穴水町の倒壊した家屋(2024年1月4日撮影)

穴水町の倒壊した家屋(2024年1月4日撮影)

「70オーバーのオールドマンが潰されているのを見た」

「地震が起こった日は、丸岡先生に『うちで一緒におせちを食べよう』と言われていて、先生の家にいました。家はものすごい揺れました。床や壁にバウンドしながら、立っていられない。先生の家も、クリニックの中もぐちゃぐちゃになりました。

 大きい揺れが終わったあと、先生と外に出ました。そしたら、(窓の外を指さしながら)あっちのほうから『おーい! こっちに来てくれ!』って声が聞こえて、先生と一緒にそっちの人が集まっているほうに行った。そこで、70オーバーのオールドマンが自分の家の屋根から半分、体を出していた。もっと近づいて見てみると、潰されて死んでいたのがわかりました」

 指さす先には、窓越しに崩壊した家屋が見える。当日は、衝撃的な光景だったはずだ。

「でも、その間も大きな揺れがきます。悲しんでいる時間、ありません。私はとてもショッキングで動けなかったけど、みんな『逃げろ!』と叫んでいて、先生と高いところへ逃げました。こんな危ない時も、みんなはとてもスピーディーに落ち着いて行動していました」

 アルチャさんは高台に逃げたあと、丸岡さんとクリニックの近くにあるJA会館の避難所に移動したという。

「最初は、避難所のおばあちゃんたちが作ってくれたおにぎりを食べて、水を飲んでいました。みんな『大丈夫、大丈夫』といって、他の人を元気づけていたのを覚えている。(1月)1日の夜、暗いなかで食べたおにぎりは、スモールなものだったけど、すごく美味しかった。

 私は、そんな日本人のパワフルさに元気をもらいました。みんなメンタルのスイッチが本当に早い。もしドイツでこんなことが起こったら、ドイツ人はしばらくの間、泣いて、悲しんで、3日間はダメになっていると思います。こんな時に、一つのスペースに知らない人と20人くらいで一緒にいるなんて、ドイツ人はできない。

 そこにいたみんなは泣かないし、明るかった。“大丈夫のメンタル”で、みんなで助け合って、食べ物とか水を分け合って、ヘルプフルに動いていた。ドイツは自分が悲しいと泣くし、『自分が、自分が』っていう国だけど、日本はイマージェンシーな時も、“助け合い”のメンタルがあって本当にびっくりしたし、すごいと思った」

 アルチャさんが驚いたのは避難所での住民の対応だけではないという。

「道もぐちゃぐちゃになって、あんなにガタガタしていたのに、次の日くらいにはマジックのように直っていました。ドイツでこんなひどい道を直すのは、1か月はかかると思うよ。日本人の直すスキルには本当に驚いた」

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