国際情報

中国人記者 大雨被災原稿差し替えられブログで不満ぶちまけ

 中国の官制報道は、何も政治経済や外交のニュースに限ったものではない。ソーシャルメディアの普及は、メディア最前線での不満をかつてないほどに高めている。中国に詳しいジャーナリスト・富坂聰氏が指摘する。

 * * *
「7人の同僚と2000㎞を走り回り20名以上の被災者家族を取材した。朝になってその自分たちの原稿がどうなったかを知った。オレがいま言いたいことはただ一つ。〝ファック・ユー〟だ!」——。

 自身の微博(ミニブログ)にこんな過激な書き込みをしたのは、中国でも過激な報道をすることで知られる『南方週末』の張育群記者だ。激しい罵倒の対象は、なんと北京市政府だった。問題の背景を北京の都市報の記者が語る。

「実は『南方週末』が用意していた北京の大雨に関する原稿が、8ページにわたって差し替えられてしまったのです。それも彼らが取材した被害状況や25人の死亡者の報道をすべて削り、災害救助に当って殉職した5名の政府職員の物語を載せるように要求されたようなのです。この強引な介入に怒った記者たちが、次々に自らの微博で不満をぶちまけたため、大きな話題となったのです」

 7月末に北京を襲った大雨によって首都機能が奪われる被害を受けた北京は、時代に逆行するかのような隠蔽体質をさらけ出した。

 その最たるものが被害者数の誤魔化しだった。当初37人と発表された死者数が、後に70人を超えていたことも発覚。かつてのSARS騒動を思い出させるような北京市の旧態依然とした対応に対し、ネット世論からも激しい怒りの声が上がり、やはり行政に対する民意の監視が厳しくなってきていることを感じさせた。

 だが、何といっても興味深いのは官制メディアと言われ続ける中国のメディアがかくも激しい批判の言葉を公然と浴びせかけるという現実である。

 以前の原稿で、ソーシャルメディアが果たす役割について触れたが、今回の事件はまさにその変化を裏付ける現象であった。というのも媒体に圧力をかけて紙面を差し替えさせることができたとしても、記者たちが怒ってその気持ちをネットを通じて発表することは止められない。そして、こうした圧力に対する告発は、必ず民意の大きな支持を得られるため、当局には分の悪い結果を生じさせるという事実がきちんと認識された。

 このベクトルの先には中国が今後向かうべき方向がはっきりと示されているのだ。


関連キーワード

関連記事

トピックス

足を止め、取材に答える大野
【活動休止後初!独占告白】大野智、「嵐」再始動に「必ず5人で集まって話をします」、自動車教習所通いには「免許はあともう少しかな」
女性セブン
大谷翔平選手(時事通信フォト)と妻・真美子さん(富士通レッドウェーブ公式ブログより)
《水原一平ショック》大谷翔平は「真美子なら安心してボケられる」妻の同級生が明かした「女神様キャラ」な一面
NEWSポストセブン
裏金問題を受けて辞職した宮澤博行・衆院議員
【パパ活辞職】宮澤博行議員、夜の繁華街でキャバクラ嬢に破顔 今井絵理子議員が食べた後の骨をむさぼり食う芸も
NEWSポストセブン
大谷翔平の伝記絵本から水谷一平氏が消えた(写真/Aflo)
《大谷翔平の伝記絵本》水原一平容疑者の姿が消失、出版社は「協議のうえ修正」 大谷はトラブル再発防止のため“側近再編”を検討中
女性セブン
被害者の宝島龍太郎さん。上野で飲食店などを経営していた
《那須・2遺体》被害者は中国人オーナーが爆増した上野の繁華街で有名人「監禁や暴力は日常」「悪口がトラブルのもと」トラブル相次ぐ上野エリアの今
NEWSポストセブン
海外向けビジネスでは契約書とにらめっこの日々だという
フジ元アナ・秋元優里氏、竹林騒動から6年を経て再婚 現在はビジネス推進局で海外担当、お相手は総合商社の幹部クラス
女性セブン
運送会社社長の大川さんを殺害した内田洋輔被告
【埼玉・会社社長メッタ刺し事件】「骨折していたのに何度も…」被害者の親友が語った29歳容疑者の事件後の“不可解な動き”
NEWSポストセブン
二宮和也が『光る君へ』で大河ドラマ初出演へ
《独立後相次ぐオファー》二宮和也が『光る君へ』で大河ドラマ初出演へ 「終盤に出てくる重要な役」か
女性セブン
真剣交際していることがわかった斉藤ちはると姫野和樹(各写真は本人のインスタグラムより)
《匂わせインスタ連続投稿》テレ朝・斎藤ちはるアナ、“姫野和樹となら世間に知られてもいい”の真剣愛「彼のレクサス運転」「お揃いヴィトンのブレスレット」
NEWSポストセブン
破局した大倉忠義と広瀬アリス
《スクープ》広瀬アリスと大倉忠義が破局!2年交際も「仕事が順調すぎて」すれ違い、アリスはすでに引っ越し
女性セブン
交際中のテレ朝斎藤アナとラグビー日本代表姫野選手
《名古屋お泊りデート写真》テレ朝・斎藤ちはるアナが乗り込んだラグビー姫野和樹の愛車助手席「無防備なジャージ姿のお忍び愛」
NEWSポストセブン
大谷の妻・真美子さん(写真:西村尚己/アフロスポーツ)と水原一平容疑者(時事通信)
《水原一平ショックの影響》大谷翔平 真美子さんのポニーテール観戦で見えた「私も一緒に戦うという覚悟」と夫婦の結束
NEWSポストセブン