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学校給食で牛乳中止 新潟県三条市の判断に異論続出の理由は

 新潟県三条市が、学校給食で牛乳を取り扱うことを止める運用を試験的に始めた。ネットでは「牛乳中止に反対」する意見が多い。コラムニストのオバタカズユキ氏が考える。

 * * *
 先日、ワイドショーをぼーっと見ていたら、出演者のおじさんたちが学校給食の話で盛り上がっていた。「給食に牛乳はつきものでしょう」「脱脂粉乳は鼻をつままないと飲めなかったけど、牛乳になって本当においしかった」「ご飯に牛乳かけて食べるとおいしいんですよ」といったふうに。

 その番組で取り上げられたのは、新潟県三条市の教育委員会が、30ある市内の全小中学校の給食で牛乳を出すのをやめると決めた、というニュースだ。試験的に4か月間そうしてみるとのこと。

 同市では食育に力を入れており、2008年度から完全米飯給食を実施している。そして、今年の3月の半ばに、ご飯給食に牛乳は合わない、という理由から牛乳の取り扱い中止を決めた。カルシウムの不足分は小魚入りのふりかけや、乳製品のデザートなどで補うという。また、牛乳の購入費を浮かせることで給食費の値上げの回避も可能になるそうだ。

 なるほど。地方主権の時代といわれて久しいし、給食の方針だって市区町村ごとにカラーを出すのはありだよな、と筆者は思った。

 で、ネットではどう話題になっているのだろうと見てみたら、これがあちらこちらで意外に盛り上がっているのだ。たまたま見たワイドショーもそうだったが、全体的には牛乳中止に反対のトーンの声が多い。

 それと、この問題に関しては、賛否の対立がやたら激しくなっている。牛乳中止反対派は、牛乳のカルシウムの豊富さや栄養バランスの良さを挙げる。それはまあ、一般的な意見だろうということで違和感がないのだが、対する牛乳中止賛成派のほうが穏やかじゃない。

 どうやら牛乳や乳製品を食すこと自体が身体によくない、という考え方が存在するようだ。「牛乳には危険がいっぱい」的なポイントをいろいろ指摘する人たちがいて、その声が大きい。三条市はあくまでご飯を軸とする日本食と牛乳との相性に疑問を呈したのだが、牛乳論争はその食品自体の善悪論へと違う方向に走っている。

 栄養学を専門としない筆者は、この議論の中に立ち入ろうと思わない。栄養学は「昨日の常識は明日の非常識」というふうに、変化に富んだ学問分野とも聞く。ましてや、アカデミックではない街場の栄養論は、オリジナリティがあふれすぎた極論も大量に流通している怪しい世界だ。

 牛乳は飲んだ方がいいのか、悪いのか? 乳糖不耐症でお腹がグルグルになる人が無理矢理飲まされるといったことさえなければ、あとは好き好きでいいでしょう。そのあたりが筆者の感覚なのだけれども。

 もちろん、激しい牛乳論争に励む人は全体の中のごく一部だろう。ただ、三条市の牛乳中止の件に「えっ」と驚く人は普通にいて、たくさんの人がワイドショーのおじさんたちと同様に「給食に牛乳はつきもの」的なことを言っている。それはなぜか。

 ニュースをきっかけに、学校給食の牛乳を懐かしむ声も多い。ぐびぐび飲んでいる最中のやつを笑わせて牛乳を噴き出させると爆笑なんだ、みたいなエピソードを典型に、方々で牛乳の思い出が語られている。

 ぐびぐび飲むには瓶入りである必要があって、もうだいぶ前から紙パックの牛乳を出す学校がほとんどだから、牛乳噴き出しの話は今の子供たちには通じないんだけどね。というツッコミが入っても、そこから粉末のコーヒー牛乳も楽しみだった、揚げパンは最高だった、自分の学校では給食時間の私語禁止だった、という具合に語りがどんどん広がっていく。

 もはや牛乳と関係のない話がいっぱいだ。要は、給食がノスタルジーとしてここぞとばかりに語られているのだ。

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