Xに再投稿され状況が一変
プロデューサーの三野和比古氏はこう話す。
「まず大前提として、私たちはエンターテイメントとしての動画を配信しているだけで、ヘイトや分断を煽ろうとする意図は全くありません」
こねこフィルム企画は、映画やドラマなどの現場で経験を積んだクリエイターが三野氏兄弟のもとに集うかたちで今年6月に立ち上げられたチームで、これまで約30本のショート動画を公開してきた。クスリと笑えるものや、思わず目頭が熱くなるような作品もある。しかし、今回の『痴漢冤罪』のように、大きな波紋を広げたり、批判の声もあがったりする作品は、他にはない。
作品のディレクションを努める三野龍一氏は『近江商人、走る!』『鬼が笑う』などの作品を手掛けてきた映画監督だ。
「『痴漢冤罪』は、9月15日にTikTokとインスタグラムで公開しました。多くの方に見ていただけたようです。TikTokでは公開から現在までに500万回以上回再生されました」
動画の内容についてのコメントも多く寄せられたが、当初はこの動画を題材にコメント主同士が言い争ったり、制作者側を強い言葉で非難するなど、いわゆる“荒れる”状態にはならなかった。
ところが、公開からしばらくして、一部のユーザーがX(旧ツイッター)に動画を転載すると、状況が変わったという。出演者や制作サイドに対する批判、動画の内容を「男性に都合のいいフィクション」などと指弾するコメントが急増したという。そうした反応について、三野龍一氏はこう話す。
「一連の動画は、エンターテイメントとして作っています。作品を見た人の感じ方はそれぞれで、作り手側が作品に込めた思いを言葉で説明するのは本来の姿ではないと思っています。今回の『痴漢冤罪』にしても、同じです。どう受け取るかは、見た人の自由です。ただ、こういう動画を配信したら、どんな反応が返ってくるのか、正直そうしたところに興味はありました」