1993年、35歳の若さでヴェルディ川崎の監督に就任した当時の松木安太郎氏(Getty Images)

1993年、35歳の若さでヴェルディ川崎の監督に就任した当時の松木安太郎氏(Getty Images)

松木氏の指摘どおりだった上田のポストプレー

 後半48分、日本はMF旗手怜央のコーナーキック(CK)から遠藤がヘディングシュートを決めるも、1対2で敗れた。松木氏は0対1の前半40分の時点でこう言っていた。

松木氏:今日みたいなゲームは、前線の選手もそうだけど、中盤の(ボランチの)守田、遠藤というね、この2人がね、カギ握ってると思いますよ。攻撃においてね。

アナ:松木さん、ビルドアップのところで、もうちょっとスムーズに繋いでいきたいというところがあるんでしょうか。

松木氏:そうですね、それともう1つ、やっぱりゴール前に5番の守田と6番の遠藤が、ゴール前に顔出せるようになると、日本の得点のチャンスが、僕見えてくると思うんでね。ちょっと運動量多くなりますけど、この2人期待ですよね。

 CKからのゴールであり、因果関係はない。ただ、ハーフタイムに松木氏のような指示があれば、日本は変わったのではないか。準々決勝のイラン戦で先制ゴールが生まれる前、松木氏はこんな指摘をしていたから、余計にそう考えてしまう。

【前半23分10秒】
松木氏:9番の上田がね、強いから、ちょっと足元に当ててもいいんじゃないかと思うんだよね。

 4分後、日本はFW上田綺世のポストプレーを起点にチャンスを作り、MF守田英正のゴールが生まれた。

 松木氏は冷静に試合状況を分析し、打開策を提示している。アジア杯では日本がその通りのプレーをすると、好転していた。視聴者も絶叫のイメージだけで判断するのではなく、松木氏の戦術や選手交代の解説にもしっかり耳を傾けたい。

■文/岡野誠:ライター、松木安太郎研究家。NEWSポストセブン掲載の〈検証 松木安太郎氏「いいボールだ!」は本当にいいボールか?〉(2019年2月)が第26回『編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞』デジタル賞を受賞。著書『田原俊彦論 芸能界アイドル戦記1979-2018』(青弓社)では本人へのインタビュー、野村宏伸や木野正人などへの取材、膨大な資料分析を通じて、人気絶頂から事務所独立、苦境、現在までを熱のこもった筆致で描き出した。

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