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五輪談義 「メダル数」より「負けた選手」に言及するのが美しい

 日本史上屈指の成績を残したロンドン五輪が閉幕した。茶の間や会社でさぞや五輪話に花が咲くだろう。だがそこでやっかいなのが、「五輪は金でないと意味が無いよ」と蘊蓄を傾ける金メダルおやじ。 「金メダル」病をいかにかわしつつ、五輪話を楽しむか。大人コラムニストの石原壮一郎氏が「五輪を振り返りつつ、大人の懐の深さを見せつけよう」と提案する。

 * * *
 日本中を寝不足にさせたロンドン五輪も、8月12日(日本時間13日早朝)に閉会式を迎えました。この原稿を書いている14日目の終了時点(10日朝)で、日本は金メダル5個、銀メダル14個、銅メダル14個と合計33個のメダルを獲得しています。

 これは1984年のロスアンゼルス大会の32個を抜いて、現時点で史上2番目。まだメダルを有力視されている競技はいくつもあるので、きっと最終的には、アテネ大会の37個を抜いたに違いありません。抜いていなかったとしても、まあそれはそれで大健闘です。

 今週あたりは、まだまだ余韻が残っていて、何かと五輪が話題にのぼるはず。せっかくですから、ひと味違う振り返り方で大人の懐の深さを見せ付けましょう。

 総メダル数は史上最高を記録した(フライングによる推定)とはいえ、金メダルの数ではアテネ大会や東京大会の16個には遠く及びません。お盆で久しぶりに会った親戚のじいさんや、人望のないオヤジ上司あたりが「やっぱり金メダルじゃなきゃ値打ちがないよ」などと、数年前にどっかの都知事が口にしたみたいな不遜な暴言を吐く可能性はあります。「だったらお前が獲ってみろよ」と言い返したいのは山々ですが、そうもいきません。

 ここは落ち着いた口調で「いやいや、今回は幅広い競技でメダルを獲っているところがスゴイですよ。本当の意味で日本のスポーツの水準が上がってるんじゃないんですか」と返して、単純な数比べしか目に入っていない浅はかな人たちに差をつけ、周囲の賞賛のまなざしを集めましょう。あるいは「銀は『金より良い』って書くし、銅は『金と同じ』って書くんですよ」という前向きな解釈も、けっこう言い古されている感はありますが、親戚のおじさんおばさんあたりは「ほお、いいこと言うなあ」と感心してくれるでしょう。

 知的でグローバルで一般大衆とはひと味違う自分を演出したいなら、みんなが日本人選手の活躍について楽しく話を弾ませているところで、あえて陸上のウサイン・ボルト(ジャマイカ)や競泳のマイケル・フェルプス(アメリカ)のすごさを熱く語るのが、お手軽で確実。ちなみに、同僚がそういういやらしい行動に出たら、感心した様子で「さすが世界に目を向けてるね~」と言ってあげると、満足して早めに話を切り上げてくれます。

 メダルを獲った日本人選手やチームについてひとしきり話したあとは、「でもまあ、メダルを獲った獲らないじゃなくて、どの選手もがんばったし、むしろ負けた選手にグッと来たよね」と美しくまとめましょう。観戦中も振り返るときも、わかりやすい構図で素直に感動を味わわせてもらうのが、大人としての成熟した五輪の愉しみ方です。

 さあ、自分や周囲の記憶に新しいうちに、折に触れて五輪を振り返りましょう。じつはそんなに熱心に応援していなかったとしても、絵にかいたようなにわかスポーツファンだったとしても、とにかく五輪の話題に参加することに意義があります!

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