大切な人との別れは急に訪れるもの。しかし、残された者は、その現実と向き合って、しっかり前に進んでいくしかない。
自身も13年前に事故で夫を亡くした心理カウンセラーの黒田めぐみさん(46才)に、夫の死を乗り越えるための話を聞いた。
「夫の死──それはいつ終わるかわからない悲しみです。だから“頑張って、立ち直って”という気は私にはありません。でも、大きな穴を埋めようと、自分を残していった夫を恨んだり、無力感に苛まれ続けていてはつらいばかり。自分が逃げる場所も作っておいてほしいんです」
それには“逃げる勇気”を持ってほしいと話す。次のステップに進むために、悲しみに真っ向から向き合うことも大切。でも、悲しみは自分の速度でゆっくりゆっくり受けとめていけばいい。その際、自分が好きだった旅行に出かけたり、趣味のコーラスを始めるなど、少しでも気が休まり、他のことを考えられる時間を大切にしてほしいという。
「そんな場所を作ることから始めて、次は人に話を聞いてもらってください。人に話すことは、自分の気持ちを“手放すこと”。自分の中にある後悔や無力さを手放して、自分自身の頑張りをねぎらってほしい」
そうやって夫の死を乗り越えた黒田さんは、今では生前よりはるかに夫を大切に思えると話す。
「夫を亡くしたことは私にとってつらい経験でしたが、今は心から感謝もしています。私は夫の死をきっかけに劇的に変わりました。『ご飯がおいしい』『今日はこんなことがあった』という何気ない日常を、幸せな大切な時間だと思うことができる。
今の仕事だって、OLだったころとは比べものにならないぐらい好きで楽しいんです。夫は私に、人の死とは何か、生とは何か、人の心とは何かを考えるきっかけと天職に出合わせてくれました。人としての深みが増したといったらおおげさかもしれませんが、でも、私は今の自分が大好きです。
進み方は人それぞれ。ゆっくりでいい。無理に笑わなくても、泣いて過ごす日々があってもいい。でも、いつか夫の死を乗り越えて、夫にありがとうといえる、そうやって夫の死をあなたの今に生かす人生にできれば、きっとそのとき、夫はあなたの中で生き続けられると思うんです」
※女性セブン2014年2月27日号