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洗濯店に長期間預けたスーツが紛失 弁償してもらえるのか

 気温が上がり、湿度も高くなるこれからの季節は、クリーニング店のお世話になる機会も多くなる。色々な用事が重なって、クリーニングに出した洋服を取りに行くのを忘れてしまうようなことは誰にでもあるが、長期間クリーニング店に預けたスーツをお店が紛失した場合、弁償してもらえるのだろうか? 弁護士の竹下正己氏はこう回答している。

【相談】
 交通事故で2か月の入院を強いられました。退院してすぐに預けていた高級スーツをクリーニング店に受け取りに行くと紛失していました。店側は2週間以上の保管は保証できないと主張しています。しかし、入院は不可抗力でもあり、納得できません。店側にスーツ代の弁償を請求できますか。

【回答】
 店が発行した預かり書に預り中の保証期間が書かれていたり、店頭の人目に付く場所に掲示されていれば、それがクリーニング店との契約の条件になります。何もなければ、店の言い分は通りません。

 保証期間を定めずに預かった場合、契約関係が終了するまで、責任を持って保管する義務があります。商人である店は、商法第593条で営業の範囲で預かった物は、「善良ナル管理者ノ注意」を払うことが義務付けられているからです。

 長い保管が困るのであれば、店は返す旨告知できます。取りに来なければ、以後は保管料相当の損害金を請求でき、これに基づいて留置権という法定担保権を取得するに至ります。そして、留置権に基づいて競売すればよいのです。これが、あるべき手続きです。

 仮に保証期間2週間の契約条件でも自分の物の保管に要する注意義務に軽減されるだけであり、高級スーツでは大切にするのが当然で、紛失は注意義務違反になるでしょう。

 また、クリーニング店との契約には消費者契約法の適用がありますが、同法第8条では、事業者の債務不履行により、消費者に生じた損害を免責する約定は無効とすると定めています。クリーニング店が2週間の保証期間経過で、高級スーツ紛失の損害賠償をしないとの言い分は、やはり通用しないと思います。

 クリーニング業など、生活衛生関係事業を対象とした「生活衛生関係営業の運営の適正化及び振興に関する法律」は、業種ごとに厚生労働大臣の認可を受けて約款が定められていて、クリーニングの業界では、自主的に「クリーニング事故賠償基準」を定めています。ここには賠償額の算定基準だけでなく、免責される保証期間を1年超とすることなども定めています。そこで、こうした基準を参考に協議されることをお勧めします。

【弁護士プロフィール】
◆竹下正己(たけした・まさみ):1946年、大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年、弁護士登録。

※週刊ポスト2014年6月6日号

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