先月、ソフトバンクが米携帯電話3位のスプリント・ネクステルの買収を発表し、世間を驚かせた。ソフトバンクの動向に限らず、携帯電話事業そのものが過渡期を迎えていると語るのは大前研一氏だ。以下、氏の解説である。
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今やスマホユーザーの間では、Voip(Voice over Internet Protocol/音声データをインターネットなどを使って送受信する技術)による無料通話アプリの「Skype(スカイプ)」「LINE(ライン)」「Viber(バイバー)」などが大人気で、利用者が急速に拡大している。LTE(高速通信規格)が普及すればiPhone5のようなスマホをルーターとして全世界でWi‐Fiを“持ち歩く”ことができる。
携帯電話会社は電話ではなく通信の“土管”となるので、現在4000円台の攻防となっている携帯電話のARPU(Average Revenue Per User/1契約当たりの月間売上高)は、おそらく「使いっぱなし、話しっぱなしで月々2000円」くらいになってしまうだろう。それと同時に、有線か無線か、固定か携帯か、市内か市外か、国際通話か国内通話か、通話か通信か、といった区別は全部なくなっていく。
アップルのような会社はアップストアなどを通じて小売業になっているので、携帯電話会社の土管化はむしろ歓迎だろう。つまり、先進国においてはLTEなどの巨大投資をすればするほど土管化し、客単価が下がっていく、という趨勢にあると見なくてはならない。この戦いでは、業界トップが断然有利となる。
※週刊ポスト2012年11月23日号