みうらじゅん氏は、1958年京都生まれ。イラストレーター、エッセイスト、ミュージシャン、ラジオDJなど幅広いジャンルで活躍。1997年「マイ ブーム」で流行語大賞受賞。仏教への造詣が深く、『見仏記』『マイ仏教』などの著書もある同氏が、火葬について考察する。
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無煙無臭の火葬炉とは焼肉屋さんの無煙グリルとどう違うのか?
「煙というのは不完全燃焼で発生するもんなんです。みうらさんはタバコ吸いますか?」あ、吸いますが……。と答えるや、火葬炉専門メーカー富士建設工業の管理本部長は突然タバコに火を付けた。いきなり一服タイムか?
「ちょっとここで実演しましょう。タバコの先から煙が出てますよね」。嫌煙派の人が一番嫌がる副流煙というヤツだ。
「煙は不完全燃焼で出てるんです。酸素は空気中に21%。完全燃焼のために酸素は十分にあるんですが、熱が足りないので、ここに……」
そういうと、タバコの先端にライターの火をおもむろに近づける本部長。すると!! さっきまで立ちのぼっていたタバコの紫煙がスッと消えたのだ。
「これがウチの会社が開発した再燃焼炉の原理です。煙も酸素と熱で完全燃焼させてあげれば消えるんです」
まさしくオ~ッ! である。焼肉屋とはまったく違う仕組みだった。考えてみりゃあれは煙を吸い込むワケだから、結局どこかに出すことになる。これは根本的に煙を出さない、作らない仕組みだった。
そして今日の取材とは関係ないことだが密かに思った。このライターでのタバコの煙消しは、間違いなくキャバクラでも使える! と。
「昭和47年に開発した技術です」。そういえば、最近の火葬場って煙が出てないですもんね。昔は、おじいちゃんとかが「煙で天国に登っていった」なんていったもんだけど。
「映画のロケなんかで、火葬場を使いたいっていう話がよくあるそうなんですが、煙がないから絵にならないんでダメになることが最近は多いらしいですよ」
※週刊ポスト2012年6月15日号