松木安太郎一覧

【松木安太郎】に関するニュースを集めたページです。

伊東純也は4試合連続ゴールの大活躍。「イナズマ純也」の愛称も定着へ(時事通信フォト)
伊東純也の愛称「イナズマ純也」 名付け親・松木安太郎氏の連呼で一気に定着へ
 2月1日、サッカーのカタールW杯アジア最終予選で日本代表はサウジアラビアを2対0で下し、グループBの2位を死守した。伊東純也が1ゴール、1アシストを挙げたこの試合はテレビ朝日系で放送され、松木安太郎氏と内田篤人氏が解説を務めた。松木氏は自ら考案したニックネーム“イナズマ純也”を連呼し、伊東の活躍を喜んだ。世帯視聴率20.0%(ビデオリサーチ調べ/関東地区)と大台に達したサウジ戦で、松木氏は伊東純也をどんな表現で、何回呼んだのか。そして、その波及効果とは──。松木安太郎研究家でもあるライターの岡野誠氏が分析した。 * * * サウジ戦の後半5分、伊東純也が4試合連続ゴールを決めると、松木氏は雄叫びを上げた。松木氏:ほっほっほっほ! すごいね! イナズマくん、すごいねえ!吉野真治アナ:イナズマのごとく、今度はシュートで突き刺した! 前半から松木氏は伊東が活躍すると「いいね、イナズマ。イナズマ純也!」「イナズマ純也から南野(拓実)と! 完璧だね!」とイナズマを連呼。一体、“イナズマ純也”とは何なのか。 1月27日の中国戦で、何度も“イナズマ純也”と叫ぶ松木氏に疑問を感じたのか、同じ解説の内田氏はこう聞いている。内田氏:“イナズマ純也”は、ちなみに松木さんが考えたんですか?松木氏:いやいや、うん。そうなんだ。 1月23日放送の『サンデーLIVE!!』(テレビ朝日系)で松木氏は伊東とリモート対談し、「ニックネームを考えよう」と提案。伊東は「え? 自分で考えるんですか?」と戸惑いの表情を見せると、松木氏は「いやいや、違いますよ。僕が考えるんですよ」と話し、3つの候補を挙げていった。松木氏:やっぱり、スピード(があるから)。チーター伊東。伊東:そのまんまっすね(笑)。松木氏:ヒョウも速いですからね。髪の毛が今、金髪ですから。ゴールデンパンサー伊東。伊東:はっはっは。長いですね、ちょっと。松木氏:イナズマ純也。伊東:たしかにイナズマという響きは好きですね。松木氏:あ、好きですか。 こうした会話から“イナズマ純也”に決まり、松木氏は「これから使っていきたいと思います」と話していた。その宣言通り、中国戦とサウジ戦で連呼していた。 そこで、サウジ戦で松木氏が日本選手の名前を何回呼んだか数えてみた(カッコ内は呼び方の内訳)。16回:伊東純也(詳細以下)5回:前田大然(前田大然3、彼1、前田1)3回:大迫勇也(大迫選手3)3回:守田英正(守田選手1、13番の選手1、守田1)2回:酒井宏樹(酒井宏樹選手1、19番の酒井1)2回:中山雄太(中山選手2)2回:南野拓実(南野1、南野選手1)2回:田中碧(田中碧2)1回:浅野拓磨(浅野選手1)(※明らかにその選手を指した場合にカウント。後半30分、『この19番のサ……』と名前を言い掛けた瞬間、酒井が得点に繋がるパスを伊東に供給したため、松木氏は『おお、いいボール』と反応。酒井の名前を言い切らなかったので、ノーカウント) この日、松木氏は9選手の名前を口にした。そのうち、伊東が2位以下に圧倒的な差を付け、1位に輝いている。松木氏の“伊東推し”は明らかだった。呼び方の内訳は以下になる。5回:イナズマ純也4回:伊東選手2回:伊東1回:イナズマ 1回:イナズマくん 1回:伊東純也選手1回:伊東純也1回:伊東純也、14番 松木氏は頻繁に「~~選手」という呼び方をする。この日は36回中14回と38.9%の確率で「名前+選手」だった。しかし、伊東純也には最もノーマルな「伊東選手」を「イナズマ純也」が上回った。「伊東」と「イナズマ」を比較しても伊東9回、イナズマ7回と接戦になっている。ちなみに、サウジの選手には「15番」「8番」「代わった選手」と背番号や固有名詞を使わずに呼んでおり、一度も名前を使っていない。それどころか、前半16分にアルマルキが伊東純也に倒されると、松木氏はこう話した。吉野アナ:かなり痛がっています。8番のアルマルキ。松木氏:ただ、サウジアラビアの選手はいつも痛がるからね。どの程度かってのはわからないよね。スポーツ紙4紙が見出しに“イナズマ(稲妻)” Yahoo!ニュースで「イナズマ純也」と検索すると、2月1日の試合前までは5本の記事しかなかったが、試合開始から2月2日15時現在までの間に19本も量産されている。同日発売のスポーツ紙では4紙が見出しに“イナズマ(稲妻)”を使った。日刊スポーツ1面〈W杯王手弾 伊東 イナズマ純也 速さで敵置き去り 南野弾アシスト〉スポーツニッポン裏1面〈4戦連発 稲妻 IJで W杯出場王手〉サンケイスポーツ7面〈IJ イナズマ純也 伊東 4戦連発!!〉デイリースポーツ7面〈伊東 4戦連発!! 「思い切って打った」イナズマミドルさく裂!!〉 リードや原稿内に書かれた“イナズマ”系表現の回数と内訳は以下になる。6回:日刊スポーツ(イナズマ純也4、金色のイナズマさん1、稲妻のようなスピード1)2回:スポーツニッポン(金色の稲妻、イナズマ純也)1回:サンケイスポーツ(イナズマ純也)1回:デイリースポーツ(稲妻)1回:日刊ゲンダイ(愛称の〈イナズマ〉のような)0回:スポーツ報知0回:東京中日スポーツ0回:夕刊フジ0回:東京スポーツ“イナズマ”を使用しなかった新聞を見ると、見出しでスポーツ報知は『金狼弾』、夕刊フジは『金色の香車』、原稿で東京中日スポーツは『金髪のスピードスター』と綴っている。独自色の強い東スポは1面で〈南野 W杯王手弾 バルサ獲得へ動く〉と報じ、他紙と比べて伊東の扱いは小さかった。ちなみに、松木氏が当初候補に挙げた「ゴールデンパンサー伊東」はどこも使用していない。 世帯視聴率20%の番組で、ニックネームを連呼する効果は大きい。ツイッターでもトレンド入りするなど、松木氏の名付けた「イナズマ純也」はサウジ戦で一気に広まった。気の早い話をすれば、このままW杯出場を決め、本大会でも“イナズマ純也”が活躍すれば、流行語大賞の可能性も出てくるだろう。もし受賞したら伊東純也だけでなく、名付け親の松木安太郎氏もぜひ授賞式に呼んでほしい。■文/岡野誠:ライター、松木安太郎研究家、生島ヒロシ研究家。NEWSポストセブン掲載の〈検証 松木安太郎氏「いいボールだ!」は本当にいいボールか?〉(2019年2月)が第26回『編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞』デジタル賞を受賞。著書『田原俊彦論 芸能界アイドル戦記1979-2018』(青弓社)では本人へのインタビュー、野村宏伸など関係者への取材などを通じて、人気絶頂から事務所独立、苦境、現在の復活まで熱のこもった筆致で描き出した。
2022.02.02 16:00
NEWSポストセブン
W杯アジア最終予選、オーストラリア戦に勝利して喜ぶ日本イレブン(時事通信フォト)
「そんなの誰が言ったの?」 豪州戦でも絶好調だった“松木安太郎劇場”
 過去にこだわるものは未来を失う――。イギリスの第61代首相であるウィンストン・チャーチル氏は生前、こう述べていた。10月12日、サッカーのカタールW杯アジア最終予選で崖っぷちに追い込まれていた日本代表がオーストラリア代表を2対1で下した。その試合の後半アディショナルタイム、中継のテレビ朝日で解説をしていた松木安太郎氏の発した言葉に、私はチャーチルの名言を思い出さずにはいられなかった。寺川アナ:松木さん。「3戦目まで2敗したチームがワールドカップに出たことがない」とか、「3連勝したチームは確実に100%ワールドカップに出場してる」とか、さまざまなジンクスありますけれども。松木氏:そんなの誰が言ったの?寺川アナ:……これはもう、パーセンテージとして出ているものではありますが。松木氏:あーーそうなの! いいよ、そんなのは。寺川アナ:日本はこれまでそういったことを覆してきました。松木氏:いやぁ! もうだから、今日のゲームにはもう、日本はね、強いよ! 今回の最終予選の過去3試合1勝2敗、1得点という成績を見れば、日本は弱かったかもしれない。しかし、それは過去のこと。豪州戦に目を向ければ「日本はね、強いよ!」なのである。寺川俊平アナはこう続けていた。寺川アナ:(日本は)前回大会でも「初戦に敗れた後、W杯に出ることは100%できない」というジンクスを覆しました。 あくまでこの結論を言いたいがために、敢えて最初に良くないジンクスを持ち出したのだった。しかし、松木氏の気持ちは既にグラウンドに向いていた。松木氏:(ボールを奪おうとする選手に)よし、取れ! 松木氏にとっては10秒前のことさえ、過去なのだ。試合中、松木氏の口からミスや失点を咎める言葉を聞いた記憶がない。この日も、後半25分にフリーキックで追い付かれた直後は「バーか……」と落胆を隠せなかったが、試合が再開するとすぐ「今ね、内田さん(※この日、一緒に解説を務めた内田篤人)言ったようにね、時間はもうたっぷりあるんだよ」「そんな悪くなってないから、これは良いと思います。大丈夫、大丈夫」「振り出しになったっていうだけだからね、おお」と気持ちを切り替えて、前を向いた。 松木劇場はここから、さらにヒートアップしていく。 後半30分、日本がチャンスを迎える。松木氏は、伊東純也がシュートを放つと「おお!」、遠藤航がこぼれ球をボレーすると「よーーし!!」、キーパーが弾いたボールに田中碧が足を振り抜くと「おお!!」とまるで自分が蹴られたボールのように反応した。 33分には相手のセンタリングに吐息のような「おい!」(この日11回目)を放ち、37分には「まだ時間はあるからね。チャンスはね、やっぱり作れますよ」と自分に言い聞かせるように話した。 その3分後、本当にチャンスがやってくる。吉田麻也からのロングボールを途中出場の浅野拓磨が見事なトラップでペナルティエリア内にボールを持ち込む。すると、松木氏が「さあ、打て!」と絶叫。まるでその言葉が聞こえたかのように、浅野が左足を振り抜くと、ボールはゴールへと吸い込まれていった。松木氏は寺川アナより先に「入った!!入った!!」と実況し、「はっはっ! よしよし、よしよし!」と喜んだ。VTRを見た寺川アナは「最後の跳ね返ったところ、相手のベヒッチに当たってゴールネットが揺れたというような形でした」と丁寧に説明した後、こう言った。アナ:ただ形はどうあれ、松木さん。この時間帯に勝ち越しました。松木氏:形なんかどうでもいいよ!!中田浩二氏:はっは。松木氏:ホントに。だってあれは狙ったシュートだからさ!  結果が全ての最終予選では「形なんかどうでもいいよ!!」なのだ。後半44分には相手のパスがそのまますり抜けてゴールキックになると、「いいんだ、いいんだ、これでいいんだ、ううん!!」と納得。「とにかく面倒くさいボール(※曖昧なパスはしないという意味か)は辞めるってことだね。ホント、はっきりしたボールだね。蹴り出すのか」と注意点を挙げた。そして、寺川アナより先に「なに? 4分あるんだ」と怪訝そうにアディショナルタイムに反応した。 その1分後、前述の「そんなの誰が言ったの?」という言葉が飛び出たのだ。つまり、アディショナルタイムが存在しなければ、松木氏のジンクスを蹴散らす名言は生まれなかったのである。試合終了のホイッスルが鳴ると、松木氏はこう叫んだ。アナ:松木さん、勝ちました。松木氏:強いよ! 良かったよ!アナ:(吹き出すように)良かったですね(笑)。中田氏:良かったですね。松木氏:みんな良かった! 勝った日本の選手同士が握手を交わし、ベンチ近くに戻って円陣を組んだ。選手に言葉を掛ける森保一監督のアップが映し出された時、松木氏はまるで森保監督にセリフを当てるかのようにこう言った。「残り6試合でしょ? 6試合。6試合頑張りゃいいんだよ、こうやって! なあ!」 オーストラリアに勝ったものの、日本の劣勢はまだ続く。そんな時こそ、ジンクスや数字のことなんか考えずに、「6試合頑張りゃいい」。やはり、日本には松木安太郎氏が必要なのである。■文/岡野誠:ライター、松木安太郎研究家。NEWSポストセブン掲載の〈検証 松木安太郎氏「いいボールだ!」は本当にいいボールか?〉(2019年2月)が第26回『編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞』デジタル賞を受賞。著書『田原俊彦論 芸能界アイドル戦記1979-2018』(青弓社)では本人へのインタビュー、野村宏伸など関係者への取材などを通じて、人気絶頂から事務所独立、苦境、現在の復活まで熱のこもった筆致で描き出した。
2021.10.13 16:00
NEWSポストセブン
松木安太郎氏が解説する豪州戦 「おい!」と叫ぶ回数が勝敗を左右する?
