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インターネットは一億総モンスター化させる恐怖を秘めている

 昨今、テレビCMなどに視聴者からのクレームが相次ぎ、放送内容を見直すケースも増えている。悪質なクレーマーの場合、警察沙汰になることも十分考えられるが、実際にクレーマーの正体が分かると、驚くようなケースもあるという。新刊『理不尽な人に克つ方法』(小学館新書)を上梓したばかりの元刑事でクレーム対応のプロである援川聡(えんかわ・さとる)氏が、自身の元にもたらされたクレームの実例を紹介する。

 * * *
 新年度を間近に控えた3月、ある製菓メーカーの顧客サービス室に、1通のメールが届きました。「Y市に住んでいるSだ。買ったお菓子の賞味期限が切れていた。食べてしまったので誠意を見せろ!」──。

 私は、担当者からこの恐喝まがいのメールに対して、どう対応すべきか相談を受けました。まずは、事実確認をしなければなりません。早速、お詫びの言葉とともに、「詳しい事情を聞かせてください」とそのメールに返信しました。すると間を置かず、たどたどしい文面のメールが届きました。

「ひどい損害を受けたので、3万円よこせ! なんとかしなければ、インターネットで商品や企業の悪口を流すし、TVや週刊誌、マスコミや消費者庁に言っちゃうぞ」

 どうも、通常の恐喝とは違います。プロなら、こんな文章を書きません。「3万円」という具体的な金額を提示したり、「悪口を流す」と脅迫めいた台詞を使ったりすれば、恐喝罪になりますので、警察が動き出す可能性が出てきてしまうのです。悪質な常連クレーマーなら、法ギリギリのところで攻めてきます。

 そこで私は、賞味期限切れの商品を販売した事実がないことを確認してから、警察に通報しました。数日後、すぐに真相が判明しました。なんとメールの送り主は12歳の少年だったのです。この少年は、企業の不祥事や消費者庁の話題が連日報道されていることを知り、脅迫メールを思いついたのでした。

「なにか文句を言えばお金をくれる。ほしいゲームが買える」と白状したそうです。逮捕できる年齢ではなかったので、補導と保護者への指導で解決しました。

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