2002年4月、児童への性的虐待疑惑をめぐり、米カトリック教会の枢機卿らが出席してバチカンのローマ法王庁で開かれた特別会議(イタリアTGIテレビから)(AFP=時事)

2002年4月、児童への性的虐待疑惑をめぐり、米カトリック教会の枢機卿らが出席してバチカンのローマ法王庁で開かれた特別会議(イタリアTGIテレビから)(AFP=時事)

 実際、どれだけ伏せても学校の周りにいたマスコミには、近藤さんの娘が被害者であることが知られ始めていた。そうなると、学校側は被害届を出さないよう求めてきた。

「仕方ないけどそうするしかないと、夫と娘、きょうだいで話し合って決めました。それが正しかったとは、今も思っていません。加害者はもう教員はしていないと言われましたが、時間が経ったからと、どこかで教育に携わる仕事をしているかもしれず、新たな被害者が出るかもしれない。逮捕されていれば、名前が知れ渡り、簡単に教育の仕事はできないはずですから」(近藤さん)

 性犯罪者のデータベースを使い、教育現場など子どもと接する職場での従事について、登録者を制限するという「日本版DBS」創設に向けた議論が熱を帯びていたが、結局、国会への提出は見送られたと報じられている。教職者によるわいせつ行為が相次ぐ昨今の状況を鑑みると、特にこの分野において、我が国の取り組みはあまりに後手後手に回りすぎている感が否めない。

「被害に遭った後、カウンセラーの紹介で被害者同士の会合に参加したこともありました。教員に被害を受けたが、周囲の目もあって被害届を出せなかったという母親二人とお話をしました。共通するのは、被害者なのに教員の将来を盾に圧力をかけられることと、脅されたり、周囲の目に更に怯えなければならないようになることでした。訴えて教員が逮捕されても、わたしたちのせいで先生が逮捕されたとも言われかねない。また、周囲の事件に関係のない生徒にも”迷惑”がかかる、とも言われます。受験や就職に影響する、と。被害者にしかわからない苦悩だと思います」(近藤さん)

 近年は、世界中で子供に対する虐待、性被害の告発が相次いでいる。なかにはカトリック教会やアメリカボーイスカウト連盟など、子供が安全に過ごせるはずの場所での被害も多い。大人になってから何十年も前の被害をようやく訴えた人たちは、被害者なのに自分が悪かったかのように考えていたとも告白する人が多い。傷をいやすのではなく、被害者が悪いと認知の歪みを押しつける風潮は、学校で起きている不祥事への対処をみると、いまも続いているのだろうと思わずにはいられない。

関連記事

トピックス

水卜麻美アナ
日テレ・水卜麻美アナ、ごぼう抜きの超スピード出世でも防げないフリー転身 年収2億円超えは確実、俳優夫とのすれ違いを回避できるメリットも
撮影現場で木村拓哉が声を上げた
木村拓哉、ドラマ撮影現場での緊迫事態 行ったり来たりしてスマホで撮影する若者集団に「どうかやめてほしい」と厳しく注意
女性セブン
退職した尾車親方(元大関・琴風)
尾車親方、相撲協会“電撃退職”のウラで何が…「佐渡ヶ嶽理事長」誕生を目指して影響力残す狙いか
週刊ポスト
5月13日、公職選挙法違反の疑いで家宅捜索を受けた黒川邦彦代表(45)と根本良輔幹事長(29)
《つばさの党にガサ入れ》「捕まらないでしょ」黒川敦彦代表らが CIA音頭に続き5股不倫ヤジ…活動家の「逮捕への覚悟」
NEWSポストセブン
5月場所
波乱の5月場所初日、向正面に「溜席の着物美人」の姿が! 本人が語った溜席の観戦マナー「正座で背筋を伸ばして見てもらいたい」
NEWSポストセブン
氷川きよしの白系私服姿
【全文公開】氷川きよし、“独立金3億円”の再出発「60才になってズンドコは歌いたくない」事務所と考え方にズレ 直撃には「話さないように言われてるの」
女性セブン
田中みな実、寝る前のスマホ断ちで「顔のエラの張り出しがなくなった」 睡眠の質が高まり歯ぎしりが軽減された可能性
田中みな実、寝る前のスマホ断ちで「顔のエラの張り出しがなくなった」 睡眠の質が高まり歯ぎしりが軽減された可能性
女性セブン
AKB48の元メンバー・篠田麻里子(ドラマ公式Xより)
【完全復帰へ一直線】不倫妻役の体当たり演技で話題の篠田麻里子 ベージュニットで登場した渋谷の夜
NEWSポストセブン
”うめつば”の愛称で親しまれた梅田直樹さん(41)と益若つばささん(38)
《益若つばさの元夫・梅田直樹の今》恋人とは「お別れしました」本人が語った新生活と「元妻との関係」
NEWSポストセブン
被害者の平澤俊乃さん、和久井学容疑者
《新宿タワマン刺殺》「シャンパン連発」上野のキャバクラで働いた被害女性、殺害の1か月前にSNSで意味深発言「今まで男もお金も私を幸せにしなかった」
NEWSポストセブン
広末涼子と鳥羽シェフ
【幸せオーラ満開の姿】広末涼子、交際は順調 鳥羽周作シェフの誕生日に子供たちと庶民派中華でパーティー
女性セブン
NHK次期エースの林田アナ。離婚していたことがわかった
《NHK林田アナの離婚真相》「1泊2980円のネカフェに寝泊まり」元旦那のあだ名は「社長」理想とはかけ離れた夫婦生活「同僚の言葉に涙」
NEWSポストセブン