松木安太郎氏が解説する豪州戦 「おい!」と叫ぶ回数が勝敗を左右する?
 解説・松木安太郎氏が叫ぶ「おい!」の回数が減れば、日本のワールドカップ出場が近付くというのは本当か? サッカー日本代表が10月12日、カタールW杯アジア最終予選でオーストラリア代表と戦う。最終予選3試合を終えて、日本は1勝2敗でグループB組3位。2位以内ならW杯出場決定、3位で終わればアジア、大陸間のプレーオフに回ることになる。地上波ではテレビ朝日が生中継し、解説には松木安太郎氏、中田浩二氏、内田篤人氏、実況は寺川俊平アナウンサーが務める。“絶対に負けられない試合”でどんな放送が展開されるのか。松木安太郎研究家でライターの岡野誠氏が話す。「いつも以上に、松木さんが『おい!』と叫ぶシーンが増えると思います。負けられない一戦になると、基本的に『おい!』の頻度が上がりますからね。たとえば、2019年のアジア杯で予選リーグ2試合目のオマーン戦での『おい!』は4回でしたが、決勝トーナメント1回戦のサウジアラビア戦では『おい!』が33回も全国に轟いています(※いずれも『おいおい!』など連続したら一塊と考えず、1つずつ数えた場合。以下同)。ただ、ピンチの数が少なかったり、僅差にならなかったりすれば、『おい!』は少ない。3対0で勝った準決勝のイラン戦は11回、早めに先制されて1対3で敗れた決勝のカタール戦ではわずか5回しか叫んでいませんでした」(以下同) この話を真面目に受け取るとすれば、日本代表はいかに松木氏に「おい!」と叫ばせない試合運びをできるかに懸かっていると言えるだろう。ただし、前回の中継である9月2日のオマーン戦では0対0が続き、後半43分に先制ゴールを許すという展開だったにもかかわらず、いつもと比べて「おい!」の数が少なかったという。「前半8回、後半6回の計14回で、そのうち13回は相手の攻撃場面でした。『おい!』を連発するシーンはオマーンがドリブルでエリア内に入ってきた前半12分、日本が左サイドでかわされた後半28分の2回だけでした」「おい!」の数が示すように、前回のオマーン戦の中継ではいつもと比べて松木氏が静かだったという。「有観客だったとはいえ人数も少なかったですし、サポーターもコロナ禍以前のような歓声は上げられなかった。ある程度は周りの雰囲気に乗る面もあるでしょうから、スタジアムが静かだったことの影響もあるでしょう。また、今までは松木さんと同じようにテンションの高い中山雅史さんとのダブル解説でしたが、オマーン戦でコンビを組んだ内田篤人さんは冷静でした。誰とコンビを組むかで変わってくる面も少しはあるような気がします」 松木氏は、代表戦では普段サッカーを見ない視聴者にもわかりやすく、興味を持ってもらえるような解説を心掛けているという。「フランスW杯予選の頃の放送を聞くと、非常に落ち着いていらっしゃいます。今は敢えて自分がピエロになって、試合を盛り上げてくれる本当に素晴らしい方です。今回のオーストラリア戦では、どんな名言が飛び出すかにも注目したいです」 日本が勝って、松木氏が「よーし!よしよし!」と喜ぶ姿を見たい。
2021.10.12 16:00
NEWSポストセブン
セルジオ越後氏と松木安太郎氏のコンビ解説を堪能(時事通信フォト)
YouTubeで実現 W杯最終予選「松木&セルジオ解説」コンビ復活で大爆走
 放映権料の高騰も影響してか、今回のサッカーW杯アジア最終予選のアウェイ戦は地上波での放送がなく、有料放送のDAZNで配信されるだけになっている。つまり、日本代表戦で「おい!」「いいボールだ!」で視聴者を釘付けにし、「ふざけたロスタイムですね」「なんなんすか、これ」などの名言で心を鷲掴みにしてきた松木安太郎氏の解説が聞けない。アウェイでこそ本領を発揮する彼の絶叫が日本に響き渡らないことに、一抹の寂しさを感じる人々もいるだろう。 そんな中、松木氏は1対0と辛勝した9月7日の中国戦では、YouTubeのセルジオ越後チャンネル『蹴球越後屋』にゲスト出演。DAZNの映像を見ながら(※放映権の関係上YouTubeには映らず)解説した。かつて地上波で幾度となくコンビを組んだ2人は、一風変わった放送をしていたという。再び2人がYouTubeで解説するサウジアラビア戦を前に、松木安太郎研究家でライターの岡野誠氏が、中国戦の“松木&セルジオ解説”をリポートする。(※試合の時間表記は『蹴球越後屋』に置かれた時計を基準にする。2人発言については、「まあ」「ちょっと」「これ」「もう」などの言葉、同じ内容を連続で反復している場合は読みづらさを避けるために省略している箇所あり) * * *「ゴールちょっとズラしたいよね。ほんのちょっとでいいんだ」(2013年11月16日・オランダ戦) かつて松木氏は本田圭佑のシュートがバーに当たるのを見て、こう呟いていた。だが、中国戦で前半22分に日本が惜しい攻撃をすると、これを上回る発言をセルジオ氏がし始めた。セルジオ氏:今、柔道だったら技ありで。松木氏:0.5点? セルジオさん、でもあれですよ。僕よりも10何年も長くサッカーやってんだから、柔道の…ルールとは違う…。セルジオ氏:もしあればね。松木氏:あればね。まさか柔道が出てくるとは思わなかったな。 両チームのポゼッションデータがDAZNの画面に映った直後の前半25分には、こんな会話が生まれる。セルジオ氏:よく「ボール支配した。70%。1-0で負けた」。意味ないよな。松木氏:今、ポゼッションの多いほうが負けてるシーンって多いから、ポゼッションのデータだけ追ってもしょうがないよね。セルジオ氏:ボール触る回数で勝負決まったら面白いかもしれない。松木氏:それはもう、柔道系でしょう。ねえ。柔道でしょう。ポストとバーに当たったら?セルジオ氏:技あり。松木氏:技あり。セルジオ氏:今日は一本勝ちしたいなあ。松木氏:一本勝ちしたいねえ。 この柔道話に松木氏のトーク力の高さが窺える。最初は「まさか柔道が出てくるとは思わなかったな」とセルジオ氏の発想に驚きを隠せなかったが、2回目には「ポストとバーに当たったら?」と自ら振っている。決して人のギャグを否定することなく、相手を乗せて場を盛り上げているのだ。 前半は柔道やゴルフでサッカーを例えていたセルジオ氏だが、後半になると中国の監督の話題を頻繁に出し始める。前半のアディショナルタイムには既にこう話していた。セルジオ氏:中国、何が怖いかっていうのは、後半交代してくるのよ、監督を。松木氏:後半ね、後半ってことね。このゲームの後半じゃないでしょ? セルジオ氏:それが一番怖い。松木氏:この全部(W杯最終予選)の後半ってことですからね、皆さんね。 後半開始前、セルジオ氏は「中国の監督の顔と名前覚えといてください。これ最後だから」と試合後の更迭を予想。5分に李鉄監督が映ると、「ほら、よく見て。今日最後だから」と再び言及した。そして、ピッチから選手に声を掛ける指揮官に対し、こう言った。セルジオ氏:(選手は)誰も聞いてない(と言って松木氏の方を向く)。ひとりしゃべり。聞いてない感じしない?松木氏:全然聞いてないよね。か、通じてないか。でも、ホントにあるらしいですからね、中国のチームね。いろんな所から来ると言葉が若干通じないで、その土地柄の言葉がね、きつくてね。 松木氏はセルジオ氏の発言に同意しつつも、違った見方も提示して李鉄監督をフォローした。中国の国土の広さを考慮したのだろう。だが18分、松木氏はセルジオ氏に対し、やや呆れ気味の反応を示す。松木氏:今メンバー交代してさ、なんか困っちゃってる感じだね、中国。どうやってやったらいいのって。今、代わってる選手たちは何とかしようと思ってんだけど。セルジオ氏:最後の采配だったよ、監督の。松木氏:好きですね、それ。最後の采配。「今日最後だから」「最後の采配」と繰り返すセルジオ氏に業を煮やした様子が窺えた。松木氏は一度突き放した上で、20分にはセルジオ氏を考慮してか、同じ話題で視点を変えた。松木氏:この監督、髪の毛をフッフッって、最初からずっとやってるよね。あんな気になるなら、切っちゃえばいいのにね(笑)。ホントに。気になるんだろうね(笑)。楽しんだろうね、きっと。暇な時あれやるんだ。セルジオ氏:こんなに監督が注目になった試合もないね。松木氏:ないね(笑)。でも(画面に)結構映すでしょ。セルジオ氏:映す。最後だから。松木氏:(小声で)ホントに(苦笑)。 同じことばかりを繰り返していたら、視聴者が飽きてしまう。それでも、相方の発言をたしなめてばかりいたら、コンビとして上手く回らない。松木氏は機転を利かせ、別の角度から監督を評したのだ。それでも後半22分、セルジオ氏は執拗に言及してきた。松木氏:(中国の)途中交代してる選手、結構いいよね。セルジオ氏:だから、監督が今日最後なの。松木氏:ははっ、そうなの!(笑)。なんで(最初から)使わないのかと思うけど。 松木氏が呆れていることに気付いたのか、後半26分、27分と連続してセルジオ氏から予想だにしない発言が飛び出す。松木氏:中国の選手はディフェンスに入る時、手使うね。ほら、必ずなんか手使うね。セルジオ氏:人口多いからさ、そういう習慣が付いてんだよ。松木氏:はっはっはっ、ちょっと待ってください(笑)。セルジオ氏:交差点行ったらさ、信号赤い時に、だんだんだんだん人が増えてきてさ、自分の場所取らなかったら、ちょっと困るからさ。松木氏:はっはっ……ちょっと投げやりなコメントになってきました。これでも、もう一点取らないと、ちょっと嫌ですね。流れ的には。松木氏:(中国が守備の時)手使ってない?セルジオ氏:人口多いから。 14億人を超える中国の人口に話題を変えたセルジオ氏だが、この後も中国の李鉄監督に興味を持っていかれた。後半34分にはこう言った。セルジオ氏:俺、ちょっと心配になってきた。中国の監督、映らなくなったから。松木氏:帰っちゃったのかなあ。セルジオ氏:帰られたかなあ。ホテルの荷物用意しに行ったとかさ。松木氏:相変わらずフッってやってっかな。フーッって。突然、中国の監督になりきる松木安太郎氏 深夜の放送でこのまま「中国監督は今日が最後」の話題を続ければ、視聴者が眠ってしまうと松木氏は本能的に知っていたのかもしれない。「髪の毛フーフー」に続いて、新しい視点で捉える必要がある。35分、李鉄監督が映ると、松木氏はまさかの言動に出る。松木氏:あ、映った。映った、映った。セルジオ氏:監督変わる?松木氏:映った、映った。「(突然、中国の監督になりきってセリフを言い始める)おい、いいか、おまえ。今度俺がいなくなったら、おまえ頼むぞ。あそこはこうしなきゃいけないんだ」セルジオ氏:次の監督が出たかなと思った。