「エチゾラム中毒」という言葉もあるとして警鐘を鳴らすのは、はしぐち脳神経クリニック院長で脳神経外科医の橋口公章さんだ。
「確かに効果は高いため、期間を決めて一時的に服用するならいい。しかし漫然とのみ続ける患者も多く、気がついたら中毒のような状態になって薬が手放せなくなることも多いのです」
光伸メディカルクリニック院長で整形外科医の中村光伸さんが依存を懸念するのは、エチゾラムと同じくベンゾジアゼピン系に分類される睡眠導入剤「トリアゾラム」だ。
「依存性が高いうえ、夢遊病のような症状や中途覚醒時の健忘などの副作用が報告されています。意識がもうろうとしているときに、転倒など予測外の事態を招く可能性が高いので、のみたくない薬です」
エチゾラムの次に多くの専門家たちが「NO」をつきつけたのは、脂質異常症の治療に使われる「スタチン」系の薬。東海大学名誉教授で大櫛医学情報研究所所長の大櫛陽一さんは、その理由は強い副作用にあると説明する。
「スタチン系の薬はコレステロール値を下げるとして広くのまれている薬ですが、多くの人にとってデメリットがメリットを上回ります。
多用すると運動筋が壊死して筋肉痛や脱力などの症状が出る『横紋筋融解症』が起こる可能性があり、糖尿病のリスクも最大で2.61倍上がることがわかっています。さらに、がんや出血性の脳卒中などのリスクも高まり、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の発症率を10〜100倍上げるという報告もあり、重症筋無力症が副作用に追加されました」
大櫛さんは「そもそも脂質異常症は治療の必要がない」と断言する。
「日本のコレステロール値の基準は、欧米で20年前に用いられていたものがまだ使われています。現在、悪玉といわれるLDLコレステロールの基準値の上限は、欧米では190mg/dlですが、日本の基準は119mg/dl。この厳しい基準によって、女性の7割が異常と判断され、薬をのむことになります。
しかし実際に日本人女性に関しては、コレステロール値が高い方が、死亡率が低いこともわかっているのです。欧米では2004年から心血管疾患にかかっていない女性にコレステロール低下薬は不要としています」(大櫛さん・以下同)