誰もがPFAS入りの水を口にしている可能性がある以上、血液検査の実施と結果を分析できるような体制が求められると青木さんは続ける。
「環境省は住民の血液検査を広く行うことに後ろ向きです。厚生労働省、内閣府食品安全委員会も動きが鈍い。私たちは岐阜、大阪などでも血液検査をし、データを集約する予定です」(青木さん)
米軍基地周辺以外にも高濃度のPFASが検出されている場所がある。名古屋空港や自衛隊小牧基地がある愛知県豊山町でも血中濃度がアメリカの指針値(7種類のPFASの合計値20ng/ml)を超えている住民が22人いた。
「石油コンビナートや大型立体駐車場、化学工場、ゴミ埋立地などに近い場所の地下水は汚染の危険性が高い。兵庫県明石市では川の上流部にある産廃処理場からPFASが流出した例もあるほか、大阪府摂津市ではPFASを作っていた化学工場周辺の地下水が汚染されたケースもあります」(植田さん)
パット・エルダーさんは、PFAS問題は飲料水の問題に留まらないと指摘する。
「米軍は、PFASを摂取する主な経路は飲み水だけだと日本人に信じさせようとしている。しかし、欧州食品安全機関は体内のPFASの最大86%が食品、特に魚類に由来するとしている。中でも河川に含まれるPFASは、人間の健康にとって最大の脅威。なぜなら魚の体内で生物濃縮されたPFASは、その濃度が水から摂取したときの数百倍から数千倍にもなることが考えられるためです」
汚染土壌で育った野菜から高濃度PFASが検出された例もあるため、暫定指針値を超えていない(測定していない)地域に住んでいても、PFASを摂取してしまう可能性があり、口に入るものの安全は大きく脅かされているのが現状だ。京都大学准教授でPFAS問題に取り組む原田浩二さんはこう指摘する。
「水道水は厚労省の暫定指針値である50ng/l以下であれば、上限に近い数値であっても問題なしとする自治体がほとんど。そもそも調査が義務づけられているわけではないため、行っていない水道事業者もある。国が汚染源を積極的に特定せず自治体任せにしていることは大きな問題です。環境省や他省庁も含めて、水に限らず対策を考えていく必要があります」
日本の水や食品は安心──そんな神話はPFASによってもう崩れ去っている。
※女性セブン2023年9月28日号