国内

ラブドールの低価格化で生涯童貞で過ごす人増えると森永卓郎

 所得格差は、より残酷な「セックス格差」を生む。労働市場の不公正が改善されないまま性の市場だけが完全な自由競争となり、若者の間では「3ケタ男」「4ケタ男」などという呼称が飛び交う一方、「生涯童貞」が増えていると、経済アナリストの森永卓郎氏が警鐘を鳴らす。

 * * *
 終身雇用制のもと働くことができた男性は、モテなくても経済的な安定があったため、結婚を前提とすれば最低でも1人の女性とはセックスができた。ところが、非正規雇用の若者が増えたいまでは、結婚できない若い男性が増え、上の世代とのセックス格差が生まれた。

 そして、同世代間の格差もどんどん広がっている。「性の配給制度」がなくなり、若い男性にとって性は完全な自由市場、弱肉強食マーケットになった。

 すると、お金があり、ルックスもいいごく一部の男性が多数の女性とセックスできるようになり、何百人、あるいは1000人以上の相手と交渉を持ったという意味の「3ケタ男」「4ケタ男」といった言葉までまことしやかに語られる一方、一人の女性にもありつけないセックス弱者が増えた。セックスブルジョワジーとセックスプロレタリアートへの2極分化だ。

 しかも今の若者は、モテなくてもあまり風俗に行かないし、行けない。先輩が後輩を風俗に連れていくなどという話はほとんどなくなり、非正規雇用だとそもそも金銭的余裕もない。そのため童貞率は上昇傾向にあり、20~24歳の未婚男性では40.5%、25~29歳では25.1%、30~34歳ではさらに増えて26.1%にも上る(国立社会保障・人口問題研究所『結婚と出産に関する全国調査』2010年)。

 彼らは性欲がないのではなく、アニメや恋愛シミュレーションゲームなどのキャラクターを使って自慰をしている人が少なくない。そして、一度「解脱」(ヴァーチャルな世界である「2次元の世界」に完全にハマってしまうこと)すると二度と抜け出せないという。「2次元の世界」は、生身の女性のようにわがままを言ったり自分を裏切ったりせず、心地いいからだ。

 去年、ダッチワイフメーカーのオリエント工業から「リアルラブドール」というシリーズが発売された。1mほど離れて見ると、本物の女性と区別がつかないくらいリアルにできている。「2次元の世界」が現実の「3次元」に進化しつつあることを象徴する商品だ。今はまだ70万円近くと高額だが、将来、価格が下がって一般の若者が手に入れるようになったら、ますます「解脱」して生涯童貞で過ごす人は増えるに違いない。

※SAPIO2013年2月号


関連キーワード

関連記事

トピックス

水原一平氏のSNS周りでは1人の少女に注目が集まる(時事通信フォト)
水原一平氏とインフルエンサー少女 “副業のアンバサダー”が「ベンチ入り」「大谷翔平のホームランボールをゲット」の謎、SNS投稿は削除済
週刊ポスト
解散を発表した尼神インター(時事通信フォト)
《尼神インター解散の背景》「時間の問題だった」20キロ減ダイエットで“美容”に心酔の誠子、お笑いに熱心な渚との“埋まらなかった溝”
NEWSポストセブン
水原一平氏はカモにされていたとも(写真/共同通信社)
《胴元にとってカモだった水原一平氏》違法賭博問題、大谷翔平への懸念は「偽証」の罪に問われるケース“最高で5年の連邦刑務所行き”
女性セブン
富田靖子
富田靖子、ダンサー夫との離婚を発表 3年も隠していた背景にあったのは「母親役のイメージ」影響への不安か
女性セブン
尊富士
新入幕優勝・尊富士の伊勢ヶ濱部屋に元横綱・白鵬が転籍 照ノ富士との因縁ほか複雑すぎる人間関係トラブルの懸念
週刊ポスト
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
女性セブン
水原一平氏と大谷翔平(時事通信フォト)
「学歴詐称」疑惑、「怪しげな副業」情報も浮上…違法賭博の水原一平氏“ウソと流浪の経歴” 現在は「妻と一緒に姿を消した」
女性セブン
『志村けんのだいじょうぶだぁ』に出演していた松本典子(左・オフィシャルHPより)、志村けん(右・時事通信フォト)
《松本典子が芸能界復帰》志村けんさんへの感謝と後悔を語る “変顔コント”でファン離れも「あのとき断っていたらアイドルも続いていなかった」
NEWSポストセブン
水原氏の騒動発覚直前のタイミングの大谷と結婚相手・真美子さんの姿をキャッチ
【発覚直前の姿】結婚相手・真美子さんは大谷翔平のもとに駆け寄って…水原一平氏解雇騒動前、大谷夫妻の神対応
NEWSポストセブン
違法賭博に関与したと報じられた水原一平氏
《大谷翔平が声明》水原一平氏「ギリギリの生活」で模索していた“ドッグフードビジネス” 現在は紹介文を変更
NEWSポストセブン
カンニング竹山、前を向くきっかけとなった木梨憲武の助言「すべてを遊べ、仕事も遊びにするんだ」
カンニング竹山、前を向くきっかけとなった木梨憲武の助言「すべてを遊べ、仕事も遊びにするんだ」
女性セブン
大ヒットしたスラムダンク劇場版。10-FEET(左からKOUICHI、TAKUMA、NAOKI)の「第ゼロ感」も知らない人はいないほど大ヒット
《緊迫の紅白歌合戦》スラダン主題歌『10-FEET』の「中指を立てるパフォーマンス」にNHKが“絶対にするなよ”と念押しの理由
NEWSポストセブン