国内

東電救済のための法律 “被災者救済のため”と謳って成立

 厳しい残暑が続く中、オフィスは相変わらずの節電で蒸し暑いまま。その原因を作っている東京電力や経済産業省には抜本的な改革・改善が求められる……はずなのだが、気付かないうちに彼らの既得権が温存される仕組みが、新たに生まれつつある。話題の新刊『「規制」を変えれば電気も足りる』(小学館101新書)を上梓した政策工房社長の原英史氏が、電力問題にまつわる“官僚のウソ”を暴く!

 * * *
 これまで、役所が強い力を持つ既得権者とつるんで権益を守り、そのツケを消費者や国民に回す、という類の「おバカ規制」をたびたび指摘してきた。そして、この構図が、今回の「東電問題」でも、登場した。

「規制」という範疇からは少し外れるが、今国会で「おバカな法律」が作られた。8月3日に成立した「原子力損害賠償支援機構法」である。

 この法律は、「被災者への賠償を確実にする」という謳い文句だが、実際には、「被災者救済」ではなく、「東京電力救済」のためにそのツケを国民に回す法律だ。その問題点について、筆者は成立前から様々な媒体で主張してきた。

 ポイントを簡単に紹介しておくと、まず、東京電力は巨額の賠償債務を抱え、誰が見ても債務超過状態だ。債務超過になると、普通、会社更生法などの破綻処理に進み、経営陣は職を失い、株券は紙切れになる。お金を貸していた銀行は債権カットを求められる。株主や貸し手にとっては大損害だが、それが資本主義社会のルールだ。

 ところが、政府が提出した法案は、資金を援助して「東京電力を破綻させない」というもの。資金の出所は、主に、東電を含む各電力会社の「負担金」だ。負担金も結局、電力料金の値上げにつながり、つまりは国民負担になる。

 これはおかしい。「国民で広く薄く負担しよう」という前に、本来、責任を負うべき人がいる。普通のルール通りに破綻させ、経営陣や従業員、株主、金融機関にまず負担してもらうのが筋ではないか。

 政府の案だと、国民負担の額が5兆円ほど膨らみかねない。なぜこうなったかと言えば、東京電力と、そのお仲間たち、つまり経済界、官界、政界などにまたがる“電力村”の面々が、「東京電力救済」を求めたからだ。

※SAPIO 2011年9月14日号


トピックス

前号で報じた「カラオケ大会で“おひねり営業”」以外にも…(写真/共同通信社)
中条きよし参院議員「金利60%で知人に1000万円」高利貸し 「出資法違反の疑い」との指摘も
NEWSポストセブン
昨年ドラフト1位で広島に入団した常広羽也斗(時事通信)
《痛恨の青学卒業失敗》広島ドラ1・常広羽也斗「あと1単位で留年」今後シーズンは“野球専念”も単位修得は「秋以降に」
NEWSポストセブン
中日に移籍後、金髪にした中田翔(時事通信フォト)
中田翔、中日移籍で取り戻しつつある輝き 「常に紳士たれ」の巨人とは“水と油”だったか、立浪監督胴上げの条件は?
NEWSポストセブン
二宮が大河初出演の可能性。「嵐だけはやめない」とも
【全文公開】二宮和也、『光る君へ』で「大河ドラマ初出演」の内幕 NHKに告げた「嵐だけは辞めない」
女性セブン
新たなスタートを切る大谷翔平(時事通信)
大谷翔平、好調キープで「水原事件」はすでに過去のものに? トラブルまでも“大谷のすごさ”を際立たせるための材料となりつつある現実
NEWSポストセブン
品川区で移送される若山容疑者と子役時代のプロフィル写真(HPより)
《那須焼損2遺体》大河ドラマで岡田准一と共演の若山耀人容疑者、純粋な笑顔でお茶の間を虜にした元芸能人が犯罪組織の末端となった背景
NEWSポストセブン
JR新神戸駅に着いた指定暴力団山口組の篠田建市組長(兵庫県神戸市)
【ケーキのろうそくを一息で吹き消した】六代目山口組機関紙が報じた「司忍組長82歳誕生日会」の一部始終
NEWSポストセブン
元工藤會幹部の伊藤明雄・受刑者の手記
【元工藤會幹部の獄中手記】「センター試験で9割」「東京外語大入学」の秀才はなぜ凶悪組織の“広報”になったのか
週刊ポスト
映画『アンダンテ~稲の旋律~』の完成披露試写会に出席した秋本(写真は2009年。Aflo)
秋本奈緒美、15才年下夫と別居も「すごく仲よくやっています」 夫は「もうわざわざ一緒に住むことはないかも」
女性セブン
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
女性セブン
【初回放送から38年】『あぶない刑事』が劇場版で復活 主要スタッフ次々他界で“幕引き”寸前、再出発を実現させた若手スタッフの熱意
【初回放送から38年】『あぶない刑事』が劇場版で復活 主要スタッフ次々他界で“幕引き”寸前、再出発を実現させた若手スタッフの熱意
女性セブン
【悠仁さまの大学進学】有力候補の筑波大学に“黄信号”、地元警察が警備に不安 ご本人、秋篠宮ご夫妻、県警との間で「三つ巴の戦い」
【悠仁さまの大学進学】有力候補の筑波大学に“黄信号”、地元警察が警備に不安 ご本人、秋篠宮ご夫妻、県警との間で「三つ巴の戦い」
女性セブン