今国会でカジノ基本法案が提出される動きを受け、関連企業や自治体がにわかに色めき立っている。では、日本にできるカジノはどのようなものになるのか。
日本のカジノ解禁でモデルとして想定されているのが、シンガポールである。理由は、この国が2009年のカジノ解禁によって、著しい経済効果を上げているからだ。
カジノの売り上げだけで年間5000億円規模に上り、2009年に約9576億円だった観光収入も、2012年には1兆7408億円とほぼ倍増している。
シンガポールカジノの特徴とは、統合型リゾート「IR」(インテグレート・リゾート)である。その代表が、シンガポールでカジノ解禁後の2010年2月14日にオープンしたセントーサ島の大型IR「リゾートワールドセントーサ」だ。
3年の工期と4000億円以上をかけて建設された49ヘクタール(東京ディズニーランドとほぼ同じ)という広大な敷地のなかには、「ユニバーサル・スタジオ・シンガポール」やサーカスが鑑賞できるシアターがあるほか、高級ブランドのショッピングモールも整備。カジノで勝ったら、その足でブランドショッピングができるという流れになっている。
そんな圧倒的なスケールの巨大リゾートが成立する理由はやはりカジノにある。
「リゾートワールドセントーサにおけるカジノの占有面積は全敷地の約3%(1万5000平方メートル)に過ぎませんが、この3%で全体収益の約8割を稼ぎ出している。つまり、儲かっているカジノが他の施設を補填して利益を出している」(カジノ関連企業に詳しい日本大学経済学部専任講師・佐々木一彰氏)
これまではなかなか実現が難しかった超巨大リゾートも、カジノというエンジンがあることで維持できるというわけだ。日本のカジノリゾートの狙いもここにあり、2007年に国交省が作成した資料では、「マカオに惹かれるのは真のギャンブラー。シンガポールが求めている観光客はビジネスやファミリー客。カジノは一要素でしかない。期待している客層が違う」として、ギャンブルカジノよりも親しみやすいファミリーカジノを想定している。
※週刊ポスト2013年11月29日号