松木氏:今、フッってやってなかったね。 セルジオ氏の更迭話を受けた上で、中国の監督としてコーチに話す振りを始めたのだ。37分、再び松木氏はなりきった。松木氏:「(選手に向かって)いいか、おまえ、ジャンプしてやるんだぞ。ジャンプするんだ、ジャンプ、いっぱいジャンプするんだ、いっぱいジャンプ。2回はジャンプしろ」セルジオ氏:役割多かったね、今頼んでたの。今、監督が与えた役割多かったね。松木氏:多かった、多かった(笑)。 松木氏の意外な言動によって、ようやくセルジオ氏は「最後の采配」から離れ、「今、監督が与えた役割多かったね」と話に乗ってきた。「いっぱいジャンプするんだ」の意味はよくわからないが、松木氏の“なりきり”が会話を進展させた。自分のペースに持ち込んだ松木氏は43分、ついにセルジオ氏を追随させた。松木氏:(中国監督が髪の毛をフッと吹かせるのを見て)あ~ほらほらほらほら、やった、やった! 今度あれだね、中国とやる時にまたこういう機会があったら、何回やるかっていうのを、クイズにしたら面白いかもしれないね。今なんか3回くらいやったよ、一気に。(スタッフに)ねっ?セルジオ氏:あれ、面白い習慣だね。 セルジオ氏は「最後の采配」と呟かなくなり、松木氏は完全に空間を支配した。視聴者が気になる中国監督の髪の毛を吹かせる仕草に言及してペースを掴み、まさかの“中国監督なりきり作戦”でセルジオ氏からボールを奪ったのだ。アディショナルタイムの48分には、セルジオ氏が自ら指摘し始めた。セルジオ氏:またフッってやってるよ。松木氏:やったね、あ、またやったよ。さあ何回やったでしょう。 試合終了後、セルジオ氏は試合をこう総括した。セルジオ氏:中国の監督はチームを動かすより、髪の毛ばっかり動かしてた。松木氏:動かしてた。しかも、フーフーフーフー言いながらね。フーフーフーフー言いながら。セルジオ氏:疲れただろうね。松木氏:フーフー言っちゃってたゲーム中、って感じだね。セルジオ氏:途中で指示しなくなったね、彼ね。 中国監督に対して「最後の采配」とばかり言っていたセルジオ氏を冷たくあしらうのではなく、同じ監督の話題で続けながらも「髪の毛フーフー」で徐々に会話の主導権を握り、最終的にはセルジオ氏に「髪の毛ばっかり動かしてた」と言わせた松木氏。 視聴者の気持ちを第一に考えながら、共演者を否定せずに、その枠内で新たな話題を見つけ、場を盛り上げていく――。なぜ、人々が松木安太郎氏の話術に魅了されるか、よく理解できた一戦となった。■文/岡野誠:ライター。松木安太郎研究家。著書『田原俊彦論 芸能界アイドル戦記1979-2018』(青弓社)では本人へのインタビュー、野村宏伸など関係者への取材などを通じて、人気絶頂から事務所独立、苦境、現在の復活まで熱のこもった筆致で描き出した。田原の1982年、1988年の全出演番組(計534本)の視聴率やテレビ欄の文言、番組内容なども巻末資料として掲載。
2021.10.07 19:00
NEWSポストセブン
古橋亨梧のクロスに松木安太郎氏は「いいボールだ!」と叫んだが…(時事通信フォト)
オマーン戦 解説・松木安太郎氏の「いいボールだ!」の精度も低かった
 9月2日、サッカーW杯最終予選で日本はオマーンとホームで対戦し、0対1で敗れた。地上波ではテレビ朝日で中継され、松木安太郎氏と内田篤人氏が解説を務めた。この試合で、男子サッカーの日本代表戦を地上波では今年初めて解説した松木氏に、ある変化が見られたという。ライターで松木安太郎研究家の岡野誠氏が、松木氏の口癖である「いいボールだ!」発言に着目し、その“精度”を検証した。 * * * かつて松木氏が「いいボールだ!」と叫ぶと、視聴者は「あまりいいボールじゃないだろ!」とツッコミを入れていた。しかし、日本が準優勝した2019年のアジア杯では全7試合で17回「いいボールだ!」と発し、9回は本当に「いいボール」だった。「いいボールではない」のは3回。「どちらか判断しかねるボール」が5回あった。つまり、9勝3敗5分で勝率7割5分と高確率で本当に「いいボール」だった。 このように「いいボール」を勝利、「いいボールではない」を敗戦、「どちらか判断しかねるボール」を引き分けと表し、直近2年の男子サッカー日本代表戦における松木安太郎氏の「いいボール」を判定してみよう(※日付は全て日本時間。蹴った直後の「いいボール」に限る。手元の集計による)。2019年10月10日 W杯2次予選 モンゴル戦 前半10分・伊東純也のスルーパス → ○ 中島翔哉に通る2019年10月15日 W杯2次予選 タジキスタン戦前半47分・中島翔哉のコーナーキック(CK) → × 相手キーパー(GK)パンチング後半5分・中盤からゴール前に数人でパス回し → ○ 速かったため、誰に「いいボールだ」と言ったのか不明だが、本当に「いいボール」の連続だった2020年1月10日 AFC U-23選手権 サウジアラビア戦前半11分・橋岡大樹のクロス → △ 惜しくも合わず2020年1月15日 AFC U-23選手権 カタール戦前半13分・田中駿汰のスルーパス → ○ 旗手怜央に通ってシュートもオフサイド判定前半21分・相馬勇紀のクロス → ○ 杉岡大暉がボレーシュートも枠2021年3月29日 U-24代表アルゼンチン戦(BS朝日で解説)前半9分・久保建英のスルーパス → ○ 食野亮太郎に通る後半20分・久保建英のフリーキック(FK)→ △ 惜しくも合わず 直近2年で松木氏の「いいボールだ!」は5勝1敗2分で勝率8割3分3厘。もはや、松木氏が「いいボールだ!」と叫び、視聴者が「全然いいボールじゃないだろ!」と突っ込む時代は終わったと思われていた。 だが、今回のオマーン戦で“異変”が起こった。松木氏が「いいボールだ!」と叫んだ時の状況と結果を検証してみよう。前半30分:「お~~いいボール!」 酒井宏樹のクロス → △ 大迫勇也が競るも、相手DFにクリアされる前半37分 :「いいボールだね!」 鎌田大地のCK → × 相手ディフェンス(DF)が難なくクリア。全然いいボールではなかった後半9分:「よーし! よし! いいボールだ!」 酒井宏樹のクロス → ○ 長友がヘディングシュートも枠外後半12分:「うわ~、いいボールだ!」 古橋亨梧のクロス → × 相手GKパンチング後半40分 :「おー、いいボール!」 久保建英のFK → × 相手GKキャッチ 松木氏はオマーン戦で「いいボール」と5回叫び、1勝3敗1分の勝率2割5分だった。近年、松木氏の「いいボールだ!」が、本当にいいボールになっていたにもかかわらず、なぜオマーン戦では精度が下がったのか。 0対0の膠着状態が続く後半12分、古橋が左サイドでDFをかわしてクロスを上げるシーンを振り返ってみよう。松木氏:わ~、いいボールだ!実況:いいボールだ! キーパーパンチング。いや~松木さん、古橋いい形を見せました!松木氏:いや、いい! いいボールだ! 吉野真治アナも松木氏に釣られるように「いいボールだ!」と言ったが、結果に合わせて「いい形を見せました」と言い方を変え、切り返しの連続からクロスを上げたことに言及したと思われる。だが、松木氏は誰も合わせられなかったボールに対して、もう一度「いいボールだ!」と叫んだ。キーパーさえいなければ味方に合ったボールではあるが、それは「キーパーがいなければ入っていた」と同じことである。 松木氏はさほど「いいボール」に見えなくても「いいボールだ!」と叫ぶことで、日本代表と自分を盛り上げようとしていたのではないか。つまり、ホームでのW杯最終予選という『絶対に負けられない戦い』で、日本が手こずる焦りから不用意な「いいボールだ!」が復活してしまったと考えられるのだ。■文/岡野誠:ライター。NEWSポストセブン掲載の〈検証 松木安太郎氏「いいボールだ!」は本当にいいボールか?〉(2019年2月)が第26回『編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞』デジタル賞を受賞。著書『田原俊彦論 芸能界アイドル戦記1979-2018』(青弓社)では本人へのインタビュー、野村宏伸など関係者への取材などを通じて、人気絶頂から事務所独立、苦境、現在の復活まで熱のこもった筆致で描き出した。
2021.09.03 07:00
NEWSポストセブン
東京五輪で松木安太郎氏の解説を聞く機会はあるか?(時事通信フォト)
五輪で絶叫が響き渡るか?解説起用が熱望される松木安太郎氏の存在感
 やはり、日本代表にはあの男が必要ではないか──。東京五輪で13大会ぶりのメダルを目指す男子サッカーはグループステージで初戦の南アフリカ、2戦目のメキシコを撃破して2連勝。準々決勝進出に大きく前進した。 テレビ中継は第1戦がNHKで森岡隆三氏、第2戦はテレビ朝日で中田浩二氏が解説を務めた。W杯予選などでサッカー日本代表戦の解説を長年担当してきた松木安太郎氏の出番はまだない。五輪ではNHKと日本民間放送連盟で構成する『ジャパンコンソーシアム』が国際オリンピック委員会(IOC)に放送権料を払っているため、各局の共同制作となっている。そのため、メキシコ戦の中継局はテレビ朝日だったが、フジテレビの西岡孝洋アナが実況を担当していた。 ネット上では松木氏の“絶叫型解説”に賛否両論あるが、一緒に盛り上がりたいと考える視聴者からの起用を熱望する声も絶えない。 どんな解説者を好むかは人それぞれだ。2戦目の解説を務めた中田氏は得点シーンでも叫ぶことなく、試合中も冷静に言葉を並べ、感嘆詞や擬音は特に発していなかった。静かな中継を見たい人にとっては望ましい放送だった。松木氏なら、日本が点を取れば『よーし、よしよし!』と“よし”を連発していただろう。初戦の森岡氏は『おっと!』など感嘆詞がかなり飛び出ており、興奮の証拠として『どう入っていくか、どう入っていくか』のように2度同じ言葉を繰り返すこともあった。ただ、落ち着いた声なので、松木氏の『PK!PK!』と違って視聴者もあまり気にならなかったかもしれない。 今回、松木氏の出番が未だにないことで、逆に唯一無二の存在が浮かび上がっている。松木氏はいつも地上波の代表戦では、老若男女にわかるように、敢えて平易な言葉で語っている。初戦の森岡氏は『リトリート』『インナーラップ』と専門用語を使っていた。普段サッカーに興味がなくても、オリンピックを見る人は沢山いる。意味を理解できない視聴者もいたはずだ。松木氏なら『リトリート』は『みんなで下がって守る』、『インナーラップ』は『空いた場所に後ろからダァーと走り込む』と説明したかもしれない。 かつてオフサイドを『急がば回れ』と表現したように、誰にでもわかるように説明する能力は日本のサッカー解説者でナンバーワンだろう。 東京五輪には24歳以下の選手が出場している。現在、地上波でJリーグ中継はほとんどなく、海外リーグの選手たちもスポーツニュースで少し登場する程度。一般的には、選手の名前はあまり浸透していない可能性もある。南アフリカ戦、メキシコ戦ともアナウンサーは主に名前だけを言っていた。 ただ選手名を呼ぶだけでは、視聴者はすぐには覚えられない。松木氏はそんな気持ちを考慮して、いつも『7番の久保選手』などと背番号も加えている。そのほうが頭に残るからだ。解説のみならず、アナウンサーの役割まで担っているのだ。 初戦の南アフリカ戦では審判が日本に不利な判定をしているように見え、森岡氏もヒートアップするほどだった。もし松木氏が解説をしていたら、どんな言葉を発していたのだろうか。 仮に南アフリカがファールを取られ、VTRで明らかに日本のファールと見えた場合を考えてみよう。おそらく松木氏なら『10回くらい日本に不利な判定されてますからね、今のは相手のファールでいいでしょ』とぶっきらぼうに突き放したのではないか。 日本の男子サッカーは28日のフランス戦を含め、最大残り4試合ある。五輪ではNHKと民放各局が共同制作しているため、テレビ朝日の中継でなくても松木氏の解説を聞ける可能性はある。「やった、やった!」と松木氏の絶叫が日本中に響き渡る日は訪れるか。■文/岡野誠:ライター、松木安太郎研究家。NEWSポストセブン掲載の〈検証 松木安太郎氏「いいボールだ!」は本当にいいボールか?〉(2019年2月)が第26回『編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞』デジタル賞を受賞。著書『田原俊彦論 芸能界アイドル戦記』(青弓社)では1998年フランスW杯直前にメンバー落ちした三浦知良の帰国後、親友の田原がどう接したかも記している。
2021.07.26 16:00
NEWSポストセブン
W杯フランス大会出場の夢実らず、帰国後記者会見した三浦知良(左)と北沢豪(時事通信フォト)
あれから23年、「衝撃の落選」がなければカズはもう引退していたか?
「衝撃の落選」から23年が経った──。1998年6月2日、フランスW杯を直前に控えたサッカー日本代表の岡田武史監督(当時)は、合宿地のスイス・ニヨンで「外れるのはカズ、三浦カズです」と三浦知良のメンバー漏れを発表した(同時に北沢豪、市川大祐も落選)。強ばった表情が事の重大さを表していた。 カズは長年、日本のエースとして君臨してきた。1992年のアジアカップでは初優勝の立役者としてMVPに選ばれ、1993年に開幕したJリーグでも初代MVPに輝いた。同年のアメリカW杯最終予選では4点を決め、大会得点王に。勝てば出場の決まる最終戦のイラク戦でも先制ゴールを挙げる。だが、ロスタイムに追いつかれ、W杯出場は果たせなかった。まさかの幕切れは“ドーハの悲劇”と呼ばれた。 雪辱を期した1997年のフランスW杯最終予選、カズは9月7日の初戦ウズベキスタン戦で4ゴールを挙げる大活躍を見せる。しかし、3戦目のホームの韓国戦で尾てい骨を痛め、その後も強行出場したことで、状態は悪化。ゴールから遠ざかり、チームは勝てない。30歳の“ベテラン”カズはバッシングの対象となった。 同年9月に開設されたカズのホームページの掲示板には「引退しろ」「点の取れないFWはいらない」「もうお前さんの時代やない」などの書き込みが相次いだ。10月、管理人が削除した悪質な誹謗中傷は全体の3割にも及んだという(1997年12月22日放送のNHK総合『W杯へ 試練の71日間 ~カズが語るアジア最終予選~』参照)。 10月26日、ホームのUAE戦で引き分けると、試合終了後に国立競技場の玄関を出たカズにサポーターが「もうやめちまえ!」「何やってんだ!」と罵声を浴びせ、愛車にモノを投げ付けた。日本代表のエースを取り巻く空気は異様だった。スポーツ紙にも、ネガティブな見出しが並んだ。〈カズ 無視され激怒 PK練習志願もGK陣拒否〉(10月10日 日刊スポーツ 1面)〈カズ監禁 日本ドロー国立暴動 5000人ファン切れた!! イレブンと競技場内に30分〉(10月27日 日刊スポーツ 1面)〈ゴン中山 決戦スタメンだ ドゥンガ絶賛「カズは衰えた」〉(11月10日 東京中日スポーツ 1面)2017年3月以来、4年間ゴールを決めていない 11月16日のイランとの第3代表決定戦では、先発出場するも後半18分に交代でベンチに下げられ、代わりに入った22歳の城彰二が同点ゴールを決め、日本は岡野雅行のVゴールでフランス行きを決めた。いわゆる“ジョホールバルの歓喜”だ。一方でカズには“限界説”が唱えられ、世代交代論が巻き起こるようになる。当時、一連の報道について聞かれたカズは、こう話している。〈マスコミはそういうふうに煽っているけど、俺は自分を信じている。他人がどうこうではなくて、自分自身がやってきたことに誇りを持って戦えばいいわけだから。別にマスコミと戦っているわけじゃない、自分と戦っているわけだから。自分に負けたら負け、勝ったら勝ち、ここまでやってきたことは誰にも変えられない〉(1998年5月号『ストライカー』) 強靭な精神力でバッシングに立ち向かったが、流れは変えられなかった。1998年になると、岡田監督は城をフォワードの柱として起用。5月のキリンカップでは、スタメンはおろか、出場機会すらなかった。そして6月2日、25名から22名に最終メンバーを絞る際、「城をFWの柱と考えているので、残りのFWをどうするかと考えると、使うチャンスがない」とカズの落選を決めた。すると、バッシングの矛先は岡田監督に向き、日本が予選3戦全敗で終えると、「カズがいれば……」と今まで散々批判されていたカズを惜しむ声が上がった。 あれから23年経っても、54歳のカズはJ1横浜FCで現役生活を続けている。もしフランスW杯に出場していれば、既に現役を引退していたのではないかという推論は頻繁に囁かれる。しかし、2019年2月17日の NHK『サンデースポーツ』で、カズは大越健介キャスターの質問に対し、キッパリと言い切っている。大越:あの時、フランス大会に出ていたとして、今も現役を続けていますか?カズ:いたと思います。ずっと続けてると思いますね。自分自身、もうサッカーが大好きなんです。 カズはJ2時代の2017年3月12日の群馬戦でゴールを決めて以来、得点を挙げていない。50代でプロサッカー選手を続ける偉業を褒め称えられる一方、出場機会の少ない最近は風当たりも強くなっている。批判の声を黙らせるには、ゴールしかない。長年の経験で、カズは誰よりもそうわかっている。 4年前、ネットを揺らした彼はスタンドに向かって走り、カズダンスを踊り終えると、噛み締めるようにゆっくりと人差し指を天に上げた。これを、決して最後のゴールにするわけにはいかない──。■文/岡野誠:ライター、松木安太郎研究家。NEWSポストセブン掲載の〈検証 松木安太郎氏「いいボールだ!」は本当にいいボールか?〉(2019年2月)が第26回『編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞』デジタル賞を受賞。著書『田原俊彦論 芸能界アイドル戦記』(青弓社)では1998年フランスW杯直前にメンバー落ちした三浦知良の帰国後、親友の田原がどう接したかも記している。
2021.06.02 19:00
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巨人時代、ホームランを打った翌日もマスクを被れない日があったという(左が大久保博元。時事通信フォト)
デーブ大久保「桑田に避けられていた」 バッテリー時の試合成績は…
 今季、15年ぶりに桑田真澄が投手チーフコーチ補佐として古巣・巨人に復帰した。電撃的なコーチ就任が発表される直前の1月12日、YouTubeの『デーブ大久保チャンネル』では〈槙原さんが禁断の質問「デーブ、桑田に嫌われてたの?」〉というタイトルで、元巨人の大久保博元とゲストの槙原寛己が現役時代を振り返っていた。 当時、大久保はホームランを打った翌日にもかかわらず、スタメンマスクを被れないことがあった。その試合は桑田の先発日と重なることが続いたため、師匠と仰ぐ中畑清打撃コーチ(当時)に「僕、桑田の時、外れるのアレなんかあるんですか?」と聞くと、「あれ? お前知らないのか。桑田がお前に受けてほしくないって言ったんだよ」と答えられたという。 デーブこと大久保博元は1992年5月、中尾孝義との交換トレードで西武から巨人へ移籍。「ホームランを打つと負けない」という“デーブ神話”も生まれ、最下位に沈んでいたチームを首位に押し上げる原動力となった。 この年、桑田真澄は10勝14敗と2桁勝利を挙げたものの、防御率4.41は規定投球回以上の投手でワースト2位。6月から7月にかけてチームの10連勝、4連勝、7連勝を全て止めてしまい、“連勝ストッパー”の汚名を受けた。巨人は2ゲーム差でヤクルトに優勝を明け渡し、前年16勝の桑田は期待の高さゆえに戦犯扱いされた。 同年オフに長嶋茂雄が監督として巨人に復帰。前年に猛打を爆発させていた大久保は1993年の開幕マスクを勝ち取り、序盤からアーチを連発。一時はホームランダービートップになるほど打ちまくった。4月27日には、1対3とリードされた敗色濃厚の9回表、横浜の佐々木主浩から逆転3ランを放ち、ヒーローとなった。 しかし翌日、スタメンが発表されると、捕手は大久保ではなく、村田真一だった。日刊スポーツは〈桑田、大久保と相性合わず スタメンに村田真一〉と見出しを打った。桑田はコメントを求められている。〈僕はだれだって構いません。いつも言っているじゃないですか。毎日を楽しく過ごせればそれでいいんです〉(1993年4月29日・日刊スポーツ) この日は雨天中止になったが、桑田スライド登板の29日はやはり村田がマスクを被った。 調べてみると、たしかに桑田と大久保の相性は良くなかった。1992年、桑田が先発した試合は5人の捕手がマスクを被り、大久保は最多の12試合だったが、成績は以下になる。大久保博元:12試合3勝7敗吉原孝介:10試合5勝4敗村田真一:5試合2勝3敗中尾孝義:1試合0勝0敗藤田浩雅:1試合0勝0敗 5月13日、桑田と大久保が初めて先発バッテリーを組んだヤクルト戦では3失点の完投負けだったが、その後5試合中4試合で、5回途中以下でKOされている。8試合目の7月15日の大洋戦でようやく初勝利を完投で飾ったが、後半戦の初戦は打ち込まれた。それでも、8月6日のヤクルト戦では完封、12日の広島戦では延長12回を196球の完投勝ちをしている。 1993年、桑田は開幕直後の2試合は大久保とバッテリーを組んだ。しかし、4月13日の中日戦は落合博満、中村武志、立浪和義にホームランを浴びて5回自責点4でノックアウト。21日の中日戦は8回自責点2だったが、2度の暴投がいずれも失点に繋がった。5回には無死一塁から大久保が後逸し、一塁ランナーの立浪が三塁まで進んだ。直後、種田がスリーバントスクイズを決め、この1点が大きく伸し掛かり、巨人は2対3で敗れた。同年、桑田の暴投5つのうち、2つはこの試合で生まれていた。結局、この日を最後に公式戦での2人のコンビは消滅した。 翌年のオープン戦では3月18日の日本ハム戦(水戸)でバッテリーを組み、桑田は5回2安打無失点に抑えている。しかし、開幕直前の3月31日の横浜戦(東京ドーム)で、桑田が5回表に1イニングだけ登板すると、34球で4安打3四球4失点と大崩れした。この年、2人が先発バッテリーを組むことはなかった。 公式戦では1993年4月21日を最後に、大久保が引退する1995年まで2人の先発バッテリーは一度もなかった。1992年から1993年にかけて先発コンビを組んだ14試合の成績は、防御率4.21で3勝9敗に終わっている。 デーブ大久保は2月11日のYouTubeチャンネルでも、桑田とのバッテリーが少なかったことに言及。「(桑田は)コントールが良いから、本当にリードが試されるピッチャーなわけ。だから、村田さんの方が絶対良いわけ。リードは村田さんの方が全然俺より上だから。経験が違う。だからもう諦めた、最後は。最後は(1学年下だが)『桑田さん』と呼んでたもん(笑)。でも、アイツも威張らないんだよ、真澄も」と穏やかに話した。 謙虚な大久保だが、1994年にはJ.ジョーンズの先発時には1試合を除いて全てスタメンマスクを被り、7勝を挙げさせている。4月27日の来日初勝利の時には、ホームランで華を添え、長嶋監督も〈大久保のリードがよかった〉(1994年4月28日・読売新聞)と褒めている。8月16日の中日戦では7回裏に先制の8号ソロを放ち、ジョーンズ、橋本清、石毛博史の完封リレーを演出。最後はマスクを村田に譲ったが、1対0の勝利の立役者となった。また、西武との日本シリーズでも第3戦にジョーンズとバッテリーを組み、チームを勝利に導いた。 誰しも相性はある。大久保が移籍してきた1992年、1993年の桑田は全体的に不調だった。そんな巡り合わせもあっただろう。もしトレードが1年早ければ、違う結果が生まれた可能性もゼロではない。(文中敬称略)■文/岡野誠:ライター、松木安太郎研究家。NEWSポストセブン掲載の〈検証 松木安太郎氏「いいボールだ!」は本当にいいボールか?〉(2019年2月)が第26回『編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞』デジタル賞を受賞。本人や関係者への取材、膨大な一次資料、視聴率などを用いて丹念な考察をした著書『田原俊彦論 芸能界アイドル戦記1979-2018』(青弓社)が話題に。
2021.02.18 16:00
NEWSポストセブン
応援団化するサッカー解説 野球の辛口評論家も姿を消す
応援団化するサッカー解説 野球の辛口評論家も姿を消す
 芸能人の不祥事が起きても、あまり厳しく追及せず論点をずらし、政府の愚策にも矛先を向けず番組だけを盛り上げる。そんな「応援コメント」が、テレビの情報番組のコメンテーターの間で多用されている。辛口よりも優しく、批判よりも応援を──その風潮がよりいっそう顕著なのがスポーツ界だ。 現役選手を厳しく叱咤するOB解説者のイメージは過去のもの、今求められている「応援コメンテーター」の代表格がサッカー解説者の松木安太郎氏(62)だ。 サッカー中継では、プレーや戦術の解説そっちのけで「いいよーいいよー」「危ない!」と“居酒屋応援スタイル”を確立させた松木氏は、日本代表がシュートを外すと「今のはキーパーがいなかったら入ってますね」。相手チームに先制ゴールを許すと「事故みたいなものだから」。本田圭佑のシュートがバーに当たると「ゴールちょっとずらしたいよね」……。 その独特の応援解説に当初は賛否あったものの、今では好感を持って受け容れられているようだ。スポーツ紙のサッカー担当デスクが指摘する。「選手への辛辣なコメントで人気を得た解説者たちは、たまにスポーツニュースに登場するくらい。サッカー日本代表戦となると、松木氏や元日本代表の中山雅史氏のように、技術的な解説よりも“応援団スタイル”の解説が主流。バラエティでも重宝されるのは前園真聖氏、中西哲生氏、北澤豪氏らですが、彼らも選手に厳しいことは滅多に言わないスタイルですね」 プロ野球でも辛口評論家が姿を消した。「野村克也さん、豊田泰光さん、西本幸雄さんのように、選手や球団に苦言を呈する評論家が亡くなられ“世代交代”とともに解説口調に変化がみられます。代わりに目立つのは、江川卓氏や掛布雅之氏、そして赤星憲広氏や新井貴浩氏らもそうですが、選手を『○○君』『○○選手』と呼ぶ。 特に桑田真澄氏は、一緒に並ぶ解説者も君付けで呼ぶほどの配慮の塊。彼らは自分の経験は話すけど、選手の批判は口にしません。歯に衣着せぬ物言いで人気のエモやんこと江本孟紀氏や谷沢健一氏、高木豊氏などのベテラン勢は健在ですが、勢力図は変わっています」(別のスポーツ紙デスク) 体育会系とは程遠い現状には、「野球評論家の氷河期」が関係しているという。「地上波の野球中継が激減し、解説の専属契約の枠も狭まりました。現役の選手や監督から嫌われると情報も入らなくなり、仕事も影響を受ける。そうして辛口の解説は激減し、現役時代の成績に関係なく番組に配慮できる野球評論家が生き残るようになりました」(同前)※週刊ポスト2020年10月9日号
2020.10.03 16:00
週刊ポスト
かつてのドラフト1位選手が電撃トレード(澤村拓一。時事通信フォト)
澤村電撃トレード 「生涯巨人」のドラ1選手は意外と少ない
 巨人のユニフォームのまま、現役生活を終えるドラフト1位選手はどのくらい存在するのか──。9月7日、巨人・澤村拓一投手とロッテ・香月一也内野手の交換トレードが発表された。澤村は今季こそ不振で三軍落ちも経験したとはいえ、2016年のセーブ王であり、昨季も主に中継ぎとして43試合に登板し、防御率2.61を記録。2010年のドラフト1位選手のシーズン途中のトレードには驚きの声が上がった。 1965年のドラフト制開始以降、巨人は江川卓の『空白の1日』で大騒動を巻き起こしてボイコットした1978年を除き、54回のドラフト会議に参加してきた(1966年は1次、2次と2回あり)。1位という呼び名のなかった自由枠獲得で入団した2002年の木佐貫洋、久保裕也、2004年の野間口貴彦、三木均、高校生と大学・社会人ドラフトに分離されていた2005年から2007年までの希望枠で入団した福田聡志、金刃憲人を含めれば、巨人には60人のドラフト1位がいる。このうち、1973年の小林秀一を除き、59人が入団している。 実は、2010年の澤村拓一までの50人のうち、“巨人一筋”の選手は22人しかいない(現役の坂本勇人含む)。意外にも、過半数を超える56%の28人は他チームに移籍した後に、プロ野球生活に幕を閉じている(※2011年ドラ1の松本竜也は2015年に解雇。2012年以降のドラ1は全て現役選手。今回トレードになった澤村までを対象として計算した)。 2000年代以降に監督を務めた堀内恒夫、原辰徳、高橋由伸はいずれもドラフト1位で、現役時代を巨人で全うした。そのため、“巨人のドラ1”には特別なイメージがあるかもしれないが、実際には今回の澤村のようにトレードされることも往々にしてある。 年代順に追うと、1965~1973年のV9時代のドラフト1位で、移籍することなく現役生活を終えた選手は堀内恒夫、高田繁、湯口敏彦(3年目の春に急逝)、中井康之の4人だけ。当時はレギュラーが固定されていた上に、他球団から実績のあるベテランが毎年加入しており、若手の芽が出づらい環境でもあった。1969年の1位である小坂敏彦は3年しか巨人に在籍していない。この時期のドラフト1位が期待されていたような成長を遂げられなかったこともあってか、1974年オフに就任した長嶋茂雄監督は6年で2度のリーグ優勝に留まった。期待通りの活躍をしたドラ1選手たち しかし、1980年オフに藤田元司監督が就任すると、3年で2度のリーグ制覇を果たす。この後の王貞治監督は5年で1度しか優勝できなかったが、1988年オフに再登板した藤田監督は1989、1990年と連覇を果たし、監督生活計7年で4度の優勝に導いた。第1次長嶋政権最終年の1980年からFA(フリーエージェント)選手加入前年の1993年まで、巨人は1度しかBクラスに転落していない。 その背景には、ドラフト1位選手の期待通りの活躍があった。鹿児島実業の定岡正二を指名した1974年から、PL学園の桑田真澄を獲得した1985年までの12年間では、1976年の藤城和明と1979年の林泰宏、1985年の桑田を除いたドラ1の8選手が巨人のままユニフォームを脱いでいる。 この時代のドラ1野手に目を向けると、1975年の篠塚利夫が首位打者2回、1977年の山倉和博がMVP、1980年の原辰徳がMVPと打点王とタイトルを獲得。ドラ1投手では1981年の槙原寛己は新人王、日本シリーズMVP、1982年の斎藤雅樹は最多勝利5回、最優秀防御率3回、1985年の桑田真澄はMVP1回、最優秀防御率2回を獲得している。この3人は“三本柱”と呼ばれ、一時代を築いた。 それに比べ、1986年から1997年までの12年間で、移籍せずに巨人で現役を全うしたのは1990年の元木大介、1995年の原俊介、1997年の高橋由伸の3選手のみ。木田優夫、橋本清、河原純一、入来祐作のように一時期活躍した投手も、最終的には他球団へ移籍している。ドラフト1位だからといって、トレードに出しづらいという風潮は昔から存在しないのだ。FA制度が巨人からの流出も引き起こす 1993年オフにFA制度が導入されると、巨人は他球団から落合博満や川口和久、広沢克己、清原和博などの大物選手を獲得。1989年のドラ1で、東京六大学リーグで三冠王に輝いた大森剛はその実力を発揮する機会に恵まれず、1998年のシーズン途中に近鉄に移籍し、翌年限りで引退した。 1998年の上原浩治から2010年の澤村までのドラフト1位18人のうち、現役の坂本勇人を含めて巨人のユニフォームを着続けた選手は7人だけ。2004年の野間口貴彦、三木均、2005年の辻内崇伸、2007年の藤村大介は20代で現役を退いており、主力のまま現役を終えたのは阿部慎之助しかいない。巨人への入団を熱望し、優勝に何度も貢献した内海哲也や長野久義ですらFAの人的補償で他球団に移っている。昭和の頃より移籍市場が活発になった現代で、阿部のように“巨人一筋”で終われるドラフト1位は稀なのだ。 FA制度は巨人からの流出も引き起こし、松井秀喜や上原浩治、高橋尚成はアメリカに渡った。定岡が近鉄への移籍を断って引退した昭和の頃と違い、今は『巨人がプロ野球界の中心』という価値観も薄れているし、トレードをお払い箱と考える風潮もなくなっている。 1988年ドラ1の吉田修司は巨人在籍5年強で6勝しか挙げられず、1994年シーズン途中に岸川勝也との交換トレードでダイエーに移籍。新天地で水を得た魚のように活躍し、1997年から2003年まで7年連続で45試合以上に登板し、ホークスに欠かせない中継ぎ左腕として3度の優勝に貢献。41歳になる年まで現役を続けた。2008年のドラ1である大田泰示は日本ハムに移籍して開花している。潜在能力の高い“ドラ1”澤村のロッテ移籍は、復活への大チャンスになるか。■文/岡野誠:ライター、松木安太郎研究家、笑点研究家。NEWSポストセブン掲載の〈検証 松木安太郎氏「いいボールだ!」は本当にいいボールか?〉(2019年2月)が第26回『編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞』デジタル賞を受賞。著書『田原俊彦論 芸能界アイドル戦記』(青弓社)の巻末資料では田原の1982年、1988年の全出演番組(計534本)の視聴率やテレビ欄の文言、番組内容などを掲載。
2020.09.08 16:00
NEWSポストセブン
松木安太郎研究家 「1人足りないほうがいい」発言の真意は
松木安太郎研究家 「1人足りないほうがいい」発言の真意は
 かつてヴェルディ川崎の監督としてJリーグ2連覇を果たした松木安太郎氏は、決して感情だけではなく、冷静に現実を見極めた上でのポジティブさと厳しさを持ち合わせて解説しているのではないか──。 サッカーU-23アジア選手権で日本はサウジアラビア、シリアに連敗を喫しグループリーグで敗退。3戦目となった1月15日のカタ―ル戦も1-1の引き分けとなり、3戦未勝利に終わった。 同試合も、テレビ朝日系列の中継では松木氏と中山雅史氏が解説を務めた。そして前半アディショナルタイムに退場者を出した後、松木氏は「1人足りないほうがいいチームになる」と発言した。この発言の真意について、松木安太郎研究家でライターの岡野誠氏が考察する(※時間表記はテレ朝の中継を基準。松木氏発言の書き起こしは「まあ」「ちょっと」「やっぱり」「っていう」「ね」などの言葉を省略している所あり)。 * * * 大雑把に分ければ、人間には「結論ありきで物事を見る人」、「物事を見てから結論を下す人」の2種類が存在する。常にポジティブな発信をしている松木安太郎氏は前者に思われがちかもしれないが、実際は後者である。1月15日のカタ―ル戦は、それを証明する一戦だった。 日本はMF田中碧の退場で、後半10人での戦いが強いられた。ハーフタイムに入った直後、松木氏はすぐに気持ちを切り替えた。「1人足りなくてもね、逆に足りないほうがいいチームになったりするんでね、後半期待しましょうよ!」 10人対11人になれば、当然日本の不利が考えられる。松木氏の仮説に、疑問を持った視聴者もいただろう。後半に入ると、何度もこの説を唱えるようになる。後半0分:サッカーって不思議でね、10人になったチームのほうがうまくスペース使えたりするんで、どっちがいいかわからないですよ。後半4分:ボールの裁きが早くなったよね、日本ね。1人少ないせいかね、積極的にみんなが動いたり、もらう動きが増えてるんだと思うんですよね。だからわかんないよ、これ。後半10分:(1人少なくなったことで)カウンター狙いのやり方になって、むしろ日本とすりゃあねえ、スムーズにやっぱり攻めれる分ね、チャンスも作れるかもしれないやね。後半11分:1人少なくなったほうが仕掛けも早いし、動き出しも早くなってるから、決して悪くないですよ、チャンス作れますよ。後半15分:向こうもね、かなり来れなくなってきてますからね。しかも日本が1人少ないんでね、やみくもに攻められないのもあるんでしょうけどね。後半15分:(カータルに)動いて(ボールを)もらう選手が少なくなってきました。やっぱり、1人多いということでね、何かラクしちゃいたいんでしょうね。後半18分:(日本は)これだけね、ある程度早く引くんで、スペースがないですからね、相手にもね。なんか日本は10人になって良くなったよね! 18分のあいだに7回も、“1人少ない利点”を話した。松木氏のイメージから、無理矢理ポジティブに「日本は10人になって良くなったよね!」と切り替えたと感じた視聴者もいるかもしれない。 しかし、前半の松木氏は日本の攻撃に満足せず、「早めの仕掛け」「早めの動き出し」を望んでいたことを忘れてはならない。 主な言葉を挙げるだけでも、2分「早めの仕掛けは今日見たいね」、27分「回しているだけじゃなくて、どっかで仕掛けてほしいんだよね」、28分「先程も言いました仕掛けを早くしていくのも大事」、29分「相手が引く前に攻めるのも大事」、31分「長い距離走った選手をどんどん使ってあげることが大事」、34分「サイドからどんどんどんどんね、クロス上げていいですよ、それで止めることはない!」など何度も指摘していた。 このような改善点を述べていた松木氏は、退場という悪夢が起こった後、今までの経験値から「逆に1人足りないほうが、早めの仕掛けや動き出しをできる」と考えたのではないか。 だからといって、すぐに「良くなった」とは言っていない。後半開始当初は「どっちがいいかわからないですよ」「だからわかんないよ、これ」「チャンスも作れるかもしれないやね」という未確定の表現を多用し、後半11分も「決して悪くない」に留めている。 時間が経つに連れ、前半に再三再四指摘していた「早めの仕掛け」「早めの動き出し」が何度も見られるようになったので、後半18分に「なんか日本は10人になって良くなったよね!」と褒めたのだろう。 松木氏は、決して結論ありきで物事を述べているのではない。まず、前半の攻撃と照らし合わせた上で「1人足りないほうがいい時もある」という仮説を立て、選手(視聴者)を鼓舞した後、現実を見て「良くなった」と結論付けたのであろう。事実、日本は後半28分にFW小川航基(ジュビロ磐田)のゴールで先制した。 同時に、松木氏は決して耳障りのいい言葉だけを述べているわけでない。「これは1人少ない分、負担が掛かるのはしょうがない。それは覚悟でやってくれないと困るんだよ」(後半6~7分)、「(日本がロングボールから裏へ飛び出す攻撃を見て)うん、これだ、これこれ。キツいけど、これもう1人足りないんだから、しょうがないんだよ」(後半10分)と現実を把握した上で、厳しい要求もしている。 たしかに、松木氏らしい日本贔屓もあった。「(カタールは)1人が多いということでね、何かラクしちゃいたいんでしょうね」(後半15分)、「1人多いと思って、向こうはね、ラクしようと思ってるからチャンスだよね」(後半37分)という発言は、単なる思い込みだと突っ込まれそうだ。しかし、あまりに論理的過ぎると人間味を欠く。このような主観も、松木安太郎という人間が愛される理由の1つだろう。 過去は変えられない。1人退場というネガティブな出来事を嘆いても仕方ない。冷静な考察から現状をポジティブに捉え、選手を鼓舞する。愛嬌を感じさせながらも、締める所は締める。カタ―ル戦における松木安太郎氏の解説は、三浦知良やラモス瑠偉などのスター集団・ヴェルディ川崎を率いて、1993年から2年連続チャンピオンに導いた偉業を思い起こさせた。●文/岡野誠:ライター・松木安太郎研究家。著書に『田原俊彦論 芸能界アイドル戦記1979-2018』(青弓社)。同書では結論ありきで物事を見ずに、膨大な1次資料を元に判断を下しており、2009年のインタビューで田原本人に直接苦言を呈した場面も収録。2月8日13時半から大阪で、3月22日15時から静岡・藤枝で元CHA-CHA木野正人とトークショーを開催予定。
2020.01.29 16:00
NEWSポストセブン
松木安太郎氏ほど審判と戦う解説者はいない 研究家が分析
松木安太郎氏ほど審判と戦う解説者はいない 研究家が分析
 サッカー解説者・松木安太郎氏は、ピッチ上の審判といかに戦ったか──。サッカーU-23アジア選手権で、サウジアラビア、シリアに連敗を喫しグループリーグ敗退が決まった日本は、1月15日に開催された3戦目のカタール戦も1-1の引き分けとなり、3戦未勝利に終わった。その試合の後半31分、審判がカタールにPKを与えると、テレビ朝日系列の中継で中山雅史氏とともに解説を務めていた松木氏は、次のように激怒した。「え? なんだよ、VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)見ないのか!? えっ? 見ないのか? えっ? あっ。見ないのか? 見ないのか? なんなんだ、これ。なん……なんで見ないんだ、これ。えっ!? なんで確認しないんだ!」 松木安太郎研究家でライターの岡野誠氏が「日本×カタール戦」を例に、「松木安太郎×審判」という観点から分析する(※時間表記はテレ朝の中継を基準)。 * * * アディショナルタイムを含め99分間に及ぶ試合で、松木氏が審判の判定に言及したシーンは前半9回、後半8回を数えた。審判がどんな判定を下し、その前後に松木氏が何と叫んだのかを挙げてみよう(※注:1つの出来事で1回とカウント。松木氏のコメントの途中、実況の進藤潤耶アナや中山氏が口を挟んでいる場合は状況に応じて明記することも)。・前半8分審判:MF食野亮太郎にファールの判定。松木氏:あ、いいですねえ。いや~今のね、ファールですか。(※注:途中、「あぉお~~~!」という叫びも聞こえるが、中山氏の声と判断。松木氏と中山氏の声はともに甲高いく判別しにくいが、約20回繰り返し聞いて結論を下した)・前半12分審判:MF旗手怜央のドリブル突破をカタールの選手が手で阻止したように見えたが、笛はならさず。松木氏:ファールはないのか。止めた感じありましたけどね。・前半13分審判:MF田中駿汰からゴール前のMF旗手へスルーパスが通ってシュートも、副審のフラッグが上がる。松木氏:オフサイドか(やや不満げに)・前半42分審判:カタールにハンドの判定。松木氏:ハンドでしょ、ハンドでしょうね。・前半42分審判:DFハラフとMF食野が小突き合うも、警告などは出ず。松木氏:これ、もうレフェリーの判断ですからね。 ここまでの松木氏は審判の判定に「納得」1回、「不満」3回、「移譲(※注)」1回。5度中4度も、松木氏が丁寧語を使用する展開だった。【※注:移譲とは「対等の立場にある者の間で、権利・権限が譲り渡されること」を意味する。本来、松木氏に判定を下す権利はなく、対等な関係とは言い難いが、この記事では「松木安太郎×審判」という視点で捉えるため、あえてこの単語を使用する】 前半46分、事件が勃発する。カタールのFWアブドゥリサグが日本陣内でMF田中碧に止められる。アブドゥリサグは足を押さえてうずくまったが、プレーは続行。攻め上がった日本がゴール前にクロスを上げるも、カタールがクリア。日本がこぼれ球を拾ったところで、審判が試合を止めた。 すると、これまでの丁寧な口調から一転、松木氏はべらんめえ調でまくし立てた。「今のタイミングで止めてほしくねえなあ。今のクロス……終わってからだな。(倒れたシーンをVTRで見て)ああ、完全に引っ張ってんじゃないか、今。相手の……だからね、今の途中で止める必要ないよね」 中断後、審判がボールを持って、プレーが止まった右サイドに向かっても、松木氏の怒りは収まらない。松木氏:これで日本にボールもらったって、あのチャンスは……さっきのほうがよっぽどチャンスだよ。アナ:主審がプレーを止めました。ドロップボールでゲームが再開されます。松木氏:ドロップボールつったって、日本のボールにくんなきゃ。 この直後、主審がVARを確認しにいくと、松木氏の頭に疑問が渦巻いたようだ。「んあぁ?? な、何をVARなんだ?? いやいや……向こうの選手がやってるのは見えたけど。(VTR見ながら)ボールに行ってるよね。ボールに行ってるよね。ボールに行ってるよね。何?」 VARの結果、審判はMF田中碧にレッドカードを掲げ、一発退場を宣告。松木氏は呆れ返った口調でこう言い放った。「こんなバカな話あるか。どこがなんだよ。どこがなんだよ。ボール行ってるじゃないか。しらけるなあ。なんだ今の。なんなんだよ。んぅ?? いや~だけど、今ボール完全に行ってて、何が……だよね。本当にわからないね」 結局、「松木安太郎×審判」は前半9回あり、松木氏は審判の判定に「納得」1回、「不満」7回、「移譲」1回。丁寧語使用は4回だった。◆後半、カタールのPK判定に怒りが爆発 前半アディショナルタイムの退場劇によって、後半の松木氏は審判に攻勢を強める。・後半3分審判:カタールにファール判定。松木氏:さっきのがレッドカードだったら、今のもおかしいんじゃないかなって思うようにね(笑)。そんな気になっちゃいますよね。・後半7分審判:カタールにファール判定。松木氏:よし! ファールだろ、ファールだろ。・後半8分審判:日本にファール判定。松木氏:んぁぁ、ファールかあ。でも今のいいディフェンスですよね、前線の。・後半9分審判:カタールが日本のゴールラインを割ったように見えたが、プレー続行。松木氏:出た、出た、出た! 出てるだろ! 出てるだろ! はぁぁ? 出てるでしょう、今の!(VTR見て)ほら!・後半22分審判:日本にファール判定。松木氏:いいディフェンスだけどね。(VTR見て)ボールから離れてるときに、ボールを奪いに行ってますからね。で、(カタールは)関係ない時に倒れているわけでしょ、で、すぐに起き上がってるわけでしょ、こういうプレーもなんか主審いったほうがいいんじゃないかなと思うよね。・後半30分審判:FWマジードがペナルティエリア内で倒れ、カタールにPKが与えられる。松木氏:おーーーーえーーーーい! なんだよ、今のボールだろ! ボールだろ、今! これ、なんで? VAR見ない? VARを見ようとしない審判に対して、松木氏の怒りは収まらない。「え? なんだよ、VAR見ないのか! えっ? 見ないのか? えっ? あっ。見ないのか? 見ないのか? なんなんだ、これ。なん……なんで見ないんだ、これ。えっ!? なんで確認しないんだ!」「なんで見に来ないんだ、これ。そんなの……。見ないのか?(VTR見て)あっっ! 逆に蹴られてるんじゃないか! 逆に蹴られてるじゃないか、これ! レフェリー! 蹴られてるじゃないか、これ。なんで、蹴られてるじゃないか、これ! なぜ見ない! なーによ!!!」 PKが決まった後、倒れるシーンのVTRが流れると、「蹴られてる! 逆に蹴られてるよ!」と激高。2分後にも、「せっかくだからね、勝って。勝ちたいよ、これ! もう~癪に障るな~、もう」とPK判定への怒りは一向に収束しなかった。 後半45分、日本がコーナーキックを獲得。MF杉岡大暉が蹴るも、エリア内でDF町田浩樹がファールを取られる。すると、松木氏の怒りが爆発した。「ファールかあ、今の~!? もう全部ファールじゃないように見えるの、全部取られてるような感じだよ、俺はな! 今日! マジで」 日本に不利な判定ばかりだと思った松木氏は「もう全部ファールじゃないように見えるの、全部取られてるような感じだよ」と不満をぶちまけた後、「俺はな!」とあくまで自分の見解だと発表した。 日本チームが審判に文句を言いたくても、プレー中に猛抗議はできない。その気持ちを代弁しつつ、「俺はな!」と発言の責任は全て自分にあると示した。選手を思いやり、身を挺して日本代表を擁護する。こんな解説者が他にいるだろうか。 後半の松木氏は「納得」2回、「不満」6回、「移譲」0回。丁寧語使用は1回。前後半を合わせて、松木氏が審判の判定に言及した17回の内訳は、「納得」3回、「不満」13回、「移譲」1回。丁寧語使用は5回だった。 結局、「日本×カタール」は1対1の引き分けに。試合終了直後の「Yahoo!リアルタイム検索」で話題の検索キーワードは、1位 「VAR」、2位「レッドカード」、3位「松木」、4位「審判」と日本代表メンバーを抑えて、松木氏がベスト3入りした。 ピッチ上の選手や森保一監督以上に、松木氏が戦っていた――視聴者がそう感じ取った結果といったら言い過ぎだろうか。……たしかに言い過ぎかもしれない。 それでも、これだけは言える。アディショナルタイムを含めた99分間、松木安太郎氏は全力で日本を鼓舞した。この戦う姿勢を、私は生涯忘れない。◆文/岡野誠:ライター・松木安太郎研究家。著書に『田原俊彦論 芸能界アイドル戦記1979-2018』(青弓社)。同書では、1998年フランスW杯直前にメンバー落ちした三浦知良の帰国後、親友の田原がどう接したかなども明かしている。2月8日13時半から、大阪・ロフトプラスワンウエストで元CHA-CHA木野正人とトークショーを開催予定。
2020.01.26 16:00
NEWSポストセブン
おいおい! 松木安太郎氏がU-23解説で多用の同語反復を検証
おいおい! 松木安太郎氏がU-23解説で多用の同語反復を検証
 サッカー男子の東京五輪予選を兼ねたU-23(23歳以下)アジア選手権で1次リーグB組の日本はサウジアラビア、シリアに連敗し、グループステージ敗退が決まった。地上波ではテレビ朝日系列で中継され、解説は松木安太郎氏と中山雅史氏が務めた。松木安太郎研究家でライターの岡野誠氏が、1対2で敗れたシリア戦の試合展開の中で、松木氏の解説がどう変化していったかを読み解く(※時間表記はテレ朝の中継を基準にした)。 * * *  初戦のサウジアラビア戦に敗退した日本にとって、2戦目のシリア戦は絶対に落とせななかった。そんな時、いつも以上にチームを鼓舞するのが松木安太郎氏である。 この試合、松木氏は「おい!おい!」「よしよし!」などいつも以上に同じ言葉を連続で繰り出した。いわゆる『同語反復』の回数が増えたのだ。その回数を検証してみよう。 序盤は『同語反復』も少なかった。前半2分、FW上田綺世(鹿島アントラーズ)が中盤でボールをキープした際に「強い、強い」と叫ぶ。4分、相手FWのバラカトが左サイドをドリブルで突破し、シュートを放った一連のシーンで「ここですよ、ここ!」(*注1)、「ボールへ! ボールへ!」と連呼。8分、VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)でシリアのPKと判定された直後、GK大迫敬介(サンフレッチェ広島)に「とにかくこれは…もうね、取るしかないよ、取るしか!」(*注2)と鼓舞。8分50秒にPKで先制点を許すまでは、この4回だった。【*注1:前半4分「ここですよ、ここ!」のように、間に助動詞(です)や終助詞(よ)が付く場合は『同語反復』を妨げる言葉ではないと判断する。前半36分「シュート打て、シュートね、シュート打てばね」は『シュートね、シュート』で連続2回と判定】【*注2:前半8分「もうね、取るしかないよ、取るしか!」は2回目の『取るしか』の後に「ないよ」を省略していると考えられるので、『同語反復』と判断。前半41分「こぼれたところ!こぼれ…」、後半42分「1人いけ! 1人!」、後半46分「すぐいけ、すぐ」なども同じ。ただし、前半40分の「両手あげてね、いったほうがいいね。両手をね」は「いったほうがいいね」が間に挟んでいると考えられるため、カウントしない】 以降、怒濤のような『同語反復』が始まる。9分から29分48秒にMF相馬勇紀(鹿島アントラーズ)のゴールで日本が同点に追いついた直後までの約21分間を振り返ってみよう。9分:「こっからだ、こっから」11分:「慌てないでいい、慌てない」「チャンスだ、チャンスだ、チャンスだ」14分:「キーパー! キーパー!」17分:「よしよし!」「おーよしよし!」「コーナー、コーナー、よしコーナー」(*注3)「コーナー! コーナー、コーナー」18分:「これ! これこれ! これこれこれこれ」「ナイスカバー、ナイスカバー!」 24分:「さあ、こぼれ…こぼれたところ」「ぐるぐるぐるぐる」 25分:「そうです、そうです」26分:「中盤だよ、中盤!」「ゴーゴーゴー!!!」「まだまだまだあぁ」「早め早め!」27分:「でもいい、いい」「いいリズムだ、いいリズムだ」29分:「うん、うん」「いいよ、いいよ」「周り、周り」「逆サイド! 逆サイド! 逆サイド!」「よおーーーし! よし! 相馬! よし! 相馬!」(※『よおーーーし! よし!』『よし! 相馬! よし! 相馬!』で各1カウント)【*注3:前半17分「コーナー、コーナー、よしコーナー」 は途中に『よし』があるので、連続2回と判定】 失点するまで4回だった『同語反復』は、先制を許した直後から同点に追いつくまでの21分で実に25回を数え、1分に1回を上回るペースを記録した。つまり、松木氏は劣勢に立つと、言葉を繰り返す傾向があるのだ。 同点に追い付いた後も、松木氏の『同語反復』は止まらず、キックオフ前の30分から前半終了47分までの17分間で「拾った、拾った、拾った」「よぉお~ぅ~~おお~~」(*注4)など17回を数えた。後半に入ると、42分50秒に勝ち越しゴールを許すまでの間には「サイド! サイド!」「ファールしない、ファールすんな、ファール…ノーファールで」(*注5)など28回。1対2とリードされた後半44分のキックオフから試合終了までの5分間では「1人いけ! 1人いけ!」「ファール!ファール!」など8回となった。【*注4:松木氏の場合、前半46分「よぉお~ぅ~~おお~~」のような「おお~」「ああ~」関連の言い方は、人によって書き起こしに誤差が生じやすいため、「よぉお~ぅ~~」も「おお~」と同義と考える。後半32分「うおぉい!おい!おい!」の「うおぉい!」と「おい!」の関係も同様】【*注5:後半7分「ファールしない、ファールすんな、ファール…ノーファールで」の『ファールしない』、『ファールすんな』、『ノーファール』は意味的には同じだが、微妙に言葉が変わっているので、『同語反復』とは判断しない。『ファールすんな、ファール…』は『すんな』を省略していると考えられるため、ここは2回連続でカウント】 手元の集計によれば、松木氏はシリア戦で82回の『同語反復』を行なった(*注6)。同点時は69分で49回(1分で0.71回)だったが、1点ビハインド時は26分で33回(1分に1.27回。ともに小数点第3位以下を四捨五入)とピッチが上がっている。【*6:前半33分の「そう縦、そう、そうダイレクト!」のように1つのプレー毎に「そう」などと言っている場合、『同語反復』とは判断しない】 シリア戦での『同語反復』の回数ランキングを挙げると、以下になる。1位:7回 前半18分の「これ」 「これ! これこれ! これこれこれこれ」2位:4回 前半34分の「ない」 「ないないないない!! 関係ないあんなのは」3位タイ:3回 後半20分の「よし」 「よしよしよし」  後半26分の「そう」 「そうそうそう」 後半32分の「おい!」 「うおぉい!おい!おい!」(※注4)など13例 前半18分、わずか2秒強で「これ! これこれ! これこれこれこれ」と7回も「これ」と叫んだ場面は日本のコーナーキックがクリアされ、そのこぼれ球を中盤でMF齊藤未月(湘南ベルマーレ)が拾ったシーンだった。松木氏は常日頃からこぼれ球への意識を口酸っぱく指摘しており、この試合でも開始早々に「こぼれ球のボールをまあ、自分たちのボールにいかにできるかですね」と話していた。そのため、劣勢の状況でこぼれ球を拾った齊藤のプレーに喜びが爆発したのだろう。 前半34分、日本のペナルティエリア付近でシリアの選手が倒れると、わずか1秒強の間に「ないないないない!!」と4回も「ない」と連呼している。日本が相手のペナルティエリア付近で倒れると「PK!PK!」とすぐ叫び出す松木氏も、相手選手のアピールには厳しいところを見せた。 アディショナルタイムを含めた95分間、日本を鼓舞し続けた松木氏。後半42分50秒に勝ち越しゴールを許した直後は、珍しく90秒間も沈黙が続いた。 今回はグループリーグで敗退したものの、開催国枠での東京五輪出場が決まっているU-23日本代表。オリンピックでは、松木氏を落胆させるわけにはいかない。◆文/岡野誠:ライター・松木安太郎研究家。著書に『田原俊彦論 芸能界アイドル戦記1979-2018』(青弓社)。松木氏の研究以上に力を入れた同書では、関係者への取材、膨大な資料を元に〈ムーンウォークを日本で初めて取り入れた〉説を多角的に証明。〈突然蒸し返され始めた「ビッグ発言」〉など通説を覆し、〈三浦知良との友情〉にもページを割いている。
2020.01.16 07:00
NEWSポストセブン
2019年重大ニュース【スポーツ】大関の母が「美人すぎる」
2019年重大ニュース【スポーツ】大関の母が「美人すぎる」
 2019年も『NEWSポストセブン』では数多くの記事を紹介し続けてきた。その中から編集部が、ネットで反響の大きかった記事を中心に、巷の重大ニュースとは、ひと味違う2019年の「重大ニュース」を厳選した(2018年12月~2019年11月末の記事が対象)。ここでは【スポーツ】編ベスト10を紹介。トップ3の記事については、ネットニュース編集者の中川淳一郎氏が解説する。(以下「」内は中川氏のコメント)●スポーツ編1~3位【1位】■相撲界で「美人すぎる」と話題、「貴景勝の母でございます」(7月)「貴景勝が幕内優勝した時、『あの和服の美女は誰だ!?』的に話題となりましたが、まさかのグラビア登場ですよ! 話し方も美しいですし、これは今年のスポーツ界No.1の話題に実に相応しい! あっぱれだ!」【2位】■検証 松木安太郎氏「いいボールだ!」は本当にいいボールか?(2月)「この記事を書いたライターの岡野誠氏は“松木安太郎研究家”として活躍していますが、この記事が掲載された後、ツイッターのトレンドには“松木安太郎研究家”が入るほどでした。『オレもこんな仕事をしたい』といった声も出ていましたが、岡野氏は“生島ヒロシ研究家”や“野球名鑑研究家”、“田原俊彦研究家”でもあります。田原俊彦については著書まであるほどすごい方なんですよ~」【3位】■俊足巧打の愛子さま ソフトボール大会で安打重ね打点も記録(6月)「これを“スポーツ”カテゴリーに入れてもいいのやら、と悩みましたが、愛子さまの運動能力の高さは、過去に徒競走などでもいかんなく発揮されたという事実もあります。読者の皆様におかれましても、この件については純粋にお喜びなられたので今回3位に選出です」●以下、4~10位■追悼・金田正一氏 「歴代最高投手」に選ばれカネやん節炸裂(10月)■ラグビー・松尾雄治氏、練習試合へ45km走ってボロ負けの過去(10月)■清原和博氏11年ぶりフルスイング撮、男児が「音、スゲー!」(8月)■池江璃花子、日大水泳部集合写真に笑顔で登場する回復ぶり(5月)■年俸4億円の阪神・鳥谷「退団→収入減」で来季納税は大丈夫か(9月)■花田優一、ホテル密談でまくしたてた父・貴乃花への批判(1月)■反社勢力とゴルフコンペしたプロ「刺青専用の風呂場あった」(6月)
2019.12.24 16:00
NEWSポストセブン
西武優勝を予想したのは75人中3人のみという結果に(写真:時事通信フォト)
パ・リーグ順位予想 評論家75人中「4球団的中」の2人は
 予想が困難なことで知られるプロ野球の順位予想だが、今季大混戦だったパ・リーグの順位を4つも当てた評論家が2人もいた――。データ分析家の岡野誠氏が、シーズン前に行なわれたスポーツ新聞6紙(東京版)とフジテレビCS『プロ野球ニュース』の評論家75人のパ・リーグ順位予想を答え合わせしながら、徹底解析する。【*1:敬称略 *2:評論家名後のカッコ内は現役時代のパ・リーグ最長実働球団(セ・リーグのみ在籍の場合はセ球団名を記載) *3:スポーツ紙と『プロ野球ニュース』の2つに出演した評論家で順位を入れ替えている場合は最新の日付を優先 *4:川上憲伸は3月27日の東京中日スポーツと28日の『報道ステーション』で順位を入れ替えているため、後者を優先】 * * * まず、開幕前の評論家75人の平均予想順位と優勝予想を見てみよう。【パ・リーグ各球団の平均予想順位】ソフトバンク:1.13位/日本ハム:2.69位/西武:2.83位/オリックス:4.71位/楽天:4.80位/ロッテ:4.84位【パ・リーグ各球団の優勝予想人数】ソフトバンク:66人(88%)/日本ハム:6人(8%)/西武:3人(4%)/オリックス、楽天、ロッテ:0人(0%) 圧倒的優位なソフトバンクに、昨季優勝の西武、3位の日本ハムがAクラス、オリックス、楽天、ロッテがBクラス──これが大方の予想だったが、結果は以下のようになった。【今季のパ・リーグ順位(的中人数/的中確率)】1位・西武(3/4%)2位・ソフトバンク(8/10.7%)3位・楽天(10/13.3%)4位・ロッテ(19/25.3%)5位・日本ハム(4/5.3%)6位・オリックス(31/41.3%) 西武の優勝、楽天の3位、日本ハムの5位という3つが主な予想と異なったようだ。 この中で、4つの順位を的中させた評論家が2人いる。柴原洋(ソフトバンク)は3~6位までをピタリと当てた。外れたのは1位・ソフトバンク、2位・西武。楽天と日本ハムの順位を2つとも的中させたのは、評論家75人の中で柴原だけだった。 もう一人は、高木豊(日本ハム)。西武の優勝を当て、外れたのは3位・日本ハム、5位・楽天だった。 3つ的中は1位・西武、2位・ソフトバンク、6位・オリックス予想の黒江透修(巨人)、2位・ソフトバンク、3位・楽天、6位・オリックス予想の岡田彰布(オリックス)の2人のみ。 2つ的中は19人、1つ的中は 23人。ゼロ的中はセ・リーグよりも10人多い29人にも上った。66人がソフトバンクを優勝に予想したためだろう。評論家75人の平均的中率は1.0だった。 菊池雄星がメジャーリーグへ行き、浅村栄斗がFAで楽天に移籍。投打の主軸を失った西武を優勝候補にしたのは高木、黒江、真中満(ヤクルト)の3人だけ。4位に16人、5位に3人というBクラス予想もあった中で、西武は見事に連覇を達成した。●文/岡野誠:ライター・データ分析家・芸能研究家。研究分野は松木安太郎、生島ヒロシ、プロ野球選手名鑑など。著書『田原俊彦論 芸能界アイドル戦記1979-2018』(青弓社)が話題。同書は『ザ・ベストテン』(TBS系)の詳細データや田原俊彦の1982年、88年の全出演番組を視聴率やテレビ欄の文言などとともに記載しており、巻末資料を読むだけでも1980年代の芸能界が甦る。
2019.10.05 16:00
NEWSポストセブン

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