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福島 園児の被曝避けるため地面に座るのを禁止する保育園も

 福島に住む人々は今も日々、原発事故後の現実と向き合っている。福島県南相馬市にある保育園では朝昼晩、クエン酸を溶かした水で雑巾を洗って床を拭き、遊び盛りの園児の外遊びは一日30分に制限している。ある保育園の園長が語る。

「私たちの保育園の園舎に損壊はなく、原発事故後に訪問者から『何も壊れなくてよかったですね』と言われたことがあります。でも放射性物質は目に見えないけど、何十年もこの土地に残り続けます。

 私たちも実際に汚染されるまで、放射性物質の本当の恐ろしさを深刻に受けとめていませんでしたが、この閉塞感や圧迫感は本当に恐ろしいものです」

 この保育園では原発事故後、園児の外部被曝を避けるため、園庭に生えた木の葉に触ったり、地面に直接座ることなどを細かく禁じてきた。 最近、庭遊びをしようと子供たちを園庭に連れ出したところ、年長の園児が突然こう尋ねた。

「これ、触ってもいいの?」

 前出の園長はこの言葉にハッとしたと振り返る。

「私たちは約束事を守ってもらえることに安心していましたが、子供たちはいつも心にブレーキをかけていたのだと気づかされました。

 保育園児は何でも触りたいし、やりたいし、試してみたい年頃です。その興味や関心の芽生えを私たちは大切に育てないといけないのに、逆に奪うことになっていたと知り、とてもショックでした」(保育園園長)

 この現状に、現地で暮らす保護者の心配は尽きない。

「南相馬は震災で若い人が減り、医療や福祉の現場で人手不足が続いています。それでも事故直後に県外避難して、家庭や仕事の事情で福島に戻ってきたかたがたの多くは、厳しい現実を受け入れつつ、“前向きにやるしかない”と気持ちを切り替えようとしています。

 しかしその一方で、今も消えない不安を抱えている保護者も多いのです。市内のモニタリングポストで計測する空間放射線量は落ち着いて、『流通している食品は検査されていて食べても大丈夫』と言われていますが、事故当初の不誠実な対応から、国や東電への不信感は拭えないままです」(保育園園長)

 被災地の自治体は復興のため尽力しているが、それでもなお、不安は尽きないのだ。

※女性セブン2014年3月27日号

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