国内

福島の復興ソープランド好況 東電の夜遊び禁止令で泡となる

福島県いわき市。震災から9か月、復興バブルは瞬時に去り、作業員宿舎のある温泉街、ソープランドから、賑わいの灯は消えた。いま、事故の後処理に従事する作業員たちは、どんな日常を送っているのか。作家の山藤章一郎氏が報告する。

* * *
いわき市小名浜。港から5分行くと、細い路地が交叉する住宅街に出る。唐突に、黄赤のけばけばしい看板が現れる。「○○御殿」「○○クラブ」ほか、15軒ほどのソープランドが寄りかたまっている。

裏にまわると波板トタンでかこった建物がつづく。浜から路地をまわりこんできた冬風が顔に痛い。買い物の主婦、通学の子どもたちが行き来する辻々で黒のベンチコートを着た呼び込みのニイちゃん、ネエさんが立っている。

午後2時。もうやっているのか、女はいるのかと訊いてみる。角刈りのベンチコートが顎をあげた。「うちら早朝ソープっす。女の子もいっぱいそろってるっす。どうぞどうぞ、そこ」靴を脱ぐ。

ドア口から薄汚れた赤い絨毯がつづく先にベニヤのドアがあった。開けた部屋で、黒いレースのスリップの女が膝をついていた。トンボみたいな女だった。体が骨だらけで、目がぎろっとでかい。

トンボは洗面器で泡を立てながら、ぶっきらぼうに「24歳。地元。ヒルショク」といった。ついこの前まで昼間の職業をしていたという意味である。

〈原発作業員〉がいっぱい来ると聞いて割のいいこの仕事を始めた。たしかに4月から夏過ぎまで湯本に泊まっている男たちが押し寄せてきた。みんな、聞き馴染のない九州みたいな言葉を話した。

「ヘルスもキャバクラも女の子足りない状態だったんよ。だけどさ、東電が夜遊び禁止令出して急にヒマになったの。災害救援の人も避難の人も、来ないよ。女の子もどんどんやめて、あたしみたいにここにとどまってる女は少ないよ」

――女はいっぱいいるって、さっき、店長いってましたが。

「バカね。静かっしょ。あたしもそろそろ逃げだすべかな」

それからトンボはマットに泡をひろげた。後ろ向きの細い股のすきまから紫いろのタイルが覗いた。裸と水商売の復興バブルは瞬時に去った。今はいわき市内のホテル、旅館だけが連日満員、そして〈カップ酒〉が飛ぶように売れる。

※週刊ポスト2012年1月1・6日号

関連キーワード

トピックス

【悠仁さまの大学進学】有力候補の筑波大学に“黄信号”、地元警察が警備に不安 ご本人、秋篠宮ご夫妻、県警との間で「三つ巴の戦い」
【悠仁さまの大学進学】有力候補の筑波大学に“黄信号”、地元警察が警備に不安 ご本人、秋篠宮ご夫妻、県警との間で「三つ巴の戦い」
女性セブン
どんな演技も積極的にこなす吉高由里子
吉高由里子、魅惑的なシーンが多い『光る君へ』も気合十分 クランクアップ後に結婚か、その後“長いお休み”へ
女性セブン
『教場』では木村拓哉から演技指導を受けた堀田真由
【日曜劇場に出演中】堀田真由、『教場』では木村拓哉から細かい演技指導を受ける 珍しい光景にスタッフは驚き
週刊ポスト
《視聴者は好意的な評価》『ちびまる子ちゃん』『サンモニ』『笑点』…長寿番組の交代はなぜスムーズに受け入れられたのか?成否の鍵を握る“色”
《視聴者は好意的な評価》『ちびまる子ちゃん』『サンモニ』『笑点』…長寿番組の交代はなぜスムーズに受け入れられたのか?成否の鍵を握る“色”
NEWSポストセブン
わいせつな行為をしたとして罪に問われた牛見豊被告
《恐怖の第二診察室》心の病を抱える女性の局部に繰り返し異物を挿入、弄び続けたわいせつ精神科医のトンデモ言い分 【横浜地裁で初公判】
NEWSポストセブン
バドミントンの大会に出場されていた悠仁さま(写真/宮内庁提供)
《部活動に奮闘》悠仁さま、高校のバドミントン大会にご出場 黒ジャージー、黒スニーカーのスポーティーなお姿
女性セブン
日本、メジャーで活躍した松井秀喜氏(時事通信フォト)
【水原一平騒動も対照的】松井秀喜と全く違う「大谷翔平の生き方」結婚相手・真美子さんの公開や「通訳」をめぐる大きな違い
NEWSポストセブン
足を止め、取材に答える大野
【活動休止後初!独占告白】大野智、「嵐」再始動に「必ず5人で集まって話をします」、自動車教習所通いには「免許はあともう少しかな」
女性セブン
今年1月から番組に復帰した神田正輝(事務所SNS より)
「本人が絶対話さない病状」激やせ復帰の神田正輝、『旅サラダ』番組存続の今後とスタッフが驚愕した“神田の変化”
NEWSポストセブン
各局が奪い合う演技派女優筆頭の松本まりか
『ミス・ターゲット』で地上波初主演の松本まりか メイクやスタイリングに一切の妥協なし、髪が燃えても台詞を続けるプロ根性
週刊ポスト
裏金問題を受けて辞職した宮澤博行・衆院議員
【パパ活辞職】宮澤博行議員、夜の繁華街でキャバクラ嬢に破顔 今井絵理子議員が食べた後の骨をむさぼり食う芸も
NEWSポストセブン
大谷翔平選手(時事通信フォト)と妻・真美子さん(富士通レッドウェーブ公式ブログより)
《水原一平ショック》大谷翔平は「真美子なら安心してボケられる」妻の同級生が明かした「女神様キャラ」な一面
NEWSポストセブン