国内

原発避難者住む廃業ホテル 「お役所対応」の壁乗り越える

 福島第二原発からほど近い福島県楢葉町に、いわき市に避難した町民の一部が身を寄せるなどして“稼働率9割超”の大盛況となっているホテルがあるという。ジャーナリスト・小泉深氏が「復興」の現場からレポートする。

 * * *
 どのような経緯で「避難所ホテル」は誕生したのか。草野町長が語る。

「3月12日に避難指示が出た後、町民の大半はいわきに逃げてきました。しかし、避難所となった学校は新学期が始まったら出ていかなければなりませんでした。その後、4月に会津美里町の好意で役場機能を含めた被災者受け入れが可能になりましたが、それでも1000人以上がいわきに残りました」

 草野町長らはいわき市の協力を得て受け入れ可能な施設を探したが、事故処理に従事する原発作業員の住宅需要が多く、入居先の確保は困難を極めた。県に仮設住宅の建設を急ぐように要請しても、「まだまだ先になる」という返事で埒が明かない。

 そんな時に町長は「休眠中のNホテルを利用してはどうか」と考えた。

「建物は申し分ないが、インフラが止まっているためにすぐ入居できるか不安がありました。ですが、国や県の支援を待っていたら、町民を路頭に迷わすことになりかねない。知人の会社経営者に協力してもらい、半月ほどで復旧に漕ぎ着けることができました」(草野町長)

 すんなりと進んだわけではない。債権者との交渉は会社経営者が行なって了承を取りつけ、ガスや水道の再開も順調に進んだが、東北電力が「通電には1か月かかる」「通電工事の見積もりは当社の指定業者を使ってもらう必要がある」などと、“お役所対応”をしてきたのだ。役場スタッフらが「この非常事態が理解できないのか」と粘り強い交渉を重ねた末に、ようやく通電された。

 役場スタッフが回想する。「東北電力さんばかりでなく、議会や役場の中には“前例がない”と消極的な声もありました。ただ、町長が“住民を助けることが第一。責任は自分がすべて取る”と説得したことで話が進み、議会の承認も得ることができました」

※週刊ポスト2011年7月1日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
女性セブン
【悠仁さまの大学進学】有力候補の筑波大学に“黄信号”、地元警察が警備に不安 ご本人、秋篠宮ご夫妻、県警との間で「三つ巴の戦い」
【悠仁さまの大学進学】有力候補の筑波大学に“黄信号”、地元警察が警備に不安 ご本人、秋篠宮ご夫妻、県警との間で「三つ巴の戦い」
女性セブン
どんな演技も積極的にこなす吉高由里子
吉高由里子、魅惑的なシーンが多い『光る君へ』も気合十分 クランクアップ後に結婚か、その後“長いお休み”へ
女性セブン
《視聴者は好意的な評価》『ちびまる子ちゃん』『サンモニ』『笑点』…長寿番組の交代はなぜスムーズに受け入れられたのか?成否の鍵を握る“色”
《視聴者は好意的な評価》『ちびまる子ちゃん』『サンモニ』『笑点』…長寿番組の交代はなぜスムーズに受け入れられたのか?成否の鍵を握る“色”
NEWSポストセブン
わいせつな行為をしたとして罪に問われた牛見豊被告
《恐怖の第二診察室》心の病を抱える女性の局部に繰り返し異物を挿入、弄び続けたわいせつ精神科医のトンデモ言い分 【横浜地裁で初公判】
NEWSポストセブン
バドミントンの大会に出場されていた悠仁さま(写真/宮内庁提供)
《部活動に奮闘》悠仁さま、高校のバドミントン大会にご出場 黒ジャージー、黒スニーカーのスポーティーなお姿
女性セブン
『教場』では木村拓哉から演技指導を受けた堀田真由
【日曜劇場に出演中】堀田真由、『教場』では木村拓哉から細かい演技指導を受ける 珍しい光景にスタッフは驚き
週刊ポスト
日本、メジャーで活躍した松井秀喜氏(時事通信フォト)
【水原一平騒動も対照的】松井秀喜と全く違う「大谷翔平の生き方」結婚相手・真美子さんの公開や「通訳」をめぐる大きな違い
NEWSポストセブン
足を止め、取材に答える大野
【活動休止後初!独占告白】大野智、「嵐」再始動に「必ず5人で集まって話をします」、自動車教習所通いには「免許はあともう少しかな」
女性セブン
裏金問題を受けて辞職した宮澤博行・衆院議員
【パパ活辞職】宮澤博行議員、夜の繁華街でキャバクラ嬢に破顔 今井絵理子議員が食べた後の骨をむさぼり食う芸も
NEWSポストセブン
今年1月から番組に復帰した神田正輝(事務所SNS より)
「本人が絶対話さない病状」激やせ復帰の神田正輝、『旅サラダ』番組存続の今後とスタッフが驚愕した“神田の変化”
NEWSポストセブン
大谷翔平選手(時事通信フォト)と妻・真美子さん(富士通レッドウェーブ公式ブログより)
《水原一平ショック》大谷翔平は「真美子なら安心してボケられる」妻の同級生が明かした「女神様キャラ」な一面
NEWSポストセブン