国内

温泉旅館の排水はNGなのに日帰り温泉は規制外の不可思議

「源泉かけ流し」の温泉旅館が、当の環境省の規制によって経営を脅かされている重大問題があることをご存じだろうか。「水質汚濁防止法」に基づく「暫定排水基準」の更新(3年ごと)がそれである。安倍晋三内閣、福田康夫内閣で渡辺喜美・行革大臣の補佐官を務めた、政策工房社長・原英史氏が解説する。

* * *
この規制には納得のいかない点がいくつもある。まず、水質汚濁防止法では、「温泉旅館」は規制対象だが、「日帰り」の入浴施設や足湯などの多くは対象にならない。

同法施行令が規制対象を、〈旅館業の用に供する……ちゅう房施設、洗濯施設、入浴施設〉(別表第一、66の2)などと規定しているためだ。同じ源泉でも旅館からの排水だとNGで、日帰りだとOK、とはなんとも不可思議。

それだけではない。自然の温泉には、そのまま川に流れているケースがいくらでもある。例えば湯量が豊富なことで知られる草津温泉では、噴出する源泉の半分は利用されずに川に流れ込んでいる。その分を環境省が独自に浄化装置をつけているかというと、何もしないで放置しているのだ。なぜ旅館を経由して排水されるお湯だけを規制するのか? こうした疑問を環境省(水・大気環境局水環境課)に質してみた。

温泉の水質が規制対象ならば、旅館か、日帰りかは関係ないのではないか。

「規模が大きい厨房施設を持つものであれば、日帰りの入浴施設も規制対象になる。ただし、日帰り施設のすべてが規制対象になっているわけではないことは、今後の検討課題かと考えている」

昔から、温泉水は源泉から川に自然に流れ込んでいる。有害ならなぜ放置するのか。

「自然湧水から川に流れるものが対象外なのはその通り。ただ、旅館業が水濁法の対象になったのは、厨房や洗い場、洗濯など、多量の生活排水が、周辺の景勝地、自然公園の水質汚濁に関係があるのではないかという観点もある」

ならば温泉施設の生活排水を規制すればいいだけでは。

「温泉水の中に有害物質を含んでいることもある。両面からの規制が必要」

こうなるともっと根本的な疑問がある。温泉旅館に泊まる人たちは、「本来ならば川に流してはいけないほど有害」なお湯につかっていることになるが、副大臣は「体にいろんな良い効果が表われる」と温泉を奨励しているではないか。再び環境省の答え。

温泉水が有害なら入浴客に影響はないのか。

「水濁法は排水についての規制で、人が入る温泉が安全かは、水濁法の範囲外です。うちからはお答えできません」

役所の論理は相変わらずぐるぐる回りで説得力がない。

※SAPIO2012年1月18日号

関連記事

トピックス

裁判が開かれた大阪地裁(時事通信フォト)
《大阪・女児10人性的暴行》玄関から押し入り「泣いたら殺す」柳本智也被告が抱えていた「ストレスと認知の歪み」 本人は「無期懲役すら軽いと思われて当然」と懺悔
NEWSポストセブン
2019年に開始された日本の在留資格「特定技能」
韓国やオーストラリアでもなく…外国人材が円安・ニッポンで働く“現実的なワケ”
NEWSポストセブン
悠仁さまご自身は、ひとり暮らしに前向きだという。(2024年9月、東京・千代田区、JMPA)
《悠仁さま、4月から筑波大学へ進学》“毎日の車通学はさすがに無理がある”前例なき警備への負担が問題視 完成間近の新学生寮で「六畳一間の共同生活」プランが浮上
女性セブン
浩子被告の主張は
《6分52秒の戦慄動画》「摘出した眼を手のひらに乗せたり、いじったり」田村瑠奈被告がスプーンで被害者男性の眼球を…明かされた損壊の詳細【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
出入国在留管理庁の地方支分部局のひとつ、東京出入国在留管理局(東京都港区)
外国人労働者がSNSでシェアする“スムーズな退職ノウハウ”「日本人はその手のお涙頂戴に弱いから…」と解説《日本人が知らないリアル》
NEWSポストセブン
ビアンカ
《カニエ・ウェスト離婚報道》グラミー賞で超過激な“透けドレス”騒動から急展開「17歳年下妻は7億円受け取りに合意」
NEWSポストセブン
2月13日午後11時30分ころ、まだ懸命な消火活動が続いていた
茨城県常総市“枯草火災”の緊迫現場「ビニールハウスから煙がモクモクと」「なにも、わからない、なにかが燃えた」
NEWSポストセブン
二人とも帽子をかぶっていた
《仲良しツーショット撮》小山慶一郎(40)と宇野実彩子(38)が第一子妊娠発表 結婚直後“ハワイ帰りの幸せなやりとり”「いろいろ行ったよね!」
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告(中央)
「婚約指輪が見つからず…」田村瑠奈被告と両親の“乱れた生活” 寝床がない、お湯が出ない、“男性の頭部”があるため風呂に入れない…の実態【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
オンラインカジノに関する摘発が急増している
「24時間プレイする人や、1度に6000万円賭けた人も…」マルタ共和国のオンラインカジノディーラーが明かす“日本人のエグい賭け方”と“ホワイトなディーラー生活”
NEWSポストセブン
慶應義塾アメフト部(インスタグラムより)
《またも未成年飲酒発覚》慶大アメフト部、声明発表前に行われた“緊急ミーティング”の概要「個人の問題」「発表するつもりはない」方針から一転
NEWSポストセブン
性的パーティーを主催していたと見られるコムズ被告(Getty Images)
《裸でビリヤード台の上に乗せられ、両腕を後ろで縛られ…》“ディディ事件”の被害女性が勇気の告発、おぞましい暴行の一部始終「あまりの激しさにテーブルの上で吐き出して…」
NEWSポストセブン