ビジネス

「黒田バズーカ」日銀と銀行の間で金が行き来するだけと大前氏

 安倍晋三首相の「アベノミクス」だけでなく、日銀総裁に就任した黒田東彦氏による「黒田バズーカ」で経済は上向きになってきたといわれている。ところが、好転しているようにみえる今の状況は、見せかけだけだと大前研一氏はいう。

 * * *
 安倍晋三首相の経済政策「アベノミクス」と黒田東彦・日銀総裁の異次元金融緩和策「黒田バズーカ」で円安・株高基調が続き、デパートなどでは高級品の売れ行きが伸びているという。

 いったい今、日本経済に何が起こっているのか? 実は、何も起こっていない。黒田日銀がやっているのは国債の「買いオペ」(※中央銀行が市場、主として金融機関から国債を買い入れ、市場に出回る通貨の量を増やすこと)である。

 銀行など民間預金取扱機関はこれまで資金の運用先がなくて日本国債を買い、その保有残高は2012年末で約300兆円に膨らんでいた。それを今度は日銀が買って銀行にキャッシュが戻っていくわけで、要は日銀と銀行との間でお金が行ったり来たりするだけの話だ。だが、もともとキャッシュで持っていたくないから少しは利回りのある国債を買っていた銀行は、今後さらに資金の運用先に窮することになる。

 本来なら企業に貸し出せばよいのだが、今回の金融緩和によって長期金利が低下していることもあって、日産自動車やNTT、セブン&アイ・ホールディングスなどの大企業は銀行から借りるのではなく、社債発行による資金調達を検討していると報じられている(日本経済新聞/4月9日付)。

 また、中堅企業の多くは今や手持ち資金でしか投資をしない。零細企業は3月末のモラトリアム法(中小企業金融円滑化法)終了後も、政府系金融機関の「経営支援型セーフティネット貸付」などの公的な手厚い救済措置によって存続しているが、これはゾンビ企業を延命させるための“飛ばし”であり、どうせ大半は回収できずに焦げ付くことは明らかだ。

 本来、金利が安ければ企業は設備投資をするはずだが、この20年間、日本企業は設備投資の大半を海外で行なっており、国内では老朽設備の交換や改修が中心になるので、資金需要はさほど大きくならないだろう。つまり、企業の貸出先は極めて少ないのである。

 このため、お金の行き場所が株式市場しかなくなって株価が上がり、それに便乗しようとして世界中の金融機関や投資家が日本株を買っているのが現状だ。売っているのは個人で、それで儲けたカネで高級ブランドのバッグや時計などを買っている。株価が上がったことで、凍てついていた消費者の心理が少し緩んだにすぎない。要するに、日本の実需が拡大して実体経済が上向いているという証拠は、どこにもないのである。

※週刊ポスト2013年5月17日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

真美子さんのバッグに付けられていたマスコットが話題に(左・中央/時事通信フォト、右・Instagramより)
《大谷翔平の隣で真美子さんが“推し活”か》バッグにぶら下がっていたのは「BTS・Vの大きなぬいぐるみ」か…夫は「3か月前にツーショット」
NEWSポストセブン
山本由伸選手とモデルのNiki(共同通信/Instagramより)
《いきなりテキーラ》サンタコスにバニーガール…イケイケ“港区女子”Nikiが直近で明かしていた恋愛観「成果が伴っている人がいい」【ドジャース・山本由伸と交際継続か】
NEWSポストセブン
11歳年上の交際相手に殺害されたとされるチャンタール・バダルさん(21)。千葉県の工場でアルバイトをしていた
【ホテルで11歳年下の彼を刺殺】「事件1か月前に『同棲しようと思っているの』と嬉しそうに…」浅香真美容疑者(32)がはしゃいでいた「ネパール人青年との交際」を同僚女性が証言
NEWSポストセブン
Mrs. GREEN APPLEのギター・若井滉斗とNiziUのNINAが熱愛関係であることが報じられた(Xより/時事通信フォト)
《ミセス事務所がグラドルとの二股を否定》NiziU・NINAがミセス・若井の高級マンションへ“足取り軽く”消えた夜の一部始終、各社取材班が集結した裏に「関係者らのNINAへの心配」
NEWSポストセブン
山本由伸(右)の隣を歩く"新恋人”のNiki(TikTokより)
《チラ映り》ドジャース・山本由伸は“大親友”の元カレ…Niki「実直な男性に惹かれるように」直近で起きていた恋愛観の変化【交際継続か】
NEWSポストセブン
保護者責任遺棄の疑いで北島遥生容疑者(23)と内縁の妻・エリカ容疑者(22)ら夫妻が逮捕された(Instagramより)
《市営住宅で0歳児らを7時間置き去り》「『お前のせいだろ!』と男の人の怒号が…」“首タトゥー男”北島遥生容疑者と妻・エリカ容疑者が住んでいた“恐怖の部屋”、住民が通報
NEWSポストセブン
モデル・Nikiと山本由伸投手(Instagram/共同通信社)
《交際説のモデル・Nikiと歩く“地元の金髪センパイ”の正体》山本由伸「31億円豪邸」購入のサポートも…“470億円契約の男”を管理する「幼馴染マネージャー」とは
NEWSポストセブン
米大リーグ、ワールドシリーズ2連覇を達成したドジャースの優勝パレードに参加した大谷翔平と真美子さん(共同通信社)
《真美子さんが“旧型スマホ2台持ち”で参加》大谷翔平が見せた妻との“パレード密着スマイル”、「家族とのささやかな幸せ」を支える“確固たる庶民感覚”
NEWSポストセブン
モデル・Nikiと山本由伸投手(Instagram/共同通信社)
「港区女子がいつの間にか…」Nikiが親密だった“別のタレント” ドジャース・山本由伸の隣に立つ「テラハ美女」の華麗なる元カレ遍歴
NEWSポストセブン
高校時代の安福容疑者と、かつて警察が公開した似顔絵
《事件後の安福久美子容疑者の素顔…隣人が証言》「ちょっと不思議な家族だった」「『娘さん綺麗ですね』と羨ましそうに…」犯行を隠し続けた“普通の生活”にあった不可解な点
デート動画が話題になったドジャース・山本由伸とモデルの丹波仁希(TikTokより)
《熱愛説のモデル・Nikiは「日本に全然帰ってこない…」》山本由伸が購入していた“31億円の広すぎる豪邸”、「私はニッキー!」インスタでは「海外での水着姿」を度々披露
NEWSポストセブン
優勝パレードには真美子さんも参加(時事通信フォト/共同通信社)
《頬を寄せ合い密着ツーショット》大谷翔平と真美子さんの“公開イチャイチャ”に「癒やされるわ~」ときめくファン、スキンシップで「意味がわからない」と驚かせた過去も
NEWSポストセブン