「暴露本」を読んで変わった見え方
ターザン山本さん(元『週刊プロレス』編集長)も言うとおり、亡くなった猪木さんを美談仕立てで塗り固めるのはちょっと違うと俺は思っている。
数々の名勝負もあったが、「駄作」もあった。リングの中で輝かしい光を放つ一方で、私生活ではスキャンダルやトラブルも絶えなかった。それらすべてを理解し受け止めた上での「信者」になって、初めて見えてくるものがある。
新日本で長くレフェリーを務めたミスター高橋さんが2001年、プロレスの裏側について書いた本を出版した時、多くのプロレスファンが「暴露本」と批判した。
ただ、俺はそう思わなかった。こんなにも見事に、鮮やかに、美しく俺を騙してくれたのかと。むしろ猪木さんに対する尊敬、プロレスに対する愛は深まったと言ってもいい。猪木さんの生み出してきたエンタメの価値、人生哲学の深みは、誰にも崩すことができない。俺はそう信じています。
取材・文/欠端大林(フリーライター)
※週刊ポスト2023年11月10日号