芸能

中村敦夫「キャスターも政治家の街頭演説も演技技術を扱う」

 1972年のテレビ時代劇『木枯し紋次郎』で主役に抜擢され、俳優として世に出た中村敦夫は、その後キャスターに転身、さらに後には参議院議員にもなった。なぜ、さまざまな顔を持つに至ったのか振り返る中村の言葉を、映画史・時代劇研究家の春日太一氏が綴る。

 * * *
 中村敦夫がこれまで演じてきた役柄は代表作『木枯し紋次郎』をはじめ、体制のカウンターに身をおく人物が多い。それは自身へのイメージもまた同じで、俳優、キャスター、政治家として、体制に鋭い目線を投げかけてきた。

 中村は1984年、情報番組『地球発22時』(毎日放送)でニュースキャスターに転身している。ニュース原稿を読むだけの「アナウンサー」ではない、自分で取材をして自分の意見を述べる「キャスター」の草分け的な存在となった。

「僕はマニュアル的に同じことを続けるのが嫌なんです。驚きのあるものを提供できるのが、僕らサービス業だと思う。『安全だからやる』というのは、せっかく時間を割いてくれるお客さんに失礼な話ですよ。

 当時は俳優として一応は全国区になって主演番組もやって、そうすると自分自身がよどんでいくのが分かるんですよ。パターンばかり要求されますから。それで『死ぬまでずっとこれを続けるのか』と思うとゾッとしちゃうんです。生活保証はあっても、人生としては面白くない。それで、脱出したくなるんです。当時は歌とドラマから情報番組へテレビの主流が移る時代だったので、今度はその先端を走らせてもらいました。

 ところで、人間というのは誰もが皆、演技者だと僕は思います。社会を形成するためには、誰にでも役割がある。それを果たすために、演技をしているんです。社会から台本を与えられてね。『職業的身振り』と呼んでいますが、その職業にふさわしい言葉遣いとか、身振りとか、雰囲気を考えて演じて毎日を過ごしているわけです。

 キャスターをする時も服の選び方とか『キャスターを演じる』部分はありました。政治家となると、ほとんど演技ですよ。街頭演説でも、ここは声を大きくする、ここは笑わせる、ここは相手を攻撃する……と細工しなければ、訴求力は生まれません」

●春日太一(かすが・たいち)/1977年、東京都生まれ。映画史・時代劇研究家。著書に『天才 勝新太郎』(文春新書)、『仲代達矢が語る日本映画黄金時代』(PHP新書)ほか。

※中村敦夫氏は朗読劇『山頭火物語』を8月30日~9月1日(日比谷図書文化館 地下コンベンション・ホール)、11月2日・3日(岩波書店アネックスビル3F・岩波書店セミナールーム)で公演予定。入場は予約制。

※週刊ポスト2013年8月16・23日号

関連キーワード

トピックス

足を止め、取材に答える大野
【活動休止後初!独占告白】大野智、「嵐」再始動に「必ず5人で集まって話をします」、自動車教習所通いには「免許はあともう少しかな」
女性セブン
大谷翔平選手(時事通信フォト)と妻・真美子さん(富士通レッドウェーブ公式ブログより)
《水原一平ショック》大谷翔平は「真美子なら安心してボケられる」妻の同級生が明かした「女神様キャラ」な一面
NEWSポストセブン
裏金問題を受けて辞職した宮澤博行・衆院議員
【パパ活辞職】宮澤博行議員、夜の繁華街でキャバクラ嬢に破顔 今井絵理子議員が食べた後の骨をむさぼり食う芸も
NEWSポストセブン
大谷翔平の伝記絵本から水谷一平氏が消えた(写真/Aflo)
《大谷翔平の伝記絵本》水原一平容疑者の姿が消失、出版社は「協議のうえ修正」 大谷はトラブル再発防止のため“側近再編”を検討中
女性セブン
被害者の宝島龍太郎さん。上野で飲食店などを経営していた
《那須・2遺体》被害者は中国人オーナーが爆増した上野の繁華街で有名人「監禁や暴力は日常」「悪口がトラブルのもと」トラブル相次ぐ上野エリアの今
NEWSポストセブン
海外向けビジネスでは契約書とにらめっこの日々だという
フジ元アナ・秋元優里氏、竹林騒動から6年を経て再婚 現在はビジネス推進局で海外担当、お相手は総合商社の幹部クラス
女性セブン
運送会社社長の大川さんを殺害した内田洋輔被告
【埼玉・会社社長メッタ刺し事件】「骨折していたのに何度も…」被害者の親友が語った29歳容疑者の事件後の“不可解な動き”
NEWSポストセブン
二宮和也が『光る君へ』で大河ドラマ初出演へ
《独立後相次ぐオファー》二宮和也が『光る君へ』で大河ドラマ初出演へ 「終盤に出てくる重要な役」か
女性セブン
真剣交際していることがわかった斉藤ちはると姫野和樹(各写真は本人のインスタグラムより)
《匂わせインスタ連続投稿》テレ朝・斎藤ちはるアナ、“姫野和樹となら世間に知られてもいい”の真剣愛「彼のレクサス運転」「お揃いヴィトンのブレスレット」
NEWSポストセブン
破局した大倉忠義と広瀬アリス
《スクープ》広瀬アリスと大倉忠義が破局!2年交際も「仕事が順調すぎて」すれ違い、アリスはすでに引っ越し
女性セブン
交際中のテレ朝斎藤アナとラグビー日本代表姫野選手
《名古屋お泊りデート写真》テレ朝・斎藤ちはるアナが乗り込んだラグビー姫野和樹の愛車助手席「無防備なジャージ姿のお忍び愛」
NEWSポストセブン
大谷の妻・真美子さん(写真:西村尚己/アフロスポーツ)と水原一平容疑者(時事通信)
《水原一平ショックの影響》大谷翔平 真美子さんのポニーテール観戦で見えた「私も一緒に戦うという覚悟」と夫婦の結束
NEWSポストセブン