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2011.07.01 07:00  週刊ポスト

平地なき<残酷マラソン>「ぜえぜえ」「マジかよ」の怨み口 

 兵庫県美方郡で今年19回目となる「みかた残酷マラソン」が開催された。とにかく平地がない、苛酷な「ウルトラマラソン」の現場を作家の山藤章一郎氏が走った。

 * * *
 眼前にとつぜん、急坂が現れる。標高605メートル。「山登り」と名づけられた11キロ地点、コース最難関の激坂である。辺りは、深い森。最低地点196メートルから実に409メートルを駈けあがることになる。

 スタートからゆるい下り坂を3キロ、そして上り坂を7キロ走ってきていた。マラソンなどやったこともない当方の情けない心肺が、「ぜえぜえ、はあはあ」いい始めている。

〈みかた残酷マラソン〉大会。

 急なエントリーは認められず、1757人の参加者が走るコースを、大会前日、速歩で行ってみることにした。

 兵庫県美方郡香美町。京都から特急とバスを乗り継いで3時間、県境の山を越すと鳥取である。日本海にそそぐ川の両岸の山中に散らばる集落を縫って行く全長24キロ、高低差409メートル、坂の斜度、10度を越えるコース。「熊出没注意」の看板が立ち、但馬牛の牛舎が道路脇に点在する、人口2万1000人の町である。

 どれほどのタイムで行けるのかも分からない。9時半に出発した。はっきりいって、厭々だった。初めから腰が引けていた。

 梅雨の晴れ間の薄曇りの朝。川音、鳥の鳴き声が耳に快いが、早くも息があがってきた。設置された第5給水所を過ぎたあたり、集落が途切れ、道は山中の上りに入った。

 急坂がだしぬけに現れたのはこの地点だった。ここからキャンプ場のある11キロ地点までの4キロが、地獄の始まり、平坦はまったくないと事前に聞かされていた。

「ぜえぜえ」と一緒に「マジかよ」の怨み口が出る。これから激坂、急勾配の連続である。
〈残酷〉と名づけられたこんなコースをランナーたちは、どれほどのタイムで駆け抜けるのか。

 ブログに掲載されていた去年の総合7位、Y氏のラップ。
5キロ:15分54秒
10キロ:21分21秒
15キロ:18分22秒
20キロ:19分04秒
24キロ:13分13秒
5キロを平均17分42秒で走る。
(計、1時間37分54秒)

 今年で19回目の〈残酷マラソン〉・久保井洋次・実行委員長が脅す。

「とんでもない特殊コースで、とにかく平地がない。平らな所は、グラウンドだけ。スタート地点も坂道道路ですからね。最後まで、上りと下りの繰りかえし。なかには、この難コースをおいしいという方もいらっしゃいますが、まずは完走をめざしてください。制限時間は4時間。でも、5時間6時間、最後までお待ちしています」

※週刊ポスト2011年7月8日号

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