらの話かもしれないが、こうした事象がいまだ繰り返されているのも事実。裏取りをしろとか、綿密に調査しろとかでなく、シンプルにいったん立ち止まって「まず、確認する」ということが、自分を守るためにも大切に思う。
【プロフィール】
日野百草(ひの・ひゃくそう)。日本ペンクラブ会員。出版社勤務を経て、社会問題、社会倫理のルポルタージュを手掛ける。大学院では芸術学(文芸領域)を専攻、短詩文学も手掛け、評論「『砲車』は戦争を賛美したか 長谷川素逝と戦争俳句」で日本詩歌句随筆評論協会賞奨励賞(評論部門)受賞。著書『評伝 赤城さかえ 楸邨、波郷、兜太から愛された魂の俳人』(コールサック社)など。