「私が提供した口座に、日本人から入金されるんです。コフィと一緒にショッピングモールの銀行へ行き、窓口で現金を引き出してそのままコフィに手渡す。銀行には何十回と通いました」
検察などの調べでは、アクラにある森川の銀行口座2つや暗号資産を通じて振り込まれた金額は総額約1.1億円。「4億」と報じられたのは、証拠不十分などを理由に立件されなかった分とみられる。森川は「4億もいってない」と主張するが、現に被害者がいる以上、金額の問題ではない。
「所持金は25ドルだけだった」
森川は、ロマンス詐欺の被害者の送金と把握していたのか。それが裁判の争点の一つだった。7月半ばの被告人質問では、森川のスマホの記録から、コフィとLINEでやり取りした英文メッセージが示された。
「日本人女性を騙したのか?」(森川)
「イエス。ガーナ人との偽りの関係さ」(コフィ)
この証拠に基づけば、ロマンス詐欺で日本人女性を騙していた事実を知っていたことになるが、森川は認めない。面会での発言も曖昧だった。
「ガーナ人グループのうち、何人かはそう(ロマンス詐欺犯)なんだろうなと思った。1人は白状した。ロマンス詐欺だと匂わせていましたね」
「不特定多数の人が振り込んできたから、おかしいとは思いました」
不審な送金だと察している様子だが、最後はお茶を濁す。
もう一つの争点は、森川が報酬を得ていたか否かだ。公判では「受け取っていない」と主張したが、10%の手数料が入るはずではなかったか。森川は手紙にこう記した。
〈そんなのは絵に描いた餅で、都合よく手数料は貰えなかった